3 / 25
序章
第2話 魔術と錬金術
しおりを挟む
トーナは大賢者フィアルヴァの弟子である。この国では魔術と錬金術、どちらも極めた者が賢者と呼ばれた。中でもフィアルヴァは規格外の能力を持っており、国内では唯一、【大賢者】という肩書を持っている。
「師匠って出来ないことあんの?」
「存じませんね」
この世界には10人に1人程度魔力を持つ人間が生まれる。魔力があれば魔法が、つまり魔術や錬金術が使えるのだ。もちろん魔力量やそれを使いこなす技術はそれぞれなので、能力差は大きい。
「結局魔術学院には入学しないのですね」
「別にいいよ。魔術師って肩書を名乗れないだけだし」
錬金術師と違い、【魔術師】と名乗る為には王都や他の大都市にある魔術学院を卒業することが必須である。だがそれには一部の奨学生を除き、莫大な学費が必要な為、今や貴族や金持ちのステータスになっていた。
「野良魔術師なんていっぱいいるしね。公的な魔術師の仕事が請け負えないだけだもん」
「しかし以前、資格は大事! と騒いでいたではありませんか」
「まぁね……」
(流石機械人形……昔の話をしっかり記憶《記録》してるわ……)
当初は学院に通いながら日中の店番はベルチェに頼むつもりでいた。だが学院の入学試験の様子をみて取りやめたのだ。
「だってすでに金と権力を競い合ってドロ試合してたんだもーん。人間関係で苦労するのも嫌なの!」
試験会場でだよ!? とベルチェに念を押す。
持ち物や容姿、家の格付けや血筋の魔術師の優劣……比べるモノはたくさんあるようだった。
前世での学生生活中の人間関係を急に思い出し、ため息が出る思いがしたトーナは、なにも今世までそんなことで気を揉む生活する必要はないと決断し、合否の結果発表すら見に行かなかった。
「私みたいに後ろ盾のない平民なんて試験会場にいるだけで馬鹿にされてさ~!」
「大賢者フィアルヴァの弟子なのにですか?」
「……公式発表されてるわけじゃないでしょ~」
(有名人の弟子なんて公表して騒ぎになるのも嫌なんだよな~)
トーナは赤ん坊の頃、旅の途中のフィアルヴァに拾われ育てられた。今世の生みの親の顔は覚えていない。それからずっと旅をしながら暮らしていたのだ。魔術や錬金術を教わりながら。そのせいか、王都ではフィアルヴァとトーナが師弟関係であることを知る者は少ない。
「イジメられたら面倒じゃん?」
「トーナが負けるとは考えられませんが」
「権力者と揉めるのって疲れるじゃん……逃げるが勝ちよ」
単純な喧嘩ならそう易々とは負けないつもりでいるが、権力なんて持ち出された日にはどうなるかわかったもんではない。頼みのフィアルヴァは今どこにいるかわからない以上、何かあればトーナ1人でどうにかするしかないのだ。
(ま。前世もいい大人って年齢までは生きたし、今世も成人年齢には達したんだから、甘えたことばっか言ってられないしね)
だからトーナは揉め事を避けることにした。今世では出来る限り煩わしさを排除しながら、心穏やかに楽しく暮らすと決めているのだ。
「私はこっち一本で食ってくわ!」
前世で言うピースサインで少しおちゃらける。この判断が貴族や有力者達への負け惜しみからと思われるのも嫌だったのだ。
「ではフィアルヴァの屋号紋を店先に飾っては? 売り上げ爆増間違いなしです」
「貧乏は困るけど、忙しくなるのはちょっとね~何事も程よくがいいのよ」
「相変わらず出世欲のない」
魔術師とは違い、錬金術を名乗るのに試験は必要ない。基本的には専門分野……例えば日用生活品を始め、魔法薬、魔道具、魔法武器等々の専門家に弟子入りして錬金術を学ぶ。その後、免許皆伝となれば独り立ちとなる。その際優秀な弟子は師と同じ紋章《屋号》を受け継ぐことが許され、それを店看板として出している所も多い。所謂暖簾分けだ。
客側からしても、身元《品質》をうかがう指標になっている。
トーナの店は錬金術を扱うお店の中で1番メジャーである、日用雑貨と魔法薬を商品として店に出していた。あえて言えば、冒険者や旅人向けの品物が他店より多いくらいだ。
ベルチェは無表情だが、トーナの長年の経験から彼が呆れているのがわかった。機械人形だというのに、彼からはしょっちゅう感情が読み取れる。
「まぁまぁ。とりあえず今日は気合い入れて作業するからさ! 大賢者の弟子として恥ずかしくないモノ作るわよ!」
機械人形の機嫌を取りながら、店の奥の工房部分に向かう。元パン屋の厨房だけあって、錬金術師の仕事場としては少々摩訶不思議な雰囲気が足りないが、トーナはこの場所が気に入っていた。大通りにある店のような大鍋はないし、窯も小さいし、本棚を無理やり作りつけたので多少狭くなったが、ベルチェと2人だけの作業なので問題はない。
(大鍋はかき混ぜるのも大変だしね~)
大きな店はその分弟子も多い。やろうと思えば24時間稼働できる。トーナにもベルチェがいるが、彼は魔力を錬金術に使うことはできない。
素材を入れた鍋の中に細く緩やかに魔力を流し込む。カレー鍋程度の大きさだ。似た大きさの錬金術用の鍋が壁際にいくつか積み上げられていた。鍋を火にかけ片手でぐるぐる混ぜ、中身の様子をうかがう。茶色く濁った液体が徐々に薄い赤色と変わっていった。
「ベルチェ~そこのリネモシロップとって~」
「はい」
フラスコの中には黄色い液体が入っており、液体が揺れると甘酸っぱい匂いが部屋の中に広がった。
リネモはレモンにとても良く似たフルーツで、この国ではメジャーなものである。トーナはこの世界を前世の並行世界だと予想している。
(マルチバースってやつ?)
そのくらい似た動植物がたくさん存在していた。歴史のどこかの地点で何かが大きく変わったんだろうと、そう考えて納得した。
(わかったところで何か変わるわけでもないし……前世の記憶があるまま生まれ変わった私にとってはラッキーな展開だわ)
前世の知識が使えるのは悪いことではなかった。
「ごめんっ! そこの計量スプーンも……!」
「どうぞ」
きっちりスプーン1杯分を鍋の中へ入れすぐに混ぜると、柔らかなオレンジ色に変化した。これで完成だ。
「錬金術で薬作るのってお菓子作りに似てるよね~」
レシピ通り、材料をキッチリ計り手順さえ間違えなければ失敗することはない。この世界ではオーソドックスな魔法薬のレシピは一般的に公開されており、作ろうと思えば誰だって作れるのだ。
だがこうやってトーナや他の錬金術師達が生業としてやっていけるのは、設備や道具、そして材料、さらに手間を考えると結局買うのが安い、となることが多いからである。
(美味しいケーキを自分で作るより買う方が結果安上がりになるのと同じってことかな)
ポーションの効果は作りたてが1番で、それから日毎に減っていく。ただこの世界ではポーションを常備している家庭が多いため、錬金術師の安定した収入源となっている。
「でもその二日酔い薬はリトゥス村のレシピのアレンジですね」
「気づいた? 効果は確認済みだから大丈夫! やっぱ美味しい方が飲みやすいし」
「あぁ。先日飲んでいたのはそちらですか」
「み、見てたんだ……」
そして微妙な効能差やポーションの味などで、各錬金術店の売りとして他店と差をつけている。秘伝のオリジナルレシピで作られるポーションを持つ錬金術師はそれを強みにしていた。
「そんなことしなくても、トーナが作るポーションの効能はこの国トップクラスでしょう。わざわざ手間暇かかるレシピにしなくても」
「ちょっ! そんなの作って世に出したら目ぇつけられちゃうじゃん!」
ああ恐ろしいと、わざとらしく震えるフリをする。
「ま! 上級ポーションの時は惜しみなく作るわ」
「作る予定があるのですか?」
「い……依頼があればね……」
上級ポーションは重症患者向けの薬だ。もちろん価格も高いので、街中にある一般的な錬金術店で取り扱うことはまずない。材料費も高いので作り置き出来るのなんて大手の店くらいだ。
「何かあれば私の分の作り置きがあるし」
店の地下にはポーション保存用の小さな金庫を置いてあった。その中にあるものは劣化のスピードは極端に落ちるので数年は効力を持ち続ける。トーナは1瓶だけ上級ポーションを入れてあった。
「ポーションの作り手に何かあると、困るのは市民なのですよ」
1本では何かあった時心配だ。と、ベルチェは苦言を呈す。
「おっしゃる通りです……今月の売り上げ良かったら予備を作るよ」
だからそんなに心配しないで。と、ベルチェの背中をトンと触れた。
「魔力がなくなるのはワタシも困るのです」
「またまた~照れないでよ~」
今度はニヤニヤと笑いながら、ツンツンと指先でつつく。
「ほら。無駄口叩かないで」
促されるまま、それ以上は何も言わず、触らず、トーナはポーション作りを続けた。
「師匠って出来ないことあんの?」
「存じませんね」
この世界には10人に1人程度魔力を持つ人間が生まれる。魔力があれば魔法が、つまり魔術や錬金術が使えるのだ。もちろん魔力量やそれを使いこなす技術はそれぞれなので、能力差は大きい。
「結局魔術学院には入学しないのですね」
「別にいいよ。魔術師って肩書を名乗れないだけだし」
錬金術師と違い、【魔術師】と名乗る為には王都や他の大都市にある魔術学院を卒業することが必須である。だがそれには一部の奨学生を除き、莫大な学費が必要な為、今や貴族や金持ちのステータスになっていた。
「野良魔術師なんていっぱいいるしね。公的な魔術師の仕事が請け負えないだけだもん」
「しかし以前、資格は大事! と騒いでいたではありませんか」
「まぁね……」
(流石機械人形……昔の話をしっかり記憶《記録》してるわ……)
当初は学院に通いながら日中の店番はベルチェに頼むつもりでいた。だが学院の入学試験の様子をみて取りやめたのだ。
「だってすでに金と権力を競い合ってドロ試合してたんだもーん。人間関係で苦労するのも嫌なの!」
試験会場でだよ!? とベルチェに念を押す。
持ち物や容姿、家の格付けや血筋の魔術師の優劣……比べるモノはたくさんあるようだった。
前世での学生生活中の人間関係を急に思い出し、ため息が出る思いがしたトーナは、なにも今世までそんなことで気を揉む生活する必要はないと決断し、合否の結果発表すら見に行かなかった。
「私みたいに後ろ盾のない平民なんて試験会場にいるだけで馬鹿にされてさ~!」
「大賢者フィアルヴァの弟子なのにですか?」
「……公式発表されてるわけじゃないでしょ~」
(有名人の弟子なんて公表して騒ぎになるのも嫌なんだよな~)
トーナは赤ん坊の頃、旅の途中のフィアルヴァに拾われ育てられた。今世の生みの親の顔は覚えていない。それからずっと旅をしながら暮らしていたのだ。魔術や錬金術を教わりながら。そのせいか、王都ではフィアルヴァとトーナが師弟関係であることを知る者は少ない。
「イジメられたら面倒じゃん?」
「トーナが負けるとは考えられませんが」
「権力者と揉めるのって疲れるじゃん……逃げるが勝ちよ」
単純な喧嘩ならそう易々とは負けないつもりでいるが、権力なんて持ち出された日にはどうなるかわかったもんではない。頼みのフィアルヴァは今どこにいるかわからない以上、何かあればトーナ1人でどうにかするしかないのだ。
(ま。前世もいい大人って年齢までは生きたし、今世も成人年齢には達したんだから、甘えたことばっか言ってられないしね)
だからトーナは揉め事を避けることにした。今世では出来る限り煩わしさを排除しながら、心穏やかに楽しく暮らすと決めているのだ。
「私はこっち一本で食ってくわ!」
前世で言うピースサインで少しおちゃらける。この判断が貴族や有力者達への負け惜しみからと思われるのも嫌だったのだ。
「ではフィアルヴァの屋号紋を店先に飾っては? 売り上げ爆増間違いなしです」
「貧乏は困るけど、忙しくなるのはちょっとね~何事も程よくがいいのよ」
「相変わらず出世欲のない」
魔術師とは違い、錬金術を名乗るのに試験は必要ない。基本的には専門分野……例えば日用生活品を始め、魔法薬、魔道具、魔法武器等々の専門家に弟子入りして錬金術を学ぶ。その後、免許皆伝となれば独り立ちとなる。その際優秀な弟子は師と同じ紋章《屋号》を受け継ぐことが許され、それを店看板として出している所も多い。所謂暖簾分けだ。
客側からしても、身元《品質》をうかがう指標になっている。
トーナの店は錬金術を扱うお店の中で1番メジャーである、日用雑貨と魔法薬を商品として店に出していた。あえて言えば、冒険者や旅人向けの品物が他店より多いくらいだ。
ベルチェは無表情だが、トーナの長年の経験から彼が呆れているのがわかった。機械人形だというのに、彼からはしょっちゅう感情が読み取れる。
「まぁまぁ。とりあえず今日は気合い入れて作業するからさ! 大賢者の弟子として恥ずかしくないモノ作るわよ!」
機械人形の機嫌を取りながら、店の奥の工房部分に向かう。元パン屋の厨房だけあって、錬金術師の仕事場としては少々摩訶不思議な雰囲気が足りないが、トーナはこの場所が気に入っていた。大通りにある店のような大鍋はないし、窯も小さいし、本棚を無理やり作りつけたので多少狭くなったが、ベルチェと2人だけの作業なので問題はない。
(大鍋はかき混ぜるのも大変だしね~)
大きな店はその分弟子も多い。やろうと思えば24時間稼働できる。トーナにもベルチェがいるが、彼は魔力を錬金術に使うことはできない。
素材を入れた鍋の中に細く緩やかに魔力を流し込む。カレー鍋程度の大きさだ。似た大きさの錬金術用の鍋が壁際にいくつか積み上げられていた。鍋を火にかけ片手でぐるぐる混ぜ、中身の様子をうかがう。茶色く濁った液体が徐々に薄い赤色と変わっていった。
「ベルチェ~そこのリネモシロップとって~」
「はい」
フラスコの中には黄色い液体が入っており、液体が揺れると甘酸っぱい匂いが部屋の中に広がった。
リネモはレモンにとても良く似たフルーツで、この国ではメジャーなものである。トーナはこの世界を前世の並行世界だと予想している。
(マルチバースってやつ?)
そのくらい似た動植物がたくさん存在していた。歴史のどこかの地点で何かが大きく変わったんだろうと、そう考えて納得した。
(わかったところで何か変わるわけでもないし……前世の記憶があるまま生まれ変わった私にとってはラッキーな展開だわ)
前世の知識が使えるのは悪いことではなかった。
「ごめんっ! そこの計量スプーンも……!」
「どうぞ」
きっちりスプーン1杯分を鍋の中へ入れすぐに混ぜると、柔らかなオレンジ色に変化した。これで完成だ。
「錬金術で薬作るのってお菓子作りに似てるよね~」
レシピ通り、材料をキッチリ計り手順さえ間違えなければ失敗することはない。この世界ではオーソドックスな魔法薬のレシピは一般的に公開されており、作ろうと思えば誰だって作れるのだ。
だがこうやってトーナや他の錬金術師達が生業としてやっていけるのは、設備や道具、そして材料、さらに手間を考えると結局買うのが安い、となることが多いからである。
(美味しいケーキを自分で作るより買う方が結果安上がりになるのと同じってことかな)
ポーションの効果は作りたてが1番で、それから日毎に減っていく。ただこの世界ではポーションを常備している家庭が多いため、錬金術師の安定した収入源となっている。
「でもその二日酔い薬はリトゥス村のレシピのアレンジですね」
「気づいた? 効果は確認済みだから大丈夫! やっぱ美味しい方が飲みやすいし」
「あぁ。先日飲んでいたのはそちらですか」
「み、見てたんだ……」
そして微妙な効能差やポーションの味などで、各錬金術店の売りとして他店と差をつけている。秘伝のオリジナルレシピで作られるポーションを持つ錬金術師はそれを強みにしていた。
「そんなことしなくても、トーナが作るポーションの効能はこの国トップクラスでしょう。わざわざ手間暇かかるレシピにしなくても」
「ちょっ! そんなの作って世に出したら目ぇつけられちゃうじゃん!」
ああ恐ろしいと、わざとらしく震えるフリをする。
「ま! 上級ポーションの時は惜しみなく作るわ」
「作る予定があるのですか?」
「い……依頼があればね……」
上級ポーションは重症患者向けの薬だ。もちろん価格も高いので、街中にある一般的な錬金術店で取り扱うことはまずない。材料費も高いので作り置き出来るのなんて大手の店くらいだ。
「何かあれば私の分の作り置きがあるし」
店の地下にはポーション保存用の小さな金庫を置いてあった。その中にあるものは劣化のスピードは極端に落ちるので数年は効力を持ち続ける。トーナは1瓶だけ上級ポーションを入れてあった。
「ポーションの作り手に何かあると、困るのは市民なのですよ」
1本では何かあった時心配だ。と、ベルチェは苦言を呈す。
「おっしゃる通りです……今月の売り上げ良かったら予備を作るよ」
だからそんなに心配しないで。と、ベルチェの背中をトンと触れた。
「魔力がなくなるのはワタシも困るのです」
「またまた~照れないでよ~」
今度はニヤニヤと笑いながら、ツンツンと指先でつつく。
「ほら。無駄口叩かないで」
促されるまま、それ以上は何も言わず、触らず、トーナはポーション作りを続けた。
3
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
旦那様、離婚しましょう
榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。
手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。
ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。
なので邪魔者は消えさせてもらいますね
*『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ
本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる