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「はあ? 結界に大穴!?」
レミリアが知ったのはそれが起こった5日後だった。フロイドの申し訳なさそうな報告で知ることになった。ジークボルトは珍しく一週間ほど外出しており、外からの情報が入ってくるのが遅れたのだ。
「帝国は王国を支援するつもりはないってことね」
レミリアが知ったら帝国をすっとばして大賢者一行が助けに向かう可能性がある為、敢えて伏せられていたのだ。
「いえ、昨日前回の魔術師団の費用の支払いに目途が経ちましたので……すでに出兵しております」
「払ってなかったの!?」
「……何やら横領があったようでして」
「お、横領!?」
(本当に私が何かする前に滅びそうじゃない!)
レミリアは珍しくオロオロと部屋をうろつきまわった。
「……王国内にいる帝国の人間は大丈夫なのか?」
レミリアを目で追いながらアレンが尋ねる。王国内には帝国のスパイが複数人いるだろうことは公然の秘密のようになっていた。
「すでに退去の命令は出ています。それなりに訓練を受けた者達です……ただ次々に大穴が開き続けていいるらしく、心配ではありますが……」
「最新情報は?」
フロイドは言うのを躊躇っていたがアレンに促されて話を続けた。
「騎士団長とその息子が行方不明になっているとのことで、騎士団が機能不全に陥っているようです」
それから……と更に言いにくそうに、
「結界の近くの領はすでにどこも壊滅状態のようです。魔物達は王都方向ではなく結界に沿って横移動をしたようで……」
「じゃあ……グレンの所もなのね」
レミリアは立ち止まっていた。フロイドにも彼女の気持ちがわかった。彼も一緒にグレンのいる領が持ち直すまで手伝いをしたのだ。多少なりとも情はわく。そしてそれは辺境伯にこき使われたアレンも同じだった。
「じゃあいくかぁ~」
なんともやる気のない声を出しながらアレンが立ち上がった。
「……いいの?」
「レミリア~まだんなこと言ってんのか? 師匠に好きにしろって言われてるだろ」
「いやでも私……あの国潰すつもりだし……」
レミリアはまだ混乱していた。まさかあの結界が、という気持ちが強かったのだ。それは前世の記憶が戻る前、幼少期からの刷り込まれた結界に対する信用だった。聖女の祈りから発生する結界は唯一無二でマリロイド王国を守ると。
レミリアはまさか聖女が祈らないなんて考えなかったのだ。力不足はあっても、祈りを捧げないなんて選択肢があるとは思わなかった。それは聖女自身の身の危険にも繋がることだからだ。だからこの話を聞いた時、聖女ユリアになにかあったのだと思った。
(あの国が終わるなら、私の復讐先もなくなる……)
結界の崩壊とはそういうことだ。魔物は人間を捕食するために国中に溢れかえるだろう。悪夢のような世界が広がることになる。
「はあ? 潰し方にも色々あるだろ! つーかこんな国の終わり方嫌だろ!」
しっかりしろ! とレミリアの両肩をつかんだ。目と目を合わせる。アレンの深いブルーの瞳の中に、怯えた顔のレミリアが映っていた。
(これが私……? 気に入らないわね)
弱々しい自分は大嫌いだった。いつだって勝気で乗り越えてきたのだ。
「そうね! 私が潰さないと意味がないのよ!」
「その意気です」
そう答えたのはフロイドだった。彼は一緒についていく気満々で、すでに自分の荷物を馬車に用意していた。その荷物の中にはいくつもの魔石が入った袋もあった。
「これ、海光石じゃない!」
以前アレンがレミリアに買ってくれた高額な魔石と同じものだった。
「大賢者とその弟子にはファンが多いのですよ」
自分の事のようにニコニコと嬉しそうだった。
「これで一時的な避難所くらいは作れるでしょう」
さあ早く! とレミリア達を急かした。
3人は飛竜に飛び乗り、急ぎ王国へと向かった。風はまだ冷たい。春はまだ遠く感じた。
レミリアが知ったのはそれが起こった5日後だった。フロイドの申し訳なさそうな報告で知ることになった。ジークボルトは珍しく一週間ほど外出しており、外からの情報が入ってくるのが遅れたのだ。
「帝国は王国を支援するつもりはないってことね」
レミリアが知ったら帝国をすっとばして大賢者一行が助けに向かう可能性がある為、敢えて伏せられていたのだ。
「いえ、昨日前回の魔術師団の費用の支払いに目途が経ちましたので……すでに出兵しております」
「払ってなかったの!?」
「……何やら横領があったようでして」
「お、横領!?」
(本当に私が何かする前に滅びそうじゃない!)
レミリアは珍しくオロオロと部屋をうろつきまわった。
「……王国内にいる帝国の人間は大丈夫なのか?」
レミリアを目で追いながらアレンが尋ねる。王国内には帝国のスパイが複数人いるだろうことは公然の秘密のようになっていた。
「すでに退去の命令は出ています。それなりに訓練を受けた者達です……ただ次々に大穴が開き続けていいるらしく、心配ではありますが……」
「最新情報は?」
フロイドは言うのを躊躇っていたがアレンに促されて話を続けた。
「騎士団長とその息子が行方不明になっているとのことで、騎士団が機能不全に陥っているようです」
それから……と更に言いにくそうに、
「結界の近くの領はすでにどこも壊滅状態のようです。魔物達は王都方向ではなく結界に沿って横移動をしたようで……」
「じゃあ……グレンの所もなのね」
レミリアは立ち止まっていた。フロイドにも彼女の気持ちがわかった。彼も一緒にグレンのいる領が持ち直すまで手伝いをしたのだ。多少なりとも情はわく。そしてそれは辺境伯にこき使われたアレンも同じだった。
「じゃあいくかぁ~」
なんともやる気のない声を出しながらアレンが立ち上がった。
「……いいの?」
「レミリア~まだんなこと言ってんのか? 師匠に好きにしろって言われてるだろ」
「いやでも私……あの国潰すつもりだし……」
レミリアはまだ混乱していた。まさかあの結界が、という気持ちが強かったのだ。それは前世の記憶が戻る前、幼少期からの刷り込まれた結界に対する信用だった。聖女の祈りから発生する結界は唯一無二でマリロイド王国を守ると。
レミリアはまさか聖女が祈らないなんて考えなかったのだ。力不足はあっても、祈りを捧げないなんて選択肢があるとは思わなかった。それは聖女自身の身の危険にも繋がることだからだ。だからこの話を聞いた時、聖女ユリアになにかあったのだと思った。
(あの国が終わるなら、私の復讐先もなくなる……)
結界の崩壊とはそういうことだ。魔物は人間を捕食するために国中に溢れかえるだろう。悪夢のような世界が広がることになる。
「はあ? 潰し方にも色々あるだろ! つーかこんな国の終わり方嫌だろ!」
しっかりしろ! とレミリアの両肩をつかんだ。目と目を合わせる。アレンの深いブルーの瞳の中に、怯えた顔のレミリアが映っていた。
(これが私……? 気に入らないわね)
弱々しい自分は大嫌いだった。いつだって勝気で乗り越えてきたのだ。
「そうね! 私が潰さないと意味がないのよ!」
「その意気です」
そう答えたのはフロイドだった。彼は一緒についていく気満々で、すでに自分の荷物を馬車に用意していた。その荷物の中にはいくつもの魔石が入った袋もあった。
「これ、海光石じゃない!」
以前アレンがレミリアに買ってくれた高額な魔石と同じものだった。
「大賢者とその弟子にはファンが多いのですよ」
自分の事のようにニコニコと嬉しそうだった。
「これで一時的な避難所くらいは作れるでしょう」
さあ早く! とレミリア達を急かした。
3人は飛竜に飛び乗り、急ぎ王国へと向かった。風はまだ冷たい。春はまだ遠く感じた。
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