【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

文字の大きさ
41 / 63

41 裏切り 

しおりを挟む
 カイルは今日も愛しのユリアに会いに行った。カイルの屋敷の使用人達は、彼に何を言っても無駄だと悟り、黙って見送っていた。これまで何度も注意してきたが、激しく言い返されるか場合によっては暴力が返ってきていたからだ。

「父上に何を言われたかしらないが、オレのことはもう放っておいてくれ!」

 それ以降、屋敷の使用人たちは言われた通りに振る舞った。

(アルベルトのヤツは最近政務で忙しい……もしかしたらまたユリアと2人っきりで話せるかも……)

 この時間ならユリアはもう教会ではなく城に戻っているだろうとあたりをつけていた。そうして予想通り、彼女が城内の端にある使用人部屋近くの廊下を歩いているのがみえた。
 
「……ユリ……!」

 声をかけようとした途中でやめたのは、なにやら不穏な空気が流れていたのがわかったからだ。カイルは目がいい。剣術に必要な能力は他の誰より高かった。だからユリアが城の治癒師と人気のない空間に入っていくのを少し離れたところからずっと目で追った。

 そして彼女がその治癒師に微笑みながら口付けをし、金貨を渡しているのをハッキリとみた。その治癒師は下品に笑いながらユリアの腰に手を回し、もう一度口付けを迫っていた。

 いつものカイルならそれを見て頭に血が上り激昂しただろう。だが彼は今、一気に自分の血が引いていくのを感じた。生まれて初めての感覚だった。息の仕方もわからなくなっていた。そうしてもう一度彼女からその男に口付けをしたのを見た瞬間、彼は意識を失った。

 目が覚めた時、彼は城内の医務室にいた。

(ああよかった。さっきのは夢だったんだ……)

 そうに決まっている。あのユリアが、聖女ユリアがあんなことをするわけがない。あの治癒師は王の治療を担当している人物だった。カイルが父と2人で王の見舞いに行った時に王の側にいた人物だった。
 王は毎日治療していにも関わらず、少しも良くならなかった。心的疲労のせいだと言われてはいたが……。

「お目覚めになったのですね! よかった!」

 まだ起きたてでぼうっとしているカイルに声をかけたのは、先ほど見かけた治癒師だった。穏やかで優しい笑顔をカイルに向けていた。

「すまない……世話になった」
「あのような所でどうされたので?」
「それが……」

 そうしてその男の顔を見つめた時気が付いてしまった。その唇にユリアがいつもつけている口紅と同じ色がついていることに。

「……いや、よくわからないんだ。気が付いたらここに」

(父上に報告しなければ……!)

 王は一切治療を受けられていない。それどころか、毒でも盛られている可能性すら出てきた。一刻も早く屋敷に戻って早馬を出そう。カイルの家にはいい馬がたくさんいる。

「そうですか」

 その顔には先ほどと同じ下品なニヤケ顔になっていた。

「き、貴様!!!」

 治癒師は気が付いていたのだ。カイルがユリアと自分の関係を知ったことに。
 カイルは急いで腰についていたはずの剣を探す。だが剣はベッドの足元に立てかけてあった。カイルの手が剣に届くより前にカイルは再び眠りについた。

「ククク……魔術の使えない剣士など怖くもなんともありませんねぇ」

 薄れゆく意識の中で、その声がカイルの頭の中に響いた。

 再び目が覚めた時、彼はどこかの地下牢の中にいた。どれくらい眠っていたか、今何時なのか、ここはどこなのか、次から次に不安な気持ちが湧いて出てきた。小さな明かりだけ用意されていた。

「オイ! オーイ! 誰か! 誰かいないかー!?」

 彼の声は虚しく響き渡るだけだった。牢を壊そうと体当たりしてみたが、びくともしなかった。魔術も試みたが、彼程度の力では傷もつかなった。

「最近カイルを見かけないな」
「……そうね。彼も私達を裏切ったのかも」
「フン! あいつは俺じゃなくユリアが目当てだったからな。ユリアが相手をしないから拗ねたんだろう」

 アルベルトは勝ち誇った顔でユリアの唇を撫でた。

 彼のことを探すものは誰もいなかった。彼がいなくなって気にするものは誰もいなかった。友人も屋敷の使用人も、アルベルトもユリアも、誰も気にしなかった。

 一週間後、彼の父親が遠征先から久しぶりに屋敷に戻った時に初めて、カイルが一週間誰の目にも触れていないことが判明した。
 騎士団長は懸命に息子を探し回った。最後に目撃されたのは一週間前の城門だった。そこの門番がしっかりとカイルのことを覚えていたのだ。だが、いつその門を出たかはわからなかった。

 息子は聖女の手に落ちたのだと騎士団長は確信した。そして同時に絶望したのだった。 
   
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

処理中です...