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第一部 悪役令嬢の幼少期
13 メインキャラが出てこない
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そういえばジェフリーはいつからこの物語に参加していたんだろう。十五歳で学園へ入学した時はすでにレオハルトの側近だった。幼馴染設定から考えてもそろそろ出てきていてもよさそうだが。
アリバラ先生から言われた通り、今のこの世界と私が知っている物語の違いを書き出す。
・氷石病の治療方法確立 → フローレス家の生存率アップ
・レオハルトとの関係改善 → ゴミカスのように扱われなくなった
・ルカの魔術レベル → 私よりすごくない……?
・フィンリー様が長く王都に滞在 → ずっといて欲しい
そして……。
・ジェフリーがでてこない →なんで???
(うーん……具体的な日時まで記載されてたわけじゃないからな)
レオハルトとジェフリーの出会いは最初、ルカやフィンリー様と同じような経緯のはずだ。この時期、第一王子と年齢が近い貴族の子弟はその階級に関わらず積極的に集められていた。オーティス家が金に物を言わせたのだ。
ジェフリーは貧乏子爵家出身のため他の貴族の子弟から馬鹿にされていたが、その場を見たレオハルトは馬鹿にしていた奴らを叱責した。そして彼の勤勉さや誠実さを知り、またジェフリーはレオハルトの正義感や優しさを知り、信を置ける者が少ない宮中で二人は主従関係でありながらも友情を育んでいったのだ。
「ジェフリー・オルティスには会ったことないなあ」
やはりルカも知らなかったか。いったい今どこにいるんだろう。
「リディに聞いてたから、そういう集まりの時は注意してたんだけどね……殿下も忙しくなって集まり自体減っちゃってるし」
「え!? そうなの!?」
「そうだよ。リディだって週に三回は会ってるだろ?」
「私に会う時間を割いてるせいってこと!?」
(まさかそれが原因で!?)
私のなんちゃって妃教育に時間をとるようになって、他の貴族の子弟に会う時間がなくなってしまったから出会いイベントが起きていないの!?
「ジェフリー・オルティス? 知っているぞ」
「マジで!!!?」
しまった! なんて言葉遣いを……!
いつものティータイムの話題に出すと、あっさりとジェフリーがレオハルトに認知されていることがわかった。レオハルトにはまさか令嬢が使う言葉だとは思えず、外国語にでも聞こえたようだ。少し変な顔をされただけですんだ。
(出てきてるんじゃん! でもどういうこと!? 仲良くはなってないってこと?)
「なんだ。またそいつもおしというやつか?」
「いいえ。推しはフィンリー様ただお一人にございます」
そこ、重要だからしっかり覚えておいてください。
「言っておくが、ジェフリーより僕の方がいけめんだぞ!」
頻繁にレオハルトの顔を褒めていたせいか、なんだかナルシストキャラになってきている。アイリスの好みじゃなくなったらどうしようかと少し不安だ……でも本当に顔はいいからこの王子……笑うとすごいから……まあフィンリー様には敵わないけど。
「ジェフリー様も十分イケメン枠ですわ! あの眼鏡と泣きぼくろがたまりません」
そして真面目系キャラかと思いきや、荒事に強いというギャップにやられるファン多数だった。
「……どこで知り合ったんだ?」
他の人の顔を褒めたので拗ねてしまっているのがわかる。しかし私はジェフリーと知り合いじゃないので返答に困る。
「いつかの……お茶会の際に他のご令嬢がおっしゃってましたわ」
はい嘘です。他所のご令嬢からお茶会のお誘いなんてしばらく来てません! 氷石病の流行で自粛されていたのもあるし、以前やらかしたからというのもある。
「殿下はいつジェフリー様とお会いに?」
「……君が氷石病で寝込んでいた時だ」
レオハルトは今だに態度が悪かった時期の話はバツが悪そうにする。どうやら本当に反省しているようだ。
(なんだ、その頃には会っていたのか)
「とても賢いお方と伺いました」
「ああ、僕もだ。だから別日に改めて城に誘ったんだが、別件が入ってな……」
バツが悪そうにしているということは……。
「予定では君との婚約の真相がわかって、話し合いをした日だったんだ」
(あの日か~~~!)
タイミングが悪すぎる。あの日からだいぶ経ってるぞ! まだ大丈夫だろうか?
ジェフリーはこの物語のブレーンだ。ジェフぺディアだ。将来レオハルトが王になった時にそばに居ないと絶対に困る。何としてでも物語に参入してもらわなければ。
「それはジェフリー様に悪いことをいたしました。どうか殿下、再度お会いになる機会をお作りください」
「それは厳しいかと」
急に側に控えていたエリザが会話に入ってきた。
「オルティス家の皆様は先日領地に帰られたと伺いました」
「マジで!?」
「マジです」
(マジかよ……やらかしちゃってるじゃん)
フィンリー様に夢中でジェフリーのことを後回しにしていた。ずっと頭の片隅にはあったのだ。なのに……。
ジェフリーと関わるのは少々億劫だった。作中、リディアナと最も多く対立するのがジェフリーだったのだ。彼はレオハルトとアイリスを守るために積極的にリディアナを責め立てていた。だから気になってはいたものの、なかなか重い腰が上がらなかった。
「どうしましょう……?」
レオハルトに問いかける。なぜ僕に? という顔をした後訝し気に、
「なぜそんなに気にする。推しではないのだろう?」
「で……殿下の側には一人でも多く優秀な人材がいた方がいいに決まっています!」
「僕は十分優秀だが」
「そういうセリフは次期王に指名されてから言ってくださいませ」
「はっ! その時に婚約破棄したくないと言ってももう遅いがな!」
もちろんレオハルト側の従者は近くにいない。レオハルトからしても今のように軽口を叩ける関係性がとても楽なようだ。
「子爵家の三男ですよ! もし殿下にお仕えできることになればこれ以上の出世はございません」
「それはそうだろうが……だからなぜそんなに気にするんだ」
疑っている。まあレオハルトからすれば、なぜ公爵令嬢が子爵家三男を気にするのか理解はできないだろうけど。公爵令嬢としてではなく、作品ファンという立場からの心配である、とは言えないのだ。
「一世一代の機会を潰してしまったのです。罪悪感もわくというものですわ」
「……君がか?」
失礼な奴め。罪悪感は記憶が戻ってから湯水のようにわいている。
「殿下、可愛い婚約者からのお願いでございます。どうか再度ジェフリー様とお話しを」
こらこら、そんな呆れ顔で可愛い婚約者を見るんじゃありません。
「……それじゃあ春になってからだな。これから寒さもより厳しくなる。オルティス領は雪深い場所にある。王都との行き来は難しい」
それで二人の友情に影響はないだろうか。不安だ……だが現状、どうしようもない。この世界、前世のように気軽に旅行はできないのだ。
「今からならまだ間に合いますよ!」
「えっ!?」
今度はマリアだった。
「まだ領地にはたどり着いてないと思います! 道中の宿屋も予想はつきますし。早馬を出せばいけると思います」
マリアのアイディアで助かった。彼女はオルティス領近くの出身らしい。これで春まで待たずにすみそうだ。
「殿下! 殿下って私に負い目がありますよね?」
「わかった! わかったからそんなに近づくな」
身を乗り出してレオハルトに迫る。第一王子の権力をここで使わずしていつ使う! ジェフリーはこの国の未来の頭脳だぞ。そのくらいしても許されるだろう。
「いいからさっさとやってくださいませ!」
「負い目感じさせている側が言うことか!」
ブツブツと文句を言いながらもレオハルトはお付きに指示を出し始めた。
さあレオハルト、ジェフリーとの友情を深めてくれよ!
アリバラ先生から言われた通り、今のこの世界と私が知っている物語の違いを書き出す。
・氷石病の治療方法確立 → フローレス家の生存率アップ
・レオハルトとの関係改善 → ゴミカスのように扱われなくなった
・ルカの魔術レベル → 私よりすごくない……?
・フィンリー様が長く王都に滞在 → ずっといて欲しい
そして……。
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(うーん……具体的な日時まで記載されてたわけじゃないからな)
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ジェフリーは貧乏子爵家出身のため他の貴族の子弟から馬鹿にされていたが、その場を見たレオハルトは馬鹿にしていた奴らを叱責した。そして彼の勤勉さや誠実さを知り、またジェフリーはレオハルトの正義感や優しさを知り、信を置ける者が少ない宮中で二人は主従関係でありながらも友情を育んでいったのだ。
「ジェフリー・オルティスには会ったことないなあ」
やはりルカも知らなかったか。いったい今どこにいるんだろう。
「リディに聞いてたから、そういう集まりの時は注意してたんだけどね……殿下も忙しくなって集まり自体減っちゃってるし」
「え!? そうなの!?」
「そうだよ。リディだって週に三回は会ってるだろ?」
「私に会う時間を割いてるせいってこと!?」
(まさかそれが原因で!?)
私のなんちゃって妃教育に時間をとるようになって、他の貴族の子弟に会う時間がなくなってしまったから出会いイベントが起きていないの!?
「ジェフリー・オルティス? 知っているぞ」
「マジで!!!?」
しまった! なんて言葉遣いを……!
いつものティータイムの話題に出すと、あっさりとジェフリーがレオハルトに認知されていることがわかった。レオハルトにはまさか令嬢が使う言葉だとは思えず、外国語にでも聞こえたようだ。少し変な顔をされただけですんだ。
(出てきてるんじゃん! でもどういうこと!? 仲良くはなってないってこと?)
「なんだ。またそいつもおしというやつか?」
「いいえ。推しはフィンリー様ただお一人にございます」
そこ、重要だからしっかり覚えておいてください。
「言っておくが、ジェフリーより僕の方がいけめんだぞ!」
頻繁にレオハルトの顔を褒めていたせいか、なんだかナルシストキャラになってきている。アイリスの好みじゃなくなったらどうしようかと少し不安だ……でも本当に顔はいいからこの王子……笑うとすごいから……まあフィンリー様には敵わないけど。
「ジェフリー様も十分イケメン枠ですわ! あの眼鏡と泣きぼくろがたまりません」
そして真面目系キャラかと思いきや、荒事に強いというギャップにやられるファン多数だった。
「……どこで知り合ったんだ?」
他の人の顔を褒めたので拗ねてしまっているのがわかる。しかし私はジェフリーと知り合いじゃないので返答に困る。
「いつかの……お茶会の際に他のご令嬢がおっしゃってましたわ」
はい嘘です。他所のご令嬢からお茶会のお誘いなんてしばらく来てません! 氷石病の流行で自粛されていたのもあるし、以前やらかしたからというのもある。
「殿下はいつジェフリー様とお会いに?」
「……君が氷石病で寝込んでいた時だ」
レオハルトは今だに態度が悪かった時期の話はバツが悪そうにする。どうやら本当に反省しているようだ。
(なんだ、その頃には会っていたのか)
「とても賢いお方と伺いました」
「ああ、僕もだ。だから別日に改めて城に誘ったんだが、別件が入ってな……」
バツが悪そうにしているということは……。
「予定では君との婚約の真相がわかって、話し合いをした日だったんだ」
(あの日か~~~!)
タイミングが悪すぎる。あの日からだいぶ経ってるぞ! まだ大丈夫だろうか?
ジェフリーはこの物語のブレーンだ。ジェフぺディアだ。将来レオハルトが王になった時にそばに居ないと絶対に困る。何としてでも物語に参入してもらわなければ。
「それはジェフリー様に悪いことをいたしました。どうか殿下、再度お会いになる機会をお作りください」
「それは厳しいかと」
急に側に控えていたエリザが会話に入ってきた。
「オルティス家の皆様は先日領地に帰られたと伺いました」
「マジで!?」
「マジです」
(マジかよ……やらかしちゃってるじゃん)
フィンリー様に夢中でジェフリーのことを後回しにしていた。ずっと頭の片隅にはあったのだ。なのに……。
ジェフリーと関わるのは少々億劫だった。作中、リディアナと最も多く対立するのがジェフリーだったのだ。彼はレオハルトとアイリスを守るために積極的にリディアナを責め立てていた。だから気になってはいたものの、なかなか重い腰が上がらなかった。
「どうしましょう……?」
レオハルトに問いかける。なぜ僕に? という顔をした後訝し気に、
「なぜそんなに気にする。推しではないのだろう?」
「で……殿下の側には一人でも多く優秀な人材がいた方がいいに決まっています!」
「僕は十分優秀だが」
「そういうセリフは次期王に指名されてから言ってくださいませ」
「はっ! その時に婚約破棄したくないと言ってももう遅いがな!」
もちろんレオハルト側の従者は近くにいない。レオハルトからしても今のように軽口を叩ける関係性がとても楽なようだ。
「子爵家の三男ですよ! もし殿下にお仕えできることになればこれ以上の出世はございません」
「それはそうだろうが……だからなぜそんなに気にするんだ」
疑っている。まあレオハルトからすれば、なぜ公爵令嬢が子爵家三男を気にするのか理解はできないだろうけど。公爵令嬢としてではなく、作品ファンという立場からの心配である、とは言えないのだ。
「一世一代の機会を潰してしまったのです。罪悪感もわくというものですわ」
「……君がか?」
失礼な奴め。罪悪感は記憶が戻ってから湯水のようにわいている。
「殿下、可愛い婚約者からのお願いでございます。どうか再度ジェフリー様とお話しを」
こらこら、そんな呆れ顔で可愛い婚約者を見るんじゃありません。
「……それじゃあ春になってからだな。これから寒さもより厳しくなる。オルティス領は雪深い場所にある。王都との行き来は難しい」
それで二人の友情に影響はないだろうか。不安だ……だが現状、どうしようもない。この世界、前世のように気軽に旅行はできないのだ。
「今からならまだ間に合いますよ!」
「えっ!?」
今度はマリアだった。
「まだ領地にはたどり着いてないと思います! 道中の宿屋も予想はつきますし。早馬を出せばいけると思います」
マリアのアイディアで助かった。彼女はオルティス領近くの出身らしい。これで春まで待たずにすみそうだ。
「殿下! 殿下って私に負い目がありますよね?」
「わかった! わかったからそんなに近づくな」
身を乗り出してレオハルトに迫る。第一王子の権力をここで使わずしていつ使う! ジェフリーはこの国の未来の頭脳だぞ。そのくらいしても許されるだろう。
「いいからさっさとやってくださいませ!」
「負い目感じさせている側が言うことか!」
ブツブツと文句を言いながらもレオハルトはお付きに指示を出し始めた。
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