【完結】衣食住保障してください!~金銭は保障外だったので異世界で軽食販売しながら旅します〜

 どこにでもいる普通の社畜OL漆間蒼はついにブラック企業に辞表を叩きつけた!
 遊ぶ時間などなかったおかげで懐には余裕がある。
 家にはいつかやろうと揃えていたお料理グッズにキャンプ用品、あれやらこれやらが溢れたまま。
 現実逃避が具現化した品々である。

「……これを片付けたら海外旅行でもしようかな!」

 収入は途絶えたが蒼には時間がある。
 有限だが、しばらくは働かなくても生きていけるだけの蓄えも。

 なんとも晴れやかな……いや、それどころではない!
 浮かれてルンルン気分でこれからの生活を想像していた。

 だがそれも長くは続かない。

「あおいねーちゃんっ!!!」
「しょうくん!!?」

 コンビニからの帰り道、隣に住む好青年、桐堂翔がなにやら神々しい光に包まれていたかと思うと、
 足元には怪しげな魔法陣が……そのままゆっくりと沈むように吸い込まれている翔を助けようと
 手を繋ぎ踏ん張るも、あえなく蒼の体も一緒に魔法陣の中へ。

「え!? なんか余計なのがついてきた……!?」

 これまた荘厳な神殿のような場所に転がった蒼の耳に、
 やっちまった! という声色で焦り顔の『異世界の管理官』が。
 残念ながら蒼は、予定外の転移者として異世界に召喚されたのだ。

「必要ないなら元の世界に戻してくれます!?」
「いや〜〜〜残念ながらちょっと無理ですね〜」

 管理官は悪びれながらも、うんとは言わない。
 こうなったら蒼はなんとしてもいい条件で異世界で暮らすしかないではないかと、
 しっかり自分の希望を伝える。

「じゃあチート能力ください!」
「いや〜〜〜残念ながらそれもちょっと……」
「ちょっと偉い人呼んできて!!!」

 管理官に詰め寄って、異世界生活の保障をお願いする。
 なりふり構ってられないのだ。
 なんたってこれから暮らしていくのは剣と魔法と魔物が渦巻く世界。
 普通のOLをやっていた蒼にとって、どう考えても強制人生ハードモード突入だ。

「せめて衣食住保証してください!!!」

 そうしてそれは無事認められた。
 認められたが……。

「マジで衣食住だけ保障してくれとるっ!」

 特別な庭付き一軒家は与えられたが、異世界で生活するにも『お金』が必要だ。

 結局蒼は生きていくために働く羽目に。

「まだ有給消化期間中だってのに〜!!!」

 とりあえず家の近くに血まみれ姿で倒れていた謎の男アルフレドと一緒に露天で軽食を売りながら、
 安寧の地を求めるついでに、前の世界でやりのこした『旅行』をこの異世界で決行することにした。

「意地でも楽しんでやる!!!」

 蒼の異世界生活が始まります。
24h.ポイント 49pt
27,300
小説 15,810 位 / 198,072件 ファンタジー 2,429 位 / 45,881件

あなたにおすすめの小説

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

白い結婚?理想的ですわ! ~夫が愛するのは別の女性らしいので、私は自由に優雅に暮らします

ゆる
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

チョッキリ
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

【完結】料理人は冒険者ギルドの裏で無双します

vllam40591
ファンタジー
東京の超一流レストランで命を削り、ついには過労死してしまった天才料理人・椎名栄作(29歳)。目を開けば、そこは魔法と魔物が存在する異世界「アストラル大陸」だった。 偶然にも毒蜘蛛に噛まれた少年を救ったことで、栄作は自分に特殊能力「味覚分析」が宿っていることを知る。触れるだけで食材の全てを理解し、その潜在能力を引き出せるこの力は、異世界の食材にも通用した。 石造りの町アーケイディアで冒険者ギルドの料理人として雇われた栄作は、やがて「料理魔法師」という稀有な存在だと判明する。「魔物肉」や「魔法植物」を調理することで冒険者たちの能力を飛躍的に高める彼の料理は評判となり、ギルドの裏で静かに"伝説"が生まれ始めていた。 「この料理、何か体が熱くなる…力が溢れてくる!」 「あのシェフのおかげで、SS級の討伐クエストを達成できたんだ」 戦うことなく、ただ料理の力だけで冒険者たちを支える栄作。 しかし古き予言の主人公「料理で世界を救う者」として、彼は「死食のカルト」という邪悪な組織と対峙することになる。 鍋と包丁を武器に、料理精霊を味方につけた栄作は、最高の一皿で世界の危機に立ち向かう。 現代で認められなかった料理人が、異世界で真価を発揮し「グランドシェフ」として成長していく姿を描いた、笑いと感動と食欲をそそる異世界美食ファンタジー。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身の普通のサラリーマンだった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思ったのに何故か色々と巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。