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色々整理するのは当然で。

女神降臨。

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「アリシア!!」


 翌日、今か今かと待っていた私のもとに、待ち人来る。マチルダ先輩。


「マチルダ先輩ー!!」

 若葉色の動きやすそうなドレス姿のマチルダ先輩。いつも制服かシンプルなワンピースだったから正装姿は卒業パーティー以来。

「て、え? 大分変ったと思うんだけど、開口一番でわかっちゃったのすごい」

「いや、私も一応色々説明されてどうなんだろうって思ったけど、どこからどう見てもあなた、アリシアだわ」

「それはそれでなんか複雑」


 そんなマチルダ先輩はと言うと、緩く波打つ明るい栗色の髪に同色の瞳。一見知的なクールレディだが、大変面倒見の良い姉御肌な人情派。

 王都のことも学園のことも、右と左しかわからないド田舎平民育ちの私に、いろんなことを本当に、手取り足取り教えてくれた大恩人なのだ。

 ほぼ一切合切の事情もすでに打ち明け済みだけど、その前も後も態度が変わらない。女神か。


 しかも!


 例の断罪パーティーの後、有無を言わせずほぼ拉致状態で王城に連れ去られた私の代わりに、寮の私室に置き去りだった私物を全部まとめて教会に運んでくれたのだ。

 王城に届けると途中でなくなる可能性もあるから、と。


 私物なんて、教科書とノート、制服に数着の私服と、とるに足らないものだけど、誰にも見られちゃいけない愚痴ノートと嫌がらせ日記。あれは危険だ。

 一応、私以外が開けられないよう魔法をかけた小箱にしまっていたけれど、人の目に触れさせるのはよろしくないブツである。


 全く人の話を聞かない王子と取り巻きに対する不敬罪待ったなし、忖度なしのこき下ろし。あれはヤバい。

 それから、〇月×日何時ごろ、うんたら家もにょもにょ嬢にこんなことされましたとか、どうちゃら家げふげふ子息が勝手にカバンあけようとしてましたとか、いつかやってやんぜって気持ちで書き残した記録の数々。


 それらを一切合切まとめて木箱に詰めて、その晩のうちに自ら教会に届けてくれた。実際、翌朝には王子の命令だと私の私物をあさりに来た人間がいたらしいので、先輩のファインプレーがまぶしい。


 王城に軽く軟禁されて、それまでみたいに気軽に教会に行けなくなったけど、それでもなんとか色々申請出して、出かける機会をもぎ取って、やっとこれまでのようなことができなくなったと謝罪に行けた私に、みんなやさしかったなぁ


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