辺境で厳しめスローライフ転生かと思いきやまさかのヒロイン。からの悪役令嬢入れ替わり？

前世の記憶は突然に。

そして、それは必然。

　
　
　
　

「リリがいてくれないと村もいろいろ困るからな。ラームのこともあのバケモン級の魔法のことも一応口止めはしてるが……前々からリリは色々噂の的だからなぁ　こっちもできる限りするが、気を付けてくれ」


　それを伝えて、村長さんはララと一緒に帰っていった。


「なにをどう気を付ければいいのか」

　などと、のんきに構えていたのが悪かったのか。


　冬が来る少し前に、教会の偉い人がやってくることになってしまった。


　神父さんが、集まりの時にうっかりしゃべっちゃったらしい。

　うっかりじゃねぇぞと思ったけど、彼は以前から私のことをかなり自慢してたらしく（トイレのこととか、畑の改良とか、算術で使うブロックのこととか）そんな子供がいるのならとわざわざ向こうから来てくれることに。


　呼んでない。


　村長さんは終始仏頂面だし、神父さんは仁王立ちのお父さんにひたすら謝ってるカオス。

　おそらく、教会で引き取ると強引に連れていかれるだろうって、村長さんとお父さんは思っている。私もたぶんそうなるだろうなと思う。


　どうにか回避できないかと考えたところで、どうにもなりそうにない。


　教会にたてつくと、神父さんがいなくなる。

　神父さんがいなくなると、治癒してくれたり、子供たちに勉強を教えてくれる人がいなくなる。

　教会がない村は、そちらからの施しもなくなるので、立ち行かなくなる場合が多い。

　この村は大丈夫だろうけど、教会とたもとを分かつのはあまりいい事ではない。


　だからと言って、私を取り上げられたくはないというのが村長さんの本音かな。お父さんは純粋に私のことを心配してくれている。


　お母さんはというと、相当悩んでいた。

　もちろん私を手放したいとは思ってないみたいだけど、教会に行った方が今よりいい生活ができるのではないかとも思ってるみたいだった。

　魔法の勉強もできるし本だってきっと読める。

　畑仕事やフェルトづくりもしなくていい。

　三食ついて、雨風がしっかり防げる場所で眠れる。



　いずれ嫁に出すつもりだったのだろうし、それが少し早くなるだけ、つらいが、私のためにはいいのでは、と。そして、お父さんとちょっとけんかしていた。


　両親は、最終的に私がどうしたいのかで決めようと結論を出したらしい。


「うーん。会ってみてから考えてもいい？」

　と、答えたんだけど、私は結局何も考えられなかった。





　結論から言うと。


　私は、教会の人たちに会う前に、いきなり馬車で乗り付けた怪しい男たちに拉致されたから。