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前世の記憶は突然に。
ファンタジーっぽいことをやってみよう!
しおりを挟む「アクアアロー?」
とりあえず、言いながら腕を振ってみる。
ひゅんっと、イメージ通りの水の矢が羊めがけて飛んで行った。
よっしゃ! うまくいった!!
って思ったのは一瞬で、その水は明後日の方向に飛んで行った。
狙いを定めてやってみても、なかなか当たらない。
ふつうこういうのって一撃で当たってカッコよく仕留めるやつじゃないの?
とか思いながら、自分のノーコンっぷりにがっくりした。
やっと当たっても、さしたるダメージではなさそうだ。あのもこもこ、防御力高い。
もこもこしていないところは体に似合わないくらい細い足と顔くらい。大きな体に比べて顔は小さい。あそこを狙って水をぶつけるのは……無理っぽい。ノーコン万歳。
そのころには、お兄ちゃんたちは石を投げるのに飽きて食べられる野草摘みを始めていた。本来の目的はそっちだったらしい。
「そいつはほんとに、勝手に足を滑らせて落ちてくるくらいしか無理だからな。リリが小さいころ、たまたま落ちてきたやつを村のみんなで食べたけど、うまかったなぁ」
ヤッドが、よだれをたらさんばかりの顔でそう言うから、食べてみたいじゃないの。
一緒に来てたヤッドのお嫁さん、お義姉ちゃんのメルは、野草をぽいぽい背負子に入れながら、また言ってるわと言わんばかりの顔だ。
メルは同じ村で育った幼馴染。ヤッドより一つ年下で、ララや私にもやさしいお姉ちゃんだったので、二人が結婚すると聞いて小躍りせんばかりに喜んだのは私である。
二人の間に生まれた女の子、リルはめちゃくちゃかわいい。
「うー 水を投げるのは無理……どうするかなぁ 大きければ当たるかな。いや、重いとうまく飛ばせない。浮かせるのが関の山……」
ぶつぶついいながら、顔より少し大きいサイズの水玉をふよふよ浮かせる。もうちょっと上になる……おお、ゆっくりなら上げられるぞ!
水玉を、ふよよよよーっと上げていく。ゆっくり。
じわじわと一番端っこにいた羊に近づけて、頭を水で覆うイメージ!
とぷんと羊の顔に水がくっついた瞬間、ゴブゴボッギョエエエエエとものすごい鳴き声が響き渡る。
突然の大きな鳴き声にヒョエってなったけど、水を張り付けるイメージは持続。羊は水を振るい落とそうと、ものすごい勢いで顔を……いや、体をロデオみたいに跳ねさせて。
ズオオオオン! と、これまたものすごい音を響かせて、落ちた。暴れて足を踏み外したのだ。
あまりの出来事に、ヤッドもティッドもメルも私も、声も出ずに呆然と、しばらく落ちてきた羊を見つめていた。
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