辺境で厳しめスローライフ転生かと思いきやまさかのヒロイン。からの悪役令嬢入れ替わり？

前世の記憶は突然に。

できることだけこつこつと？

　
　
　
　
　来てしまったものはしょうがないけど、これがまた毎月来るのかと思ってたら、なんというか、食糧事情と言うか、栄養状態と言うか、お母さんもララも、半年に一回くらいしか来ないらしい。

　あー　確かに、前世で習ったような気がする。飢餓状態にある地域だと、生理の回数は減るって。

　ここには、生理用品なんて売ってない。

　どうやるんだろうと思ってたら、割と簡単だった。トイレに置いてあるあの綿。

　あれは庭にある広葉樹。あれの実。綿花とよく似たもので、それを挟んで吸収させるだけ。

　秋に実って、冬まで置くと綿ができる。去年は私が教会に行ってる間にお母さんとララで収穫して保存していたのだそうです。

　少なくなったらどこからともなく沸いて出ていたあの綿は、お母さんとララが妖精さんのように補充してくれてただけでした。


　汚れた綿はおしりを拭いたとき同様、トイレに捨てちゃう。化学繊維のナプキンと違って、天然素材だから。


　股の間に挟んで、生理の時だけパンツをはく。

　このパンツもかなり分厚い生地でできていて、大事な所はしみないようになのか動物の皮が外側に縫いつけられていた。


　パンツ履かない生活を二年近く送ったせいなのか、股のところがゴワゴワしているせいか、あんまり履きたくない感じ。慣れって怖い。


　ちなみに綿花に似ているけれど、繊維は綿より短い。これは糸にするには難しそう。糸の作り方よく知らないから余計無理だ。


　前世で読んでた異世界転生や転移ものの主人公ってすごいよね。みんな難なく一撃で天然発酵のパンを作り、しょうゆやみそを作り、石鹸を作り、その他いろいろ前世の知識チートで改革していく。

　自分がなってみてしみじみ思い知ったよ。

　無理だ。私には、無理だ。

　ふわふわの天然酵母パン。前世で大好きだったけど、自分で作ったことなんてない。ついでに言うと、手探りで作るにしても腐らせて無駄にしていい食材などない。

　ここに、そんな余裕なんてないのだ。毎日の生活だけで一日があっさり過ぎていく。

　貴族に転生していたら、どんなに貧乏でも衣食住を任せられる人員がいたりするし、なんだかんだで余力もあるから試行錯誤も可能なんだろうけど、前世でおなじみの便利家電もないこの世界で、何もかもを自分たちの、人の力で助け合わねば生きていけない状態では、輝かしい改革なんて夢のまた夢なのだ。

　私ができることなんて、たかが知れている。

　でもまあ、そう言うのがなくても全然いいんだけどさ。

　確かに不便はいっぱいある。冬はめちゃくちゃ寒い。でも、ここにはやさしい家族がいる。

　それだけで、十分だ。


　うん、考えても仕方ない。


　さて、その便利な綿ができちゃうのは、結構大きな木なんだけど、どんなに痩せた土地でもすぐに大きくなるし、挿し木で増える。

　優秀。

　でも根を大きく張るので、ある程度離して植えないとお互い枯れてしまうんだとか。


　思い出してみたら、新しく移住してきた木を持っていない人に分けるために、春になるとお母さんが隣の畑との境界に結構な数の挿し木をしていて、秋になるとそれらはいつの間にかなくなっていた。


　お母さんは、ここに引っ越すことになったとき、これだけは絶対持っていくと決めていたそうだ。

　お父さんの仕事柄道具もあって、人力で引くものだけど荷車があったから持ってこれたんだよ、女にとっては絶対ないと困るものだからって教えてくれた。


　この綿でお布団作れないのかなと思ったけど、服だってなかなか買えないのに布団にするほど大きな布、見たことないわ、そう言えば。


　ちなみに、これが綿花に似ているのなら種から油がとれるんじゃないかと思ったんだけど、なんとこの木、種ができなかった。


　うん、挿し木で増やすって時点で気づけばよかった。