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前世の記憶は突然に。
対、豆。ついでに麦。
しおりを挟むついで、豆。
お父さん曰く、これがすごく繊細らしい。
植えても運悪く雨が続くと腐るし、晴れが続くと芽が出る前に森から鳥が来て食べてしまったりして、発芽率は芋より悪い。
でも、乾燥させたら芋より持つので、冬を越すためには豆は必需品なのだ。
あいにく、私は豆について、芋ほどの知識がなかった。育てたこともなかった。
でも、鳥に食われない方法は思いついた。
苗にしてしまえばいいではないか。
お父さんに頼んで、深さが五センチほど、大きさは三十センチ掛ける五十センチくらいの、いわゆる苗床を木で作ってもらう。
そこに土を入れ、豆を植えて水をやってみたところ、見事に腐った。一つも芽吹かなかった。
しょんぼりである。
今度は水をやらずに様子を見たけど、うんともすんとも芽が出なかった。
苗床に埋めた豆は、乾燥したまま腐りもせずにそこにあって、芽吹く気配は一向にない。
やっぱり水が必要なんだろうけれど、やったら腐る。豆は繊細だ。
結局この年、私は豆に負けた。
それ以上の改善が思いつかないうちに、豆の植え付けの時期が終わってしまった。
通常通り植えた豆は、例年とほぼ同じ発芽率で、ほぼ同じ収穫だったのでよしとする。来年リベンジである。
最後は麦。
麦は比較的簡単に芽吹く。
青々といい感じで芽吹いた麦の上を走り回ってお父さんとお母さんとお兄ちゃんたちとララにめちゃくちゃ叱られた。私につられて走り回ったレットも一緒に。
だって、昔読んだ漫画でやってたんだよ、麦は踏むといいって。
どういいのかまでは覚えてなかったけど。
私とレットがめちゃくちゃにした麦が、割となんでもなかったかのように復活したのをみて、私も一緒にほっとした。麦強い。
そして、秋の収穫の時期。
私とレットが踏みまくった麦は、例年の倍とまではいかなくとも、一.三倍くらいの収穫量だった。
粒も大きく多い。
目に見えて、首を垂れる角度が違った。
何もしなかった場所より麦穂がずっしりしていたのだ。
叱られたときに『麦は踏んだらいいって聞いたんだもん』と言い訳したことを覚えていたらしいお父さんに誰から聞いたか聞かれたけど、ゲンですとはいえず、そんなことを言った覚えはないことにした。
灰を撒いた芋畑もいい感じだったらしく、両親は安心して年が越せると喜んでいた。
よかったよかった。
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