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前世の記憶は突然に。

そして、転生?

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 んで、何がどうなったかわからないけど、この世界でリリとして生を受けたらしい。よく読んでた小説に出てくるカミサマとかに会った記憶はない。たぶん。


 今こうしてほぼ思い出したけど、なんとなく今の生活の不便さにグチグチ言ってた私。もっとなにかこう、便利な生活にしたいと思っていたけどどうしたらいいかわかってなかった。


 リリの家は、この開拓村ではそこそこ恵まれている方だったと今ならわかる。


 早い時期に入植したので集落に近い広めの畑を持っているし、お父さんは農業兼業の大工だから、多くはないけど日銭も稼げる。

 なにせ、三日とあけず新しい入植者がくるから。で、ここの暮らしの過酷さに耐えきれず逃げ出した人の家を修理して、その人たちに提供するのだ。


 新しい人は大勢来るけど、村の人口は微増って感じか。

 亡くなる人も少なくないし。

 便利家電も何もないし、トイレは汲み取りだけど、この世界には魔法がある。


 って言っても、平民はほとんどが水魔法の適正しかないし、魔力も少ないので、とりあえず喉が渇いたときにコップ一杯分の水を出して飲める程度だけど。


 そんななか、私こと、リリは別だった。


 ほとんどの平民は、茶色い髪と瞳だけど、私はなぜかピンクの髪とピンクの瞳だ。

 顔はちゃんとした鏡がないからはっきり見たことがないけど、お母さんもお姉ちゃんも美人だからきっと美人寄りだと思う。思いたい。水に映すくらいしか方法がないからね……


 家族で一人だけピンクなのだ。

 なんでも、平民にもたまに、色付きと呼ばれる人が生まれてくるらしい。

 色付きは貴族に多い、というか、貴族は大体頭の色がカラフルなんだとか。

 お母さんのおばあちゃんもピンクだったから、そこからの遺伝だろうって言われたけど、幼かった私は、お母さんと同じ色がよかったって泣いた。

 ララは私のピンクがうらやましかったらしいけど、みんなとおそろいがいいと泣く私を見て、確かにその通りだと思ったと言っていた。

 本当にいいお姉ちゃんである。



 ただ、この色付き。なんと、魔力量が多い。

 かくいう私も、水瓶にいっぱい水を出しても平気だ。

 ここに引っ越してきた五歳くらいの頃、試しに夏にうちに割り当てられた畑に水を撒いてみたところ、一面撒いても全然平気だった。


 この辺境では、水汲みだって大変な仕事だから、私が水を撒けるのは家族にとっては大きなインターバルになる。

 普通は一家中で水を汲んで運んで撒く作業を、一人でペッとできてしまうので、お父さんは耕すとか植えるとか以外の畑仕事をほとんどしなくていい。だから大工もできる、という寸法。


 他の家の水まきも、魔力があるだけは手伝う。

 最初の頃はうちと数軒分くらいで魔力が切れていたので、今日はこの三軒分、明日はその右側を三軒分。みたいな感じで村中の畑を順繰りに回るのだ。


 うちだけが楽をしていたらやっかみの原因になる。そして、公平さを欠くといさかいのもとになる。

 そうしているうちに一日に三軒分だったのが四軒分になり、五軒分になりと徐々に魔力量が増えて行ってただただた水まきが楽しかった。

 今じゃ全ての畑に水を撒くくらいは造作ない。


 潤沢に水を出せるので、大きなたらいを使って三日に一回くらい浅いとはいえ浸かって湯で体を流せるから、今の生活が苦ではないのかもしれないけど。

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