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ANOTHER DAYS
17 side夏清
しおりを挟む楽しい時間って、どうしてこんなあっという間に終わっちゃうのかしら。
三日あると思ってたのに、連休なんてあっという間。
お買物に行って、映画見に行って、ボウリング行って、ご飯食べに行って。
そんなことやってたら時間なんか全然足らないの。気が付いたら火曜も終わって、学校行って予備校行って、帰宅時間は午後十時。
「ただいまー」
そしてお休みに遊び倒したせいか寝不足なのか、なんかもう、日常生活に戻ったらどっと疲れが。今日もさくさく寝ちゃおうっと。
「おかえり」
ん?
朝出かけるときは普通だったよね? というより不機嫌だった? なんだかんだで昨夜、一緒に寝たけど私、何もさせないで寝ちゃったもんなー。ほんと。ベッドに入った後のこと何にも覚えてないの。気付けば朝。慣れってスゴイ。
「そうか?」
うん。
やだなぁ。先生がゴキゲンなときってロクでもないことが多いもん。むしろフキゲンなときの方があっさりしてて好きなことできるんだよ。
そんなこと考えながら部屋に荷物を置いて、制服着替えようと思ったら。
「なにー?」
リビングから先生の声。いいからちょっとおいで、みたいな呼び方。来いじゃなくておいで。うう、ますますご機嫌?
行かなかったら着替えてようがなんだろうがこっちに来るから、上着脱いでリボンタイ解きながら、呼ばれたほうに行く。
「なんなのー?」
もう、お風呂入ってご飯食べて家のことしたら寝るのよ。私は………
……………………………げ。
「ちょっ!! 何でそんなのがここにあるのよ!?」
隠しといたのに、それはなに!? そのテーブルの上に置いてある、ちょっとしわしわになった紙袋っ!!
「面白いところに入ってたな」
ぎゃー。買わされたその日にこっそり例の衣装ケースの真ん中に隠してたのに、どうして探し当ててるの?
「な、な、な。なんで、先生がそれのこと知ってるのよ!? あ!! キリカね!? ばらしたのキリカでしょう!?」
というよりも、キリカ以外だれもいないわよ犯人。
「おう、朝イチで言いにきたぞ」
ああ、なんかもう、ものすごく浮かれながら先生のとこにチクりに行ってるキリカの姿が見てきたみたいに思い浮かぶわ。覚えてなさいよぅ、今週末からある中間テストのヤマ、嘘おしえてあげるからねー
「せっかく買ったのにそのまま仕舞いこむヤツがあるか」
もったいない、と続けた後。すでに一度開けられた形跡のある袋から、もったいぶったしぐさで先生が、あの……服を引っ張り出す。
「着て」
「イヤ」
もうもうもう。怖いくらいの笑顔。満面。怖いからそんなうれしそうに笑わないでよう。
「やだ。買ったのも何かの間違いなんだもん」
「じゃ、何で捨てないんだ?」
「………も、もったいないから」
どうせ貧乏性だよ。着ないって分かってても新品だもん。捨てられませんでした。もったいないおばけがでちゃうわ。
「買ったのに着ないのももったいなくないか?」
なくない。
「買ったことがもったいないわ。だって、に、似合わないもん」
そうよ。似合わないってことにして……
「ほんっと、お前、嘘つくの下手だな」
むかつくーなんでバレるの?
「……だな」
「え?」
「俺が言ったときコレ着るなら、あそこに入ってた服お前の好きにしていいぞ」
「あそこに入ってた服って、コレ隠してたアレ?」
「そう」
「勝手に処分していい?」
「コレ着たらな」
うむむむむ。
すごいぞこの服。
先生、すごい譲歩してるよ。あの山処分していいって。つまりはアレと引き換えにしてもコレを着せたい、ってことなんだけど。
「それ、そんな気に入った?」
うーん。わかんない。同じようなのはほかにもあるんだもん。なんでそれに固執するの? 先生。
「まあな。お前が買ったのだし」
ああ。
うん。
そう。
「ほんとにあれ、どうにかしていい?」
「ドウゾ」
よし。半分は樹理ちゃんに送りつけるとして、もう半分はキリカにしよう。このあいだ紹介してもらったカレシ宛に送ってやる。
「えと、ほら、他にあるやつとかは……」
脱衣所のたんすに入ってるのとか、先生の部屋のクローゼットの隅にあるやつとか、私のたんすになぜか入れられてるのとか。どっちかって言うと、そっちのほうが使用頻度が高いんですけど。
「ダメ」
………ですか。やっぱり。ちっ。
「あんまり待たせると、勝手に脱がして着せるぞ」
え? って。考え事して俯いてたら不意に影が落ちてきて、見上げたら目の前まで来てるのよ。先生が。
「勝手にボタン外しながら、言う?」
「どうする?」
……………………………
「………お風呂、入ってくる」
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