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AFTER DAYS 終わらない日常
42c 草野キリカの視点 5
しおりを挟む「あかちゃんできたの」
「う……ん? ぅっえ!?」
「今日病院行ってちゃんと確認してきたの」
「ウソ嘘うそっ! マジでホントに? いつっ!?」
「わかんない」
「はっきり何日って分らなくても今何ヶ月か分かればいつ頃生まれてくるかわかるでしょうっ!!」
「あ、そっちか。えっとね、十一月のおわりくらい。だと思う」
………そっちって……それ以外ナニ? どっち? あのねぇ、誰が仕込んだ日なんか聞くのよ。
年内? 子供って生まれてくるのに十月十日(とつきとおか)ってことは在学中!? でもあれぇ? 一月の時たしか生理来てたよなぁ……あのあとか? そう言えばあの時、カスミって結構恐いこといってたよなぁ。
「あ、なんか混乱してるみたいだから言っとくけど、人間の妊娠期間って数えるのは大体二百八十日だから」
え?
「妊娠の月数ってね、二十八日で一ヶ月って数えるの。妊娠十ヶ月って言うのは、実際は、ひと月を三十日と考えたら九ヶ月と十日。最後に生理があった最初の日をゼロ日にして、そこから数えていくから、排卵なんかのことを考えると、本当は二週目で妊娠ってことになるの。だから子供がおなかにいる時間って言うのは二百六十日くらいなわけ。私の場合は今ちょうど妊娠二ヶ月目」
ごめん、もっと混乱してきた。
「あー……? とりあえず言いたいのは、在学中は無罪だったてコト?」
「んー……微妙……かな」
「……なんかさ、分かったんだけど。ぶっちゃけた話、カスミのコレがあって、そっちに費やす体力があまるから顧問受けたんでしょ」
ほんとにさー。カスミの彼氏が井名里先生だって知らないころから思ってて、こうなってからさらによく分かったんだけどこの人たちの日常、濃いよ。すげーよ。井名里先生はともかく、カスミもよく体力もってるよなと思うもん。カスミって結構、自分のことはベラベラ喋るから。というより、ヒトに聞いて欲しいんだけど、やっぱり今まで大っぴらに喋るわけにもいかなかったし。で、事情がわかる私にひたすら喋りつづけるわけ。大半のろけ。
「じゃあ別にいいじゃん。素直にオメデトウってことで。やるよ、やりますよ。ご祝儀ってことで野球部のほうも手伝わせてイタダキマス」
なんだかもう、考えるのもバカバカしー。そう言うことはどうせ自分のときに考えたらいいんだから、もう難しいことはいいや。それに部活の方だって、井名里先生はもう新城東に五年以上いるはずだし、この間はあんなことだったし、今年度で移動かかるだろうから、一年付き合えばいいでしょ。
後部座席の真ん中に陣取って、両手をシートの上部にかけて、反り返って足を組む。なんだかもう、目の前で幸せそうに笑ってられたらそれ以外ないじゃん。
「えへへ。ありがとう」
「それなら、やっぱり今日は顔出したら帰ろうよ」
だってほら、めちゃめちゃ母体の精神衛生上よくなさそうでしょ。今日の集まり。私の言葉にカスミがもう一度アリガトウと言って笑う。
「それって誰かにもう言った?」
「ううん。まだ。キリカが一番だよ。なんかほら、わざわざ電話かけて言うのってちょっと。他の人には逢ったときに話そうと思ってるから……って、キリカ?」
ふーん。
カスミの答えを聞く前に、カバンから携帯取り出してリダイヤルの中からひとつ選んで発信。
ちくってやる。
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