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AFTER DAYS 終わらない日常
14 真宮真吾の視点 2
しおりを挟む予定時間五分回ったところで、遅れる連絡のあった哉のほかにも来ないやつは居たけど受付終了。出入り口にボードを置いて勝手に記帳して入るようにしてから中を覗く。十年経っても仲のよかったグループとそうでなかったグループは、やっぱり分かれるものらしい。
ウチの学校のクラス分けはえげつなくて高校は五組まであるんだけど、一組からアタマのいいやつ詰めていくわけ。
礼良は問答無用で六年間トップだったからもちろんずっと一組。他にも十人くらい落ちたことのないメンツがまず一グループ。それから、高校からの追加組。中学からの在学組をなぜかライバル視してて、絶対歩み寄りはない。
そのほかが、浮沈み組。何回か二組三組にオチながらも、なんとか高校三年のとき一組に残った連中。ここは、何とかしてトップグループとお近づきになりたくて仕方ないのだけど、どうにもなぜか、見えないオーラに阻まれて礼良たちを遠巻きに見てるだけ。一人例外を除いて。ちなみにさっきの樋口はこのグループ。
礼良たちの後に来たほかのカップルが居たからあっちはあっちで女性陣もいて、別でグループを形成している。向こうの女性陣は三人とも二十歳超えてるみたいで、若さもキレイさも礼良のところのが勝ってる。
「今回トラブルメーカーが一人もいないのは呼んでないのか? 真吾」
高校三年生のときの担任は呼んでも来ないので、締める人間のいない会場中に入るとなし崩しのようにはじまっている。飲み物を取って自分が寄生するグループに加わる……自慢だけどこう見えて一応、トップ十から落ちたことはなかったのよ、俺。
礼良の彼女を中心にしてできた輪の中に入ると辺りを見回した小笠原藤司(おがさわらとうじ)がニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
「呼んでないわけないだろう……声かけたよ」
返事はもちろん『絶対行くから』呼ぶのも怖いけど呼ばないともっと怖い。
「前のとき幹事やった三次(みよし)が一ノ瀬になにされたか知らないやついないだろうが」
思い出しただけで怖い。
「大丈夫だろ真吾、オマエ今、身一つだし」
「そっちは問題じゃない!! あいつに職場に乗り込まれてみろ、次の日から出勤できないくらい完膚なきまでにやられるだろうが!」
「そーだなー三次クン、今なにしてるかなー」
気楽そうに藤司が天井を見上げて言う。オマエなぁ、あいつ連絡先、今本当にわかんねーんだよ。家のほうに連絡入れたら逆に知らないかって聞かれたんだぞ。捜索願、警察に出してるけどわからないってお母さんに泣かれたんだぞ?
どこかで三次の亡骸が、野ざらしになってないことだけを祈ろう。
「大体フツーさ、性別変わっても来る? クラス会」
来ない来ない。フツー来ない。三次だってそう思って呼ばなかったに違いない。でもあの一ノ瀬をフツーという定義の中に入れた三次も、もうちょっと考えて行動するべきだっただろう。
「それってミカさんのこと?」
そうだよー……お嬢さんホントに背が高いねーぎりぎり見下ろされない限界からの視線。
「そうそう。一ノ瀬のこと。お嬢さん知ってるの?」
「うん。この服もミカさんとこの」
彼女のセリフにみんなの視線が一人に集中する。
「なんだよ」
いや。なんでもない。けど、よく会えるよな……俺は未だにあの一ノ瀬には慣れない。性別変わって、なんだかより怖さが倍増した気がするのは……絶対気のせいじゃない。
「ヤツが来るまで待とうかと思ったけど、顔知ってるなら面白いものを見せてあげよう」
そう言って、藤司が笑いながら壁に並べてあるイスに置いた荷物のなかの茶封筒を取って、中から見覚えのある装丁の本が。
「お前……そんなもん持ち歩いてるのか?」
「まさか。今日はゲストがあるって聞いてたから特別」
見間違いでなければ卒業アルバムだ。第百十八期卒業生の。
「見たい?」
「見たいです! 先生の本棚変な本ばっかりでアルバムとか一つもないもん」
ぱーっと顔を笑顔にしてから、思い出したみたいに彼女が礼良を見て、全身から『見たい』オーラを炸裂させている。そう言う無駄なエネルギーって十代の特権だよな。
ため息混じりの了解を取り付けて彼女がうれしそうにアルバムをめくっている。
「お前、本の趣味まだ統一してないのか?」
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