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キス xxxx
6-3 共鳴
しおりを挟む「ん…」
胸にある井名里の唇。吐息が触れた場所から溶けるような熱さ。その唇が肌に触れる寸前、産毛をなぞる。夏清が身を捩るように動かしたことで滑らかな肌が唇に押し付けられるようになる。
口付ける甘い音とため息のような夏清の呼吸。触れて離れて、白い肌にいくつも痕を残す。すんなりとした背中を撫で回す大きな手が徐々に下に下りていって、ちょうどその手のひらに収まる尻を覆う。
触られてひくりと緊張するようにその場所の筋肉が動く。反射的に離れようとする体を、背中を左手で押さえて右手をするりと内腿に滑り込ませてなでながら往復を繰り返す。
「んんっ」
ばちん、と言うひと際大きな音で薪がはぜる。音に驚いた夏清の体がびくりとはねる。
「や、だめ。今日、私がっ」
「いいって。ムリしなくても。いつもどおりで充分、夏清はそのまんまで」
「だって」
「そう何回もあんなじらされたら俺のほうがもたないって」
体を離した夏清に、井名里が苦笑する。数え切れないほどつけた痕を確認するように左手の指で胸元を押さえながら。
「……じらす? って?」
胸元と内腿に、吸い付くように触れていた手を止めて井名里が本当に不思議そうな顔をして自分の肩に両手を置いている夏清を見る。
「………知らないでやってたのか」
「先生、その言い方、疑問形じゃなくてなんかニュアンス納得してる」
「するだろ」
「しない。じゃあほんとは気持ちよくなかっ……た? ……んっ! ……ゃん」
「夏清は、これきもちいいだろ?」
左手と右手がそれぞれの場所の敏感な部分を掠める。けれどそれだけで、また別の場所に戻って、一瞬つきあがった快感をゆっくりと落ち着かせる。
「もっと触ってほしいだろ?」
素直にうなずく夏清に井名里が微笑む。
「でも触って、恥ずかしくて言えないだろう?」
「……うん」
「おんなじ。ってかそれ以上。男だともっと言えないし、悲しいかな女より堪え性低いからな。アレくらいでも壊れるかってくらい追い詰められたぞ」
「それがわかんない」
「夏清が、アレをどう教えられたのか知らないけど、常連だけにしとけって言うのは知らない男は途中でキレるだろ、とっとといかせろって。まあその分、開放感はハンパじゃなかったけど」
楽しそうに手のひらを動かしながら笑って井名里が言う。
「……あれって、そうだったの?」
「そうだったの」
「ごめんなさい」
しゅんと元気がなくなって、小さな声で謝る夏清の顔を井名里が覗き込む。
「だから、どうして謝るんだ? 言ったろ? 久しぶりに死ぬほどよかったって」
「だって、先生のこと思ってやっててもなんか、ズレてるし。やっぱり先生みたいにはできないんだもん」
「そうだなぁ お前アタマいいくせにものすごく騙されやすいもんな」
そう言われて拗ねたように結ばれた夏清の唇にキスをして井名里が続ける。
「でもそれでいいんじゃないのか? 無条件に全部疑うより、信じたほうが裏切られたりすることは多いぞ? でもお前は信じるだろ? そうやって痛い思いした回数が多いほうが、これから生きてくことに絶対プラスになる。信じたことも騙されたことも傷つけられたことも、間違えたことも。全部」
一言一言、夏清の頬、耳、顎、首筋。井名里の唇が位置を変えて触れながら言葉を紡ぐ。
「全部こうやって目の前にいる夏清の中で新しい夏清を作っていくだろう?」
後ろからまわして内腿を撫でていた右手が尻を撫で上げて腰を通って前に回る。井名里がすばやく体勢を変えて、こじ開けるように夏清の両足の間に自分の右足を入れて閉じられないように開かせる。
「人は変わる。どんどん。いろんなものを知って。だから」
無防備にさらされた胸の頂に口をつける。前に回した右手は、先ほどとは逆の足の内腿を撫でている。
「俺の話を聞いて、やっぱり夏清は変わったはずだ。だけど」
胸の間の、まだ紅くない場所を探して吸い付く。
「それは俺がずっとおびえてた変化じゃなくて、やっぱりお前はこうやって」
左手が、細い体を後ろから抱きしめるように回って夏清のわきの下をくぐって左胸に到達する。
「たった一人、夏清だけに許されるってことは」
その手のひらの下の鼓動がその存在を確かなものにさせる。
「世界中に信じてもらうより救われる」
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