やさしいキスの見つけ方

神室さち

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ばれんたいん きす

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「コレもいい眺めだな」
 そう言いながらおしり触ってるの。いーやーらしーい、触り方。
 立ってギリギリみたいなミニだもん、こんな風にされたら絶対めくれ上がるに決まってるもん……よかった自分で見えなくて。見えたらきっと死んじゃいたいって思ってるよ。
 そのまま担いで自分の部屋に連れこんで。
 アレ。なんかあっさり降ろされちゃった。ベッドじゃなくて床に。珍しーい。
 なんにも言わずにクロゼット開けて、中に上半身突っ込んでごそごそ何か探してるの。今の内に部屋に逃げて鍵かけたら……
「逃げるなよ」
 そーっと足を動かそうとしたらクギ刺されちゃった。背中に目でもついてますか?
「お、あったあった。やっぱり捨ててなかったな」
 クロゼットから出てきて。手にはクリーニングから返ったままの袋。また変なもん出してきたよ……
 ばさって、広げたそれは。
「…………………」
 白衣。どう見ても白衣よ。しかもよく見たら、身返しのところにちゃんと『井名里』って刺繍で入ってるの。ってことはナニ!? それはマイ白衣!?
「教師になったとき作ったんだがどうもいやでな。コレの袖がピンクになるのが」
 ……そうね。先生って白いチョークと赤いチョーク、同じくらい使うもの。スーツの袖がピンクだもん。白衣だってピンクになるわよ。化繊のスーツなら払うとわりと粉が落ちるけど、木綿の白衣だと落ちにくいかもしれないな。
 そんなどうでもいいこと私が考えてる間に、先生、スーツを脱いでそれを羽織る。
「ほれ、これでお前だけじゃないだろ」
 激しく論点ズレテマス。
 きっと不機嫌な顔してたんだと思う。むーって。先生が困ったな、って顔で笑って、両手がほっぺた。するするって。
「裸に白衣の方がよかったか?」
「……絶対いや……するのも見るのも絶対いやぁ」
 どっちかって言うと後者のほうがイヤ……でも顔触ってもらうのは好き。きっと顔触るとね、私、はにゃってなっちゃうの。先生、それわかってて触るんだよ。
「すげぇ似合ってる。かわいいよ」
 キスしながら言わないで。それってすごくえっちくさいよってこと?
「うん、先生もね、白衣にあってる」
「変態教師みたいで?」
「変態教師みたいで」
 あ、ハモった。疑問形と肯定。お前の言うことなんかお見通しだよって笑ってるの。むがー悔しい。変態のお医者さんって言えばよかった。ってか、普通は白衣はお医者さんだよねぇ……でもなんか、先生は学校の先生なんだよね……それ以外考えられないって言うか。
「知ってるか?『エッチする』のHって『変態』の頭文字だって」
「しらないっ! もううそばっかり」
「コレはホント。他にないだろ?じゃあなんでHっていうんだ?」
「…………」
 知らないもんそんなこと。
 半分信じかけて疑ってる私を見て楽しそうに笑ってから、先生、自分だけ椅子に座っちゃう。年末に買ったすごい高かった椅子。時々こっそり座ってみるんだけど座りごこちものすごくいいの。柔らかすぎず硬すぎず。背中のリクライニングもいいかんじ。私の部屋に置いたら確実に邪魔になるサイズだけど。
 背もたれに体預けて、足組んで。あ、なんかすごい、そうするとあやしい人体実験やってるお医者さんみたいに見えるよ先生。
 手招き。
 うーんどうしようかな。
 なんて思っても、糸で引かれるみたいにするする先生に引き寄せられる。変な引力があるのね、先生の手招き。足組んでるの戻して、先生が自分の足とんとんって。ココに乗れってこと。先生の肩に手をかけて、よいしょって。腰に先生の手。
「や、ちょっと」
 ぐい、って引かれて、足が挟まっちゃうと思ったら、ほいほいって足伸ばさせられるの。肘掛の外に。足開いて、先生の上に乗ってるの。よく考えなくてもすごい恥ずかしい格好だよ。下見ないように。先生はこの格好お気に入りなんだよねぇこの椅子買ってから。

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