やさしいキスの見つけ方

神室さち

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抱きしめて抱きしめて抱きしめてキスを交わそう

5-1 家

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 夕食も外で済ませた。家に帰った時には、車を運転していた井名里はもちろん、夏清もかなり疲れていた。
「風呂に入らないと潮風に当たったからべたべたするだろ?」
「うん……」
 車から家まで、井名里の腕に寄りかかって眠そうにしていた夏清にそう言って井名里が風呂を沸かしに行こうとする。
「夏清?」
 べったり、と後から腰に巻きついた夏清に井名里が怪訝そうに聞き返した。
「うん。なんかね、すごい、先生にくっついていたい気分」
「ハイハイ。じゃあ気が済むまでくっついてろよ」
 夏清をつけたまま、井名里が風呂を沸かしにいく。
 最初こそ面白がって夏清をくっつけて色々移動していた井名里だが、十分もしたころには飽きたのと重いのと鬱陶しいので、井名里もいささかうんざりしてくる。いつも離れてくれと言っていた夏清の気持ちが、少しわかった気がした。
「夏清……」
「なに?」
「悪いけど、ちょっと離れて」
「やだ」
「………………これから風呂に入りたいんだけど?」
「いいよ」
 どうやっても離れないつもりらしい夏清の様子に、井名里が苦笑した。しがみつかれていると腰が重いので抱き上げようとすると、それは嫌らしく、するする逆のほうに逃げてしまう。夏清としては、抱きしめられるより抱きしめていたいのだ。
「いっしょにはいるのか?」
 いつもならそのまま『嫌!』と叫んで逃げてしまうのに、夏清が何の躊躇もなく頷く。そのままくっつけて、脱衣所まで連れていく。
 たまにはこういうのも、悪くないかと思いながら。


 部屋が狭いのに、風呂や脱衣所が広いはずはない。
 加えて脱衣所には洗濯機と洗面台もある。
 その狭い脱衣所で、服を脱がせても井名里のするままで、抵抗らしい抵抗をしない夏清に調子が狂う。
 井名里が脱がそうとしてもいつも自分でやるからいいと、服を脱いで逃げるように先に風呂のほうに行ってしまうのが、おとなしく服を脱がされて、触られてもくすぐったそうにするだけだ。いつもと段取りが違うので、どうしようかと考えてから井名里がシャツを脱ごうとすると、待っていたようにベルトをガチャガチャはずされて、井名里のほうが驚いた。
 バストイレがセパレートになっているだけマシ、と言った感じで、湯船も洗い場も座れば人一人でいっぱいだ。否が応でもくっついていないと居られない。狭い狭い空間で、立ったまま抱き合えば、湯気の湿度と海風でついた塩のせいか、肌と肌がぺったりと吸い付くようになじみ合う。
 べったりくっついたまま本当に何もしないで、ただそうしている夏清を見下ろす。こぼれた長い髪が、井名里のわき腹のあたりでふわふわと動いていてくすぐる。
 いつもならとにかく一分一秒でも早く済ませようと、落ち着きなく狭い風呂の中を動き回る夏清が何もしてくれないのならば、井名里が動くしかない。不自由な体勢から何とかシャワーをひねり出す。
「ほら、顔上げて」
 井名里の胸に頬をくっつけていた夏清が素直に顔を上げる。顔にかからないようにしながら頭から湯をかける。
「先生、ぬるい」
「がー! 文句言うなら自分でやれ」
 しれっと文句を言う夏清に、井名里が吠える。ぬるめの湯が好きな井名里と体温が低くて熱い湯のほうが好きな夏清では、おのずと風呂の適温が変わってくる。それでもわしわしと空いたほうの手で夏清の頭についている塩気を落とす。
「いや。これがいい」
「ハイハイ。頭洗ってやるから一回だけ離れて、ほら」
 顔に雫が落ちてくるのも平気な様子で抱きつきなおした夏清に、井名里が言う。お互いの、いつもと全く逆のセリフに、同時に笑い出す。
 笑って、夏清が体を離した。やっと自由になれた井名里が、肩こりをほぐすような動作をする。
 その様子を見ながらクスクス笑いつづけている夏清の顎を引き上げて、口付けをする。
 何度か軽くあわせた後、舌を絡ませて、音をたてて深いキスを繰り返す。狭い浴室に、出しっぱなし水音とは違う粘着質な音がこだまする。
「ふ……ぁ……んっは……あんっ」
 頬、顎、首。鎖骨を甘噛みして、その下の肌に痕をつける。まだよく流されていない肌に、微妙な塩気が残っていて、いつもと違う味に井名里がどんどんエスカレートする。
「やぁんっせんせっ……がっこ始まったら、身体測定、あるからっ」
 そう言われて井名里の動きが一瞬止まる。が、止まったのは本当に一瞬で、今度は痕をつけない代わりに舌が這う。
「ひぁっ!! んっあ……」
 胸の先端を絡めとられて、夏清が悲鳴をあげて井名里の頭を抱く。吸われて、転がされてつぶされる。力加減もタイミングもばらばらで、夏清が声をあげながら息をする。
 もう片方の乳房を揉んでいた手がわき腹からお尻へむけて移動していく。そっとなでると、お尻の筋肉がひくひく動いているのが伝わる。
「あっ……やんっ……へ、変なとこ、触らないでっ……いやぁん」
 井名里の手から逃げるように夏清が腰を浮かせる。心もち突き出すようにされた秘裂に内腿をなでていた手が進入してくる。
「やっ! やめっ!! っは。くっ……ふぅん」
 前と後ろから同時に幾本もの指が夏清のそこを蹂躙する。その上無防備な乳房まで吸われて、夏清が小さく震えながら、軽く達した。
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