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口は禍の元
ぷりっ……ぷりとかっ 余計なこと言うなぁ
しおりを挟む「で、どーれーにーすーるっ?」
ずいっと、差し出されたのは、例のアレが詰め込まれた箱。まじまじ見ると、色も全部、微妙に違う。
うっと仰け反ってから、有無を言わさぬ藤也のニヤリ顔を見て、箱の中身を見て。ううう。どれもこれもイヤだ。ってか、コレ使うのが決定事項なわけ?
居間のソファから、双子にがっちり抱えられて連れ込まれたのは、言わずもがな寝室。ベッドの上。無駄に丁重に扱われた。
箱を差し出す藤也と、他の箱を漁ってる柊也。柊也はすぐに目的のものを見つけ出して、それらを手に戻ってくる。
「見てるだけになるわけですから、せめて、このくらいは付けてください」
って、柊也が持ってきたのは、あれだ、さっき見ただけの、ネコグッズの。
長い手袋と、靴下と、太い方の首輪と、垂れた方のネコ耳。
「…………」
「つけてくれますよね?」
肺を圧迫する、息が詰まるような、笑顔。
顎が下にかくんって動いちゃったのは、このまま窒息しかねない圧力だったから。笑顔が。
ではまず首輪からと、俺の後ろに回り込んだ柊也がいなくなったスペースに、ずいっと箱が、アレが並んだ箱が近づいてきた。
とりあえず選んだのは、一番ちっさい、ナニの形したやつ。それが一番無害そうだったから。
俺だって、選ばなくていいのなら何もいらないけどッ きっと選ばなくても使われるのなら、一番、楽そうなのがいいじゃないかとか。
「ふーん。こんなちっさいのでいいの?」
「いいのっ!」
サイズ的には、長さが双子の親指くらいで、太さはもうちょっと、こっちのが太い……くらい。
「ん? どした?」
箱の中身をざっと見て、さっき使われたヤツがないなぁとか思ってたら、俺がイヤイヤ選んだソレを鼻歌歌いながら尻尾につけてた、藤也が俺を見る。
「……なんでもない」
「あー? ああ、パールのがないの、気になった? アレ? そっちのが良かった? マコ、すんごい気持ちよさそうだったもんなぁアレ」
「へ? きっ 気持ちよくなんてなってないし! 勝手に動くし! 気持ち悪かったし!!」
ふふーんって感じで笑う藤也に、ちょっとムキになって言い返す。
「アレだときっと気持ち良くなってしまうだろうと思ってあえて入れていないんですが、あれがいいですか?」
「よくないです。あれはもういや」
「わかった。忘れないうちにまたアレで遊ぼうな。いやほんと。あれ挿れてるマコめちゃくちゃエロかわいかったし。お尻ぷりぷり振っちゃってさー」
「えろ!? かっ かわいいの、とかっ ぷりっ……ぷりとかっ 余計なこと言うなぁ」
もうアレは使わなくていいし、いちいち表現がおかしいだろ。
「今選んだものが気に入らなければ、まだ色々ありますから、言ってくれれば変えてあげますよ?」
「変えて頂かなくて結構です!」
柊也の方はそんなこと言いながら、こちらもなんというか、嬉々として。そう、ホントに、心底、怖い笑顔で、俺に色々つけていく。
鳴らない鈴が付いた首輪、へたっと垂れた耳、やたらと伸縮性のある、肘の上までの長い手袋、太腿の中ほどまである長い靴下。
「素直ですね」
促されるまま手足出してる俺に、にっこり笑いかけてくる。
「……だって、抵抗しても絶対、付けられるし」
無駄な抵抗して、無駄な体力を使わないと決めたんだ。体力ないよりあったほうが、長持ちすると思う。多分。理性が。
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