幸せのありか

神室さち

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セカイデ イチバン

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 そんな軽口を叩きながらコード類をまとめて入れてきた紙袋に本体やソフトを入れる。理右湖の号令一下、一瞬前まで不服そうだった桜もその動きは俊敏だ。なぜならば、理右湖は言ったことは実行する。速人には若干甘いが、娘には大変厳しい。


「元帥閣下、桜伍長、帰投準備終わりましたでございますっ」

「椿上等兵、同じでありマス!」


 二人が理右湖へたたっと駆け寄り、敬礼して報告している。



「ちょ、待て。俺の酒まだ残ってるっ!」

「置いて帰りなさいよ、その位」

「だめだ! だって流しに捨てられるんだぞ。アルコールの廃棄は立派に水質汚染だ!」


 舐めるように少しずつ飲むべき酒なので、ハイそうですかと一息に煽れる訳が無い。グラスには半分には満たないが三分の一くらいの量が残っている。

「あー 無計画にいっぱい注いじゃったね。こないだ慌てて消毒用アルコールぶちまけて正座させられてた時お母さんに言われてたセリフだし。速人二等兵、また降格かも」

「だねぇ 二等兵の下って何かな? 衛生兵は階級外?」

「足軽とかは?」

「アリだと思う」


 キヒヒヒヒと笑いながら、母親に言われる前に机の上のグラスなどを持ってキッチンへ向かう二人にやかましいわと言い捨てて、名残惜しそうにグラスを掲げて酒を回している。夕食の洗い物は酒を呑む前に女性陣で済ませているので、これから洗うべきものは、各自が飲み物を飲んだグラスと、野菜スティックをなどを入れていた皿位の物なので、空の皿を運んで洗えば終わりである。


「あ、いいよ。その位、置いておいてくれたら……」

「この位だから洗うのデス!」

 空いた皿を運んでいくと、桜と椿が並んで洗いとすすぎを分担している。


「置いて帰ったりしたら降格でアリマス!」

 暗に上官命令だと言いながらも楽しそうにあっという間に洗い終え、布巾でキュッキュと水気を拭いている。



「でもこのグラス、かわいいよね」


「そうよね。でもどうしてこんなコロコロしてるんだろ」


「なんかね、昔、プロペラ機の中で揺れても飲み物がこぼれないようにって作られたものを北欧のデザイナーがリプロダクトした物、なんだって。箱に入ってた紙に書いてあった」


 一緒にグラスを拭きながら説明文そのまま伝えると、椿がりぷろだくとってナニ? と聞いてくるが、桜も樹理も答えられない。


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