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学園☆天国
14 side樹理
しおりを挟む「そうなの。午前中宣伝して回ったのがよかったのか、すっごいお客さんでね。あーあ。ミスコン出場者が制服以外着用禁止じゃなかったら、お姉さまにもぜひ着てほしい衣装があったのに!」
一時期、俗に言うバブルって時代に立候補者の衣装がどんどん派手になってしまって、その反省から立候補者は制服以外禁止されたの。ありがたいことに。
「あら! これはこの春まで遠芸座が上映していた『ロンド』の衣装ではなくて? こっちは『月の影』のミランシャの衣装!! まあステキ! 『アンゲスト』のシャルロットが最後に着ていたドレスもあるわ!!」
他のお客さんなんてさっさと押しのけ、ユリさんが人であふれかえる視聴覚室に入って、中から黄色い声で叫んでいる。彼女が本能のまま動いたことに気づいた柾虎君と琉伊さんが慌てて走っていく。
「すご、詳しいね、あの人」
「……リナちゃん、そんなすごい衣装、集めたの?」
「このはちゃんの知り合いの衣装屋さんに頼んだら一山いくらで貸してくれたよ?」
ユリさんの悲鳴に近い歓声によると、公演をCMで告知するくらい超有名劇団の、超有名公演で使われた衣装があるらしい。そんなものを高校の文化祭如きに貸し出しちゃっていいのかしら?
「まぁ あのお姉さんみたいにマニアな人はそういなくて、ほとんどみんなウエディングドレスが着たいみたいだけど。えーっと、こちらは?」
翠ちゃんに促されて、慌てて井名里さんたちに二人を紹介する。
「あああああー! とーるちゃんの後輩っ!! 千円宿(やど)のっ!!」
続けて夏清ちゃんたちを紹介すると、ずっとなんだか考え込むような顔をしていたリナちゃんが、井名里さんを見て叫ぶ。
「……ああ、アレの娘……似てるな。そうか、もう高校生か」
びっくり眼のままのリナちゃんと怪訝そうな顔の夏清ちゃんを交互に見て、井名里さんがなんともいえない顔で笑う。
「なに? リナ、知ってる人?」
珍しく本気であうあうしてるリナちゃんに、翠ちゃんが小首を傾げている。そう言えば前、チラッと言ってたような気がするなぁ 氷川さんのお友達のこと。
「知り合いって言うか、ちっちゃいころそっちの人およびその他二名、よくウチに来てたの。ここで会ったが百年目っ! 教えなさいよ、あの答えっ!!」
「どの答え?」
「三人の旅人が千円払って百円がナントカってやつっ」
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