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第一章 幸せのありか
54 side篠田
しおりを挟む目地の整った青い畳の上を、L2版の写真を吐き出しながら篠田の膝もとへ、茶色の封筒が滑りこむ。
広い和室で篠田と向き合うのは、氷川本社社長、氷川越(ひかわえつ)だ。
深い、人に命令をすることに慣れたその声で、知っていたのかと問われれば、篠田は頭を垂れるしかない。
知っていたといえば知っていた。けれど、あの少女のことはなにも知らない。哉がなぜか再建グループに残した企業の血縁者だろうとは察していたが、本人からそれを聞いたわけではない。
どうして残したのかも。
写真の中に写っているのは、哉と樹理。そしてどこかの興信所を使って調べた物をそっくりコピーしたと思われる、書類の束、アルファベットで綴られた口座名と、数字の並んだ口座番号が書かれた、白い紙。
なにも言わずにただ頭を下げている篠田を一瞥したのち、越がその封筒の上にカードキーを投げた。
どうするべきなのかは、分かるだろうとそれだけでなにも言わず、立ちあがる気配に篠田が一層身を低くした。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
要所要所ででてくる篠田さん視点。しかし短い。
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