夢の中の君は、今。

蒼之海

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第28話 199X年 9月 2/3

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 目を擦る絵未を連れて、家に帰る。部屋に入るとパタンと絵未が布団に倒れ込んだ。

「ほら、服、脱がないと。シワになっちゃうよ」

「んー武志くん。着替えさせてー」

 甘ったるい声で絵未が手を伸ばす。その手に沿って上着を脱がせ、いつも着ている俺のTシャツを、頭から被せてあげる。

「んー、武志くんの匂いー」

 今度はスカートのベルトを外し脱がせると、上着と一緒にハンガーにかける。

 うっすらと目を開けながら満足そうに微笑む絵未を見て、俺も穏やかな笑みで受け応えた。

 俺が布団に入ると、絵未はいつもの様に抱きついてくる。

「……そんな抱きついてくると、襲っちゃうよ」

「……んー、眠いのー」

「そっか。じゃあもう寝ようか。明日は夕方からナイト営業の遊園地に行くからね。早く寝た方がいいかもね」

「……んー、それも寂しいー」

「ちょっと!? ホントは完全に起きてるんじゃないの?」

「んー、ちょっと目が覚めてきたー」

 絵未のアーモンドアイが、段々と大きくなってくる。ちっちゃな動物の様だなぁと思ったら、自然に顔が綻んだ。それを見ていた絵未が、小さな声で囁いた。

「ね、武志くん。……しよ?」




 昼の2時頃に二人してもそもそと起き出すと、いつもの様に朝食兼昼食を用意する。親がいない事を確認して、絵未が浴室を使用する。もし家族が急に帰ってきた時の対応の為、俺は浴室の前で見張り番だ。頭を拭きながら絵未が浴室から出てくると、次は俺の番だ。

 シャワーで簡単に体を洗い流すと、トランクス一枚の姿のまま、部屋へと戻る。絵未はドライヤーで頭をセットアップしていた。


「もうだいぶ見慣れたとは言うものの……相変わらず、締まった良い体をしてますねぇ」

「……んん? 欲情しちゃたの?」


 絵未はドライヤーを当てながら、ベーと舌を出す。


「今日は遊園地でしょ! 私との約束はどこ行った!?」

「だって一回だけじゃ寂しいじゃん」

「それ……本気で言ってる? やっぱ武志くんは特別なんだ」


 髪を整え終わった絵未は、ドライヤーを俺に渡す。髪を乾かしながら、話の続きを促した。


「何? 特別って?」

「前にさ、短大のクラス会に行ったでしょ? 女子同士だって、やっぱりそういう話をするじゃない? 彼氏の話とかさ。……武志くんの話したらみんな驚いてたよ。『そんなにするの?』って」

「いい事じゃない。仲いいって証拠だよ」

「んーそうなのかな? そう取っていいのかな。……なんか丸め込まれた様な……」


 身支度を整えた俺は、上着を羽織り、ズボンを履く。


「さ、行こう。今日は約束通り、遊園地に連れて行ってあげるよ。今日も泊まれる様に、明日も休みを取ってくれたんでしょ? だからそれはまた夜、たくさんね」

「うん。……でも夜は、あまり張り切らなくていいからね……ほどほどでお願いします!」

 俺たちは手を取り合って、部屋を出た。
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