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第5話 199X年 11月
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11月から2号店に出向となった俺のシフトは、夜8時から朝の5時までの遅番だった。
さすが大型店舗の2号店。忙しさは本店の比ではない。
仕事にもようやくなれ始めて二週間。今度は中番へとシフトチェンジをさせられた。
……これ、支配人の完全な嫌がらせだろう!
通常中番は昼の3時から夜の9時までのシフトだけど、契約社員の俺は9時間きっちり働かなければいけない。なので俺の中番は昼の1時から夜10時までの変則シフトだ。
そこで初めて早番勤務の、島埼絵未を見ることができた。
……確かに2号店NO.1の名は、伊達じゃなかった。
ストレートの黒髪と、支えてあげたくなる様な華奢な体。胸はやや控えめだけど、腰にはしっかりと丸みがあり、女性らしさは損なわれていない。
そしてその顔を見て、俺の胸は騒ついた。
少し釣り目だけど、きつい印象のないアーモンド型の眼と、細くてすっと伸びた鼻筋。シャープな顎と薄くもなく厚くもない、柔らかそうな唇。
遠くから見たら、中世で売られている人形の様な整った顔立ちだ。女性に見惚れたのは、正直初めてだった。
だが時間帯が同じとは言え、相手は受付業務。俺は酒やドリンクを作るカウンターと厨房を行ったりきたりする、どちらかといえば料理担当。ほとんど接点がない。
そんな絵未と初めて話したのは、俺が中番になってから三日後の、厨房での出来事だった。
「あの、お邪魔かな……」
オーダーの焼きそばを作っていた俺は、声の方へと振り向いた。絵未がすぐ目の前に立っていた。
こんなに近くで顔を合わすのは、お互い初めてだ。
互いの視線が絡み合った。絵未は瞳を大きく見開き、その動きを止める。周りの空気や時間の流れまでもが一瞬、止まった様に感じた。
「い、いいや。大丈夫だよ……どうしたの?」
「い、いつもはね。仕事が終わって食べるまかないを、事前に頼んでいるんだけど、今日忙しくて賄いを頼むのが遅れちゃってね。これから自分で作ろうと思うんだけど……」
早番のバイトの定時は18時。いつもならこの時間に合わせて早番の厨房担当にまかない料理を頼んでおいて、18時になったら空いている部屋で早番のバイト同士で賄いを食べて、帰路につく。
「何が食べたいの? 俺が作ってあげるよ」
「……本当? ありがとう! 私じゃうまく作れないから……ありがとう、阿藤さん」
「じゃ、ピラフに唐揚げを添えるメニューでどうかな?」
俺の特別メニューの提案に、絵未は嬉しそうに頷いた。
さすが大型店舗の2号店。忙しさは本店の比ではない。
仕事にもようやくなれ始めて二週間。今度は中番へとシフトチェンジをさせられた。
……これ、支配人の完全な嫌がらせだろう!
通常中番は昼の3時から夜の9時までのシフトだけど、契約社員の俺は9時間きっちり働かなければいけない。なので俺の中番は昼の1時から夜10時までの変則シフトだ。
そこで初めて早番勤務の、島埼絵未を見ることができた。
……確かに2号店NO.1の名は、伊達じゃなかった。
ストレートの黒髪と、支えてあげたくなる様な華奢な体。胸はやや控えめだけど、腰にはしっかりと丸みがあり、女性らしさは損なわれていない。
そしてその顔を見て、俺の胸は騒ついた。
少し釣り目だけど、きつい印象のないアーモンド型の眼と、細くてすっと伸びた鼻筋。シャープな顎と薄くもなく厚くもない、柔らかそうな唇。
遠くから見たら、中世で売られている人形の様な整った顔立ちだ。女性に見惚れたのは、正直初めてだった。
だが時間帯が同じとは言え、相手は受付業務。俺は酒やドリンクを作るカウンターと厨房を行ったりきたりする、どちらかといえば料理担当。ほとんど接点がない。
そんな絵未と初めて話したのは、俺が中番になってから三日後の、厨房での出来事だった。
「あの、お邪魔かな……」
オーダーの焼きそばを作っていた俺は、声の方へと振り向いた。絵未がすぐ目の前に立っていた。
こんなに近くで顔を合わすのは、お互い初めてだ。
互いの視線が絡み合った。絵未は瞳を大きく見開き、その動きを止める。周りの空気や時間の流れまでもが一瞬、止まった様に感じた。
「い、いいや。大丈夫だよ……どうしたの?」
「い、いつもはね。仕事が終わって食べるまかないを、事前に頼んでいるんだけど、今日忙しくて賄いを頼むのが遅れちゃってね。これから自分で作ろうと思うんだけど……」
早番のバイトの定時は18時。いつもならこの時間に合わせて早番の厨房担当にまかない料理を頼んでおいて、18時になったら空いている部屋で早番のバイト同士で賄いを食べて、帰路につく。
「何が食べたいの? 俺が作ってあげるよ」
「……本当? ありがとう! 私じゃうまく作れないから……ありがとう、阿藤さん」
「じゃ、ピラフに唐揚げを添えるメニューでどうかな?」
俺の特別メニューの提案に、絵未は嬉しそうに頷いた。
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