夢の中の君は、今。

蒼之海

文字の大きさ
上 下
3 / 31

第3話 199X年 9月

しおりを挟む
 カラオケ店でのバイトも二年半が過ぎた頃、俺は社長に呼び出された。


「阿藤くん、契約社員として働かないかね?」


 カラオケ店は、はっきり言って利益率がいい。

 一室の室料は1時間3,000円。客を部屋に案内すれば何もしないでも、それだけの利益が得られる。さらに大体のお客は、お酒やつまみを注文する。

 平日は5万程度の売り上げも、金曜土曜ともなると、40万近い売り上げを叩き出す。駅からのアクセスもよくない部屋数10室ほどのカラオケ店でも、週末は二時間待ちなんて当たり前。まさに大盛況だったのだ。

 加えて母体となる会社は、カラオケ機材のリースを生業としている。その本社のワンフロアをカラオケ店に改装しただけの店舗だった。賃料はかからない。経営者としては、笑いが止まらないほど儲かっていたのだと思う。


 そして俺が契約社員として雇われたのにも、次の戦略があったからだと、少しして知る事になる。





「店長、聞きました? 駅前に2号店がオープンするって話」

「バーカ。俺は店長だぞ。お前が知ってる話、俺が知らないわけないだろう」

 店長の嵐山は俺にそう言った。

「改装中の店内を見てきたけどな、すっげえ広さだぞ。40室は作れそうだ」

 正社員であり店長の嵐山は、既に社長と工事中の2号店を見てきた様だ。

「まあ、俺たちには関係ありませんね」

「いや……それがそうでもないんだ。2号店オープンにあたり、社長はどっかの飲食店から社員をヘッドハンティングしてきたそうだ」

「それが、本店ウチと、なんの関係があるんですか?」

 俺はいまいち話の全貌が理解できず、頭を捻る。

「……そのヘッドハンティングしてきた奴の中から一人、支配人として、俺らの上に立って仕切るらしい」

「え? 俺らの方が本店なのに? 嵐山店長がトップになるんじゃないんすか?」

「2号店は大型店だ。やっぱそれなりの経営知識が必要な人間が、必要なんだとよ。2号店は社員を四人と数十人のバイトで回すらしい。新しい体制作りが必要なんだって、社長から説明された」

 契約社員と言っても、今まではある程度好きにシフトを入れて、遊び回っていた俺は、堅苦しい枠組みに入れられた事を早くも後悔し始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

彼女の母は蜜の味

緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

処理中です...