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+イメージテキスト:アンブッシュ・月夜の畦道にて…(全2話)

アンブッシュ・月夜の畦道にて…(2/2)

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 ……同様の経過をしたらしい敵方であるが、しかし、それ故に、彼らなりの判断がされるものであった。



「車長、陸上の敵反応、まだこちらに前進してきます」

「後ろに下がろうにも爆裂と炸裂の地獄だろうからな……
 部隊各機、機体の電源と火器官制を立ち上げろ、
 すぐにでも攻撃できる用意をつくれ。」




 車長であり部隊長の男は、機体光学系の望遠をつかって、あぜ道の向こうの藪の奥に、神経を向けた。




……




…………




………………、






「みえた、……」


 同じ望遠視界のオーバーライドを見ていたのか、先にそのような言葉を漏らしたのは、果たしてドライバーの兵士の方であった。




「ム……」



 数は……影の大きさは、……歩兵級…………それから、ゴーレムの駆動音…………歩行の反応…………それが複数………………





 歩兵はまばらだ、……随伴歩兵だな……





「ば、バルカン……とやらの管制は、こちらがやればよいのでしょうか?」


「ドライバー、キサマは操縦にすべて集中しろ。……バルカンは適宜操作だ。基本、射撃周りは俺がやる…………」


 車長からのぞんざいな言葉である。

 しかし、永劫かのように時間の一分一秒が経過するそんな感覚のこの瞬間に、
 果たして自分は、いつまでシミター機の機体を伏せさせておけば良いのか……
 と、ドライバーの兵士は虚の中に居るかのように、そう思った。






「前方、距離1500、光線(レーザー)光!」



 不意に、相手の敵方たちが、行動を開始したのがそのときであった。



 暗夜の暗闇に、赤色のレーザー光が、点るように続く……

 放射されたそれが、左右へと何度も、目を泳がせるかのように走査される。



 これは、光魔法の一種で、目標や異物を発見する際に行われる、捜索手段のひとつであった。

 魔法としての難度はそこそこあり、それをこうも安定して、運用することができるのは……



「……索敵用のレーザー・サーチだな、…………とすると、相手には魔道士か、戦闘ゴーレムが存在する、」


「こ、この機体で倒せるのでしょうか……?」



「不安に思うか? このデカい獲物を持ってても、」


 そういって、車長はおどけたように機のマニュピレータの右腕を微動させた。


 その巨大な手に握られているのは、これまた巨大な、ライフル……正確には、九十ミル・コッカリル砲と通称される、シミター用の大型携行火器の、その姿であった。


「自分は……まだ、撃ったところも見たことがありません、」


〈自分もです、〉


〈私も……〉〈じ、自分もであります!〉


「…………」



 車長であり指揮官である男は呻いた。

 そういえば、今日のこの面子どもは、全員後から来たペーペーどもなのだったなあ、と……



(お守りじゃねえんだがな……)



 うめき声が出ていたかは男以外の通信の相手に聞こえたか聞こえなかったかだろうが、そのようなうめきの内容は、男は歯と舌の根を食いしばることで、それを防いだ……



……



 その男の動揺はともかく、
 その推定・ゴーレム戦力相当からであろう
 光線の瞬きは、なおも続いた。





「ゴーレム・デザントだよ、
 おおきいのが、すぐに来る!」



 大声を出したわけではないつもりだったが、口が荒れがったのは、果たして腹積もりの外であったろうか。


……



 そうもしない内に、闇夜の向こうから、“敵”が這い出てきた。



…………



 シミターたちも、機体の腕部を微動させて、それらへの射撃の即応と、照準の準備を執ったのはそのときであった。



「交戦開始線に達した敵から、優先して射撃する……」

〈は、はい、……〉


「距離1300、――今!」


 ドォウンッム!

――一体目の装甲ゴーレムの機体を、繰り出されたコッカリル砲の弾丸が、一撃で真っ二つにかち割った。



〈い、一体め、〉


「二体めがきたぞ、次、今!」



 ドゥンム! ――二発目のコッカリルの弾体が、
 ガルバーニの機体の胴をめちゃくちゃに打塑し陥没させ、撃破。



〈二体め!〉


「三体目がじきにくる! 次、もうすこし……今!」


 ドオォッム!
 そして三発目の弾丸……
 敵機の機体は、みたび、撃破された。




「歩兵がたじろいでるぞ! バルカン、射撃開始!」



〈了解…………!!!!〉




 四機の機体から、バルカン砲の銃火が噴かされたのが、その瞬間であった。



 放射された四門のバルカンの火線が、ゴーレムが撃破されたことで硬直した敵の歩兵たちに、塗りつぶすように銃撃されていく……








 こうして始まったこの夜からの戦闘で、
 正式編成された中ではこの第一個めのシミター小隊は、
 敵侵攻部隊のその大半を、このレムリアの村近郊での戦いで、損壊せしめることに成功していた。







 一連の戦いが終わったころには、
 夜は更け、明朝の朝日が、
 山間の稜線の群青から、シミターたちへと、降りそそいでいた……



 朝焼けの空の下、カラスが啼いていた。




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