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第三章:異世界っ娘がやってくる(全6話)
異世界っ娘がやってくる(6/6)
しおりを挟む「まったくかあちゃんがよー、かってに勝手口の鍵開けちまってたっつーかよー、」
「えぇ、ええ……」
ぐびぐび、と俺は手元のグラスで冷水を呷り、
「鍵、締めておいた筈なのに、かあちゃんは開けてない! って言い張るしよー、なんなんだろうかなー」
「えぅ、えう……」
「なぁ、ルー、」
「えぅ……」
目の前で、こいつはしょげている。
めにみえて、しょげている。
なんだか威圧しているような気分になってくるが、実際問題そのとおりであるわけだし、
俺……道寺橋、裕太……は心を鬼にして、
「……なれなれしく名前よんですまんな、
改めまして、ルーテフィアさんでしたっけ?」
「そ、そんな?!
他人行儀にならなくてもいいじゃないか! ボクとゆうちゃんさんの、せっかくの仲なのに、
ボクのはじめてのおともだちなのに!!」
どうも、のどごしが悪い。
もっかい冷水を呷って、……
「たびしょうにん、って言うのももうヤメテ……
おれはしがない無職のニートのひきこもりで、
ここは、あの勝手口がつながっている、只の普通の一軒家。
俺は、この家に生まれたときから住んでいて、
そして、この国は現代の日本!」
めのまえのこの子は、なにをいっているのかわからない、
というような瞳で、俺に相対している。
……、、、
「わーかった?」
「ダンジョン気分で荒しにこられちゃ、こまるのよ、
一応生活住居なんだからさぁ。
あらされたらまずいのよ、おわかり?」
「へ、へぅ……」
「お返事がたしかでない。」
「え、ぇぅ~?!」
ここまで4連発で、この子へきつく、物あたりをした。
はたして目の前のこの子はきょとんとした顔を続けているけども……
それでもこらえているのを続けて、(反省しているのか??)、なにもかんがえていなさげな、無垢な笑顔を浮かべて、俺に尋ねた……
精一杯の、ひたむきな笑顔を浮かべて、
「…………なまえ、おなまえおしえてくださいっ!」
ん?
「あ、あなたは、ゆうちゃんさんはボクの名前、おぼえてますよね?
ね、ね?
そ、そうしたら、ボクも、ゆうちゃんさんの、おなまえ、知りたいなぁ、って……
そしたら、ボクたち、もっと仲良くなれるよね?……」
「おれとあなたの間に、どういう関係があっての、
それをそうする前提なので?」
「……えっ?」
このとき、どうやら、俺はこの目前のおこさまを虐めすぎてしまっていたらしい。
「う、ぅぇっ、ぇぅっ、…」
ルーは目に涙をうるうると貯めると、目の端から見る内もなくこぼれだして、
みるみる内に、その領は増えていき……
「あ、あぁぁぁぁあああ~~~あぁん!!!」
と、泣き出してしまった。
「お゛と゛も゛た゛ち゛になったのに、おと゛も゛だちになったつもりだったのに、
つもりでおわってただなんて、
たしかに、そうでしたぁ゛!! そうだったんですよぅ゛!!!
なまえもしらない、ボクはあなたのなまえもしらないっぃぃぃなんてえええぇ……~!!!」
目の前のこの子……ルーは、大泣きになきはじめた。
「ともだちしっかくだよぉっ、ともだちになったつもりだったのに、
なれたつもりだったのに~~~~!!!
うぇんぅぇんぅえん、ひっぐ、うえぇぇぇぇん!!!!」
話し始める最初にその手に持たせた冷水入りコップに、
頬を垂れた涙の粒が、はらはら、ぽたぽた、と垂れ落ちていく。
…………、、、
「あーあぁ、おにいちゃんがなーかせた、」
「バカいも、いつのまにそこにいたのか……こういうときだけ、おにいちゃん呼ばわりして」
「かーわいそ、かーわうそ、
ま、くそあにきには、おにあいだよね!」
きゃっきゃっ、と笑いながら、
部屋の扉をあけて出現していた我が愚妹は、そう言って階下へと降りていった……
「……、」
“ともだち、に、なる”……か、
「……、」
あれは、間違いだったのか……
いや、そうと片付けるのも、なんというか、性分に悪い。
「ゆうた。」
「はひ、?」
「ゆうただよ、それが、俺の、なまえ!」
昼下がりは真っ盛りのころのこと。
おれはそうルーテフィアに言いつけた。
「あ、ありがとう、ございま! ずずぅぅっ、」
盛大に鼻をすすったルーテフィアに、なんまいかのティッシュをひったくってやり、渡す。
「ずずっ、ずっ……」
あー、なんだろうね、俺ちゃん、どうしようもないやつ。
* * * * *
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