ノーマルニートな俺、家の勝手口の向こうの異世界で、欠食児童な勇者の孫のへなちょこ性別不明娘の相棒になりました

もにもに

文字の大きさ
上 下
58 / 79
第三章:異世界っ娘がやってくる(全6話)

異世界っ娘がやってくる(5/6)

しおりを挟む
     * * * * *




「あ、あ、あの……」「え、えぇっと…………――」



 互いにどもり合うばかりで、
 しばし数拍の間が空いたのち、



「え、えっふん、えぇっふんふ、ごほん、コッホン……――えふんっ、」


 先制を取るべく、
 先に体制をたてなおしたのはルーテフィアの方で、



「や……やぁやぁ、これは。きれいでかわいいオジョウサン、あなたはこのおうちの住人ですかな?」



 えっへん、と平たいようにしている胸を張りながら、
 ルーテフィアは内心、


(キマった……! このボク、おじいさまの孫であるこのルーテフィア・ダルク・アヴトリッヒによる、カンペキなごあいさつ……!
 おじいさまの社交界での気さくさを受け継いだこのごあいさつで、 
 並の淑女ならもうイチコロに親しくなれて……って、タチアナはどういうつもりでボクにこうできるようにしてくれたのだろう?

 でもでも、どうしよう!? ボク、このおうちの引き出しとか目に付いたのからとにかく開けてばっかりで、気分良いから壺があったら割っちゃってたくらいだけど、でも見つからなかったしまだ割ってないし、
 でもでも、あやまってゴメンナサイって、ちゃんとごめんなさいすれば、ボクの家のメイドなら、げんこつ一回とほっぺたむにむに三分間の刑で済むのだけれど……でもここのおうちでそれですむかはわからなくて
 だからだから、えぇーっと……――

 お、おこられたくないよぅ!?)



 というところまで一気に思考が逆回転だかした後に、
 しかし我に返ってふと視線を見上げたとき、




「だ、だれですか……っ?!」




 そこに居たのは……自分よりもすこし年齢が下くらいの、
 なんとなく髪の色とかで関連性がありそうだが、
 それでも愛らしく整った顔の造作といい、つやつやで清潔そうで綺麗そうな頭髪といい、ばっちくなさそうな全体の格好と言い健康的なプロポーションといい、
 とてもではないが、あのゆうちゃんさんとは何の関係もありそうでなさそうな、でもありそうな

 そんな美少女である。




(みためはにてないけど、なんとなくの雰囲気は、まあにているようなきがする……?)



 想像が及ぶに至り、
 そこでルーははっ、となって、



(そんな!? ゆ、ゆうちゃんさんの、奥方であったり、むすめさんだったりして?!)




 ずぎゃーん!! と、悪い予想がルーの脳裏にほとばしったのが今この時である……


 のはさておき、




「え、えぇっとぉう、ぉ、オジョウサン、」



 それが気になってそれがきになって、
 今気になるそれをたしかめようかどうしようか、との呻吟の末、

 ルーはたじろぎながら二の句を告げようとした。
 心の準備はできた。文面の用意も完了した。
 さあ、今だ!




「オジョウサン、は、このおうちの……「ちょっと、おかーさん! こどものフシンシャがいる!」……へぅっ?!」




 しかし爆発したかのように眼をぐるぐるさせながら、猛然とした勢いで駆けだして、二方通行の廊下でルーと反対側の方向へ向かったその少女に、
 ルーはおのれの二の句をつたえることさえできなかった。




「ぇ、えぅ……」



 自分のあいさつは変だったのか? と自問自答するルーテフィア。
 されど、落ち込んでいる暇はそうそうなかったのである。





「まぁ!? だれこの子!!……あの時の?!」



「あ、ぅ、え、えぇと……」「おかあさん!こっち!!」



 そして……玄関口から、井戸端会議を中断してやってきた、ゆうちゃんさんのお母さん。





「どちらからきたのかしら? あのときもおもったけど、見たところ、外人さんよね……?」




「えぅ、え、えぇと~~~~~~~!!!??」




 たすけて、たびしょうにんさん!

 ルーは心の内で唱えた……召喚の呪文のごとく。




 するとすると、




「ちょっと くそあにきー!」



…………



「くそあにきー! こういうときくらいたすけろー!」



…………なんだよ、バカいも!




「フシンシャ、ふしんしゃがあらわれた! リビングにー!」



………………はぁ?!



 そう少女が叫び終えると同時に……
 上階でなにやらどっかんばっかんと物音とモノが崩落する音が連続したのち、
 どて、どて、どて、……と、

 なにやら重量感のある足音とあまりテンポのよくない足運びで降りてくる、人物の気配……



「まったく、なんだよ、今ゼッコウチョーで入り用なんだってのに……、……って、」



(あっ……)



 現れた。
 ゆうちゃんさんだ!!




「あっ、たびしょうにんさん!」

「おまえっ?! なんでここにいるのッ」



 腕を振り回してよろこびはしゃぐルーテフィアに、なんだかばっちい格好の使い古した室内着を着た、道寺橋 裕太 ……は、

 傍らの、妹……道寺橋 舞依 ……に、眼の向かう先を変えて、



「うわっ、ちょっとアニキくさいッ! ニンシン? させる気か!!」

「模型用シンナーの揮発臭で孕めるもんなら妊娠してみやがれ、よ。
 まったく、この愚妹(ぐまい)の舞依(まい)ちゃん、が……「コノヤロ!」ぐぇっ!」



「え、えぇっと……」


 偉そうに構えた瞬間、秒としないうちに蹴手繰りにより撃破され沈黙したゆうたの姿をみて、ルーテフィアはなんだか、面食らった。



「ちょっとゆうちゃん、この子はなんなの?!」
「えぇと、母ちゃん、俺もしらないよ……」




「あっ! 水がでっぱなしじゃん!……タンスが全部あけられてる!! ちょっとくそあにきー!」


「しらないってどういうことなの!? ちょっと、ゆうちゃん!!
 おとうさんが帰ってきたら、家族みんなで家族会議するわよ!!」

「勘弁してくれよかあちゃん……」

「ちょっとー! くそあにき、く・そ・あ・に・き!!!!
 はやくなんとかしろー!!!!!」

「あぁあっもうっせえなぁバカいも! ええとな、かあちゃん、これはその、あれがこれで……」

「説明なんてするよりも! まあ、水が出しっぱなしになってるじゃない!!!! ちょっと、ゆうちゃん!!!!」

「あ゛ぁ~~~~~、もう!!!!!!!」



 ヒステリックな二重波状音波攻撃に、先にギブアップしたのはゆうたのほうだった。



「ちょーっちストップストップ!」


「前に外散歩したときに知り合ったおうちのお孫さんなんだよって!」


「俺が帰すから!!」



 そうまとめて、妹と母親からの二重の追求を、なんとかいったん打ち切った。


「はぁ………………、、、、、、、」


 ゆうたは、煙草があれば胸元から取り出して口にくわえんか、というような仕草のみで最大級の哀愁を吐息として吐きながら、



「で、なんだけどぉ、」



 そういって、渋い眼でルーテフィアの姿を見る……



「ちょっとちょっと待ってよギブミー、
 なぁんでキミぃ、がここにいる?」


「あのとびらから、」


 ルーが指を指す。

 指された先の向こうの勝手口は、半分開きかけになっていた。



「えぇっとねぇ……キミねぇ……」



「?」





 ゆうたは惑うしかなかった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜

八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」 「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」 「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」 「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」 「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」 「だって、貴方を愛しているのですから」  四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。  華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。  一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。  彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。  しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。  だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。 「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」 「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」  一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。  彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。

処理中です...