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第二章:500円のファンタジー(全16話)
500円のファンタジー(14/16)
しおりを挟むドアを開けた。
「あら、ゆうちゃん! お父さんがお夜食食べたいっていうから、」
なんともないような風呂上がりルックにエプロンで固めた俺のかーちゃんが、料理をしている最中であったのに、ずっこけそうになった、俺。
てかよ、もうすこしいろいろ疑問におもえよ、母よ、
………、
はぁぁ、
豚肉の生姜焼き
鮪の生姜醤油焼き
挽き肉と厚揚げと白菜のホイコーロー風味汁炒め
皿に盛りつけられていたそれをストックのタッパーに落した後、強奪する。
「~♪」
母親はウキウキ気分で調理中だったので、俺の行動には気づいていない…のかどうなのか、
フォークを何個かもっていく……予備のつまようじ束のほうがいいか。
とにかくも、一連の行動を手早く済ませた後、
俺はまた扉を潜って、異世界側へと向かった。
ほらよ、
「…! ほぁぁ…」
あっけにとられているルーをよそに、爺に、タッパーの一つをくれてやる。
柵切りマグロの照り焼きだ。
俺の好物である…。
「………」
「孫の料金には入ってねぇ、つまりサービス分だ。……食いな」
「……、」
「後から代わりの身代を払ってくれても構わないんだぜぇ?」
「! ……──」
ジジイは、意を決して、食べた。
「………」
「……」
「…」
「余計にはらがすく味だのう」
ジジイが、ぽつり、と言った。
「なにが起こってるのかい! 孫を見つけてくると言ったきり……」
「ふぁぁ……なにがおきてるの、お父さん!?」
「む、」「おばあさま、おばさま!」
そうしている内に、向こうの方はバアサンとオバサンが加わって……、
「…我が細君と娘だ、」「ほぉ、」
ちょうど、捜索を終えたメイドたちもそろって、一同に会した時、
そこに漂うは生姜醤油のおいしい匂い。
ぐぅぅぅぅぅ―――……と、バアサンも、オバサンも、それからルーも、メイドたちも、腹が鳴った。
壮絶な音だった。
大輪唱だった。
………あぁあぁあああああああああああああああああ、もぉぉぉぉぉおぉぉおぉおおぉ!!!!!!!!!!!!!!
時刻は朝の3:45。
「貴族っ娘! ついてこい!」
「えっっ、あのっ」
がっし、と手をつかむと、
「お、おじゃましますっ」
「あらっ!? え、なにっ」
俺はルーを伴って……日本の、こっちの方で買い物を開始する。
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