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第二章:500円のファンタジー(全16話)

500円のファンタジー(12/16)

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 まあ教えてやろうか……



「これ、イチマイで」



 そういえばサイフがあった。
 腰ポケットから取り出したそれから、さらに目当ての硬貨をとりだして……


「ニヤリ、」「!」「!?」


 キラリ、っと輝くニッケル硬貨の輝きを、
 一枚分、指に取って、みせつけた。



「な、なんだこの……貨幣(コイン)はッ」「す、すっごい!」



 そう言われた手の指の中の五百円玉ちゃんは、ゼロの数字の中のホログラムをうれしげに輝かせていた……

 ただの五百円玉でこの驚きようなのである。
 個人的には紙幣の質感のグレードも相当であると思うのだが…はさておいて、



「ところでね、このオベントウ、あなたはんのお孫さんはね、もう今日までに二膳も、お食べになられているのですよ。どうしてくれましょうかね~、“ ? ”」


「! そ、そんな……」「あぅ!? う、えっと、……」


 主張するべきは主張しないとな、という判断である。そうすると俺は悪徳商人の端くれになるのだろうが…

 爺も孫も、
 とたんに慌てだして、



「い、いったい幾らするのだ……支払いはっ、ルーや、だから買い食いは危険だと、あれほど!」

「や、やっぱり、お金、しちゃうんですか! はぅ……ぱたん、きゅー」


 
 いいように反応を返してくれる、爺と貴族っ娘である。
 しかし、



「あ、…で、でも…あ、あのっ、」
 

 食い下がってきた。
 そうとうにドキマギした表情で、顔に熱と汗をかきながら、
 そんな感じで意外な反応を返したのが、貴族っ娘の方である。
 どうしたのだろうか……


「ねぇ、さっき、このオベントウ、ボクにくれた……のだよ、ね?」


 まああげたつもりで今日のは買ったつもりだがな、

 だが、手元の弁当をつかむ重量は軽い。

 いまさらこのくいさし穴だらけの弁当に、お役目がつとまるか……というと、
 と俺が言う前に、



「えっとね、えっと、ね、まって、まってて、ね!」



 貴族っ娘は、がさごそ、と全身のポケットをまさぐる……

 そして、



「! あった! ボクが、去年の誕生日にもらった、おこづかいの一枚!」



 ごまだれ~☆

……と、ルーはそれを両手に掲げた。



 が、



「………………中銀貨………………」



 中、と名前に付く割には、やや小ぶり気味の、その銀色のコイン……を、自信満々に、俺に見せてきた、この、貴族っ娘。



「え、えへへ、ずっと大切に、お守りにしててよかったっ……
 えっとね、これでね!」




………………




「………………、、、、。。。。」




…………………………、、、、、、、。。。。。




「だめなかんじ、ですか……?」



 このなけなしの一枚を、
 買い取りレートはいくらだろう? 等と鬼畜な事を考えてしまった、俺はなにもいえない…………



「………………。。。。、、、、」



 一方、
 うる、うるる、と大きな両目に涙を貯め始めた、この貴族っ娘。



「そしたら!」




 貴族っ娘は鼻水をすすり、




「も、もし、払えなかったら、………」



 そういうと、貴族っ娘…ルーテフィア…はごくり、と息を飲むと、



「ボクの、身体で、! しはらうことは、できますか!! と、扉の向こうの、っ、……」


「! ルーや!、孫よ、そのような事は軽々しく言っては………──」



 ぶほ、っ、と唾を吹いたのがこの時の俺だった。


 身体で支払い??? 今時の悪魔でもそんなアナクロな事は言わないだろうよ……と思いつつ、



「あ、悪魔だとしても、ぼ、ボクの魂で、は、払えるなら……生涯の一生を、売り払っても、かまわないから、ららららら……」



 なんかやっかいな誤解が起こりつつあった。



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