上 下
13 / 33

13 ※ロイス視点

しおりを挟む

「ふっふふ~ん!」

王族ご用足しの馬車を走らせるのは赤髪の青年、ロイスだった。
気分良く鼻歌を口ずさみながら真っ直ぐ王城へ向かっている。

本日もケイが働く店に出向き、ご飯を持ち帰る為、鍋を三つ馬車に乗せていた。
無料で快く料理を渡されたので出費も無く上機嫌になる。

「それにしても……」

ロイスは独り言を呟く。
それはケイの前に座っていた冒険者を思い浮かべていた。

彼はSランクの冒険者。実力があり、それだけでも有名になるのは納得だが、何分性格の方がハスターを有名にさせている。

Sランク冒険者は人格者が多く、新人冒険者の鏡にならなければいけない存在だった。
しかし、ハスターは自分勝手で傲慢。気に触る事があるとすぐに手を出すとして噂されていた。
もちろん王城でもそう聞いていた……

「やっぱ噂何かより、自分の目で見てみないと分からないもんっすね~」

ロイスから見たハスターは確かに口は悪そうであったが、そこまで気性が荒そうには見えなかった。
傲慢な性格であればそもそも護衛の依頼等受けないだろう。
本当に自分勝手ならケイを誘拐して自分の為だけに料理をさせればいいのだから。

ハスターであればあの店に居た人間を全員殺し誘拐する事等、造作も無い事だと思った。
だからこそ噂は噂でしか無いんだと今は思えている。

「まあそんな事より……!」

ロイスは後ろに乗せている鍋に目を向けた。
確か肉じゃがと味噌汁、白米という名の料理が入っている。

もしかしたらこの料理で殿下を心の底から笑顔に出来ると思ったら楽しみで仕方ないのだ。
そんなウキウキ気分で馬車を走らせ目的地に到着した。

そのまま顔パスで王城の門を潜り馬車を馬小屋まで走らせていく。
すると前から毎日顔を合わせている人物が声を掛けて来た。

「今日は買い出しの当番ではないだろう? 何処をほっつき歩いていたんだ?」

「仏頂面先輩こんちわっす! 今日は良い天気っすね!」

「誰か仏頂面だ! 私は殿下専属の執事として日頃から清く正しくこの顔だ!」

「冗談っすよ! クリス先輩?」

「たくっ……」と少し不機嫌な様子のクリス先輩。
黒縁のメガネをくいっと上げ、センターで分けた黒髪を掻き上げながら睨んでいた。

「そもそも質問に答えてないだろう? 馬車なんか出して何を買って来たんだ?」

「ふふふっ! 聞いて驚くなかれっすよ! な、ん、と、晩餐の料理を頂いて来ました!」

「料理?…… 王城には専属のシェフが居るじゃないか。 料理なぞ必要無いだろう?」

「これを食べれば笑顔になれる料理っすよ! 特別なんですって!」

その言葉を聞きクリス先輩は表情を引き締めて答えた。

「何?…… 笑い茸が入った毒料理か?」

「……何でそうなるんすか?」

ロイスの虚しい声が庭に響くのだった。

◇◇◇

ロイスは王城のとある豪華な扉の前に佇んでいる。

コンコンッ 
「入れ」と声が掛かったのでロイスはゆっくりどドアノブを回す。

「失礼します! お食事の準備が整いましたので食堂まで起こしください。」

「ああ…… もうそんな時間か。 慣れない書類作業をしてるとあっと言う間に時間が過ぎてしまうね」

そう返答したのがヴィリアム国家の王子、アレン様であった。

金髪碧眼の美しい顔立ち。
目、鼻、口のパーツがどれも完璧な配置をされている。
世界中、誰がどう見てもイケメンと言わざるを得ない男性が書斎に座っていた。

「大変お疲れ様です! シャーロット様も間もなく向かうとの事ですのでアレン様もどうかご一緒に願います」

「母上も来るなら急いで向かおうか。 それにしても何だいその口調は? 私と二人の時は別に畏まらなくて良いんだよ?」

「いや~流石に恐れ多いっすよ~ ……あっやべ!……」

アレン様は咎める事をせず、ふふっと笑みを出し食堂へ歩き始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

可愛い男の子が実はタチだった件について。

桜子あんこ
BL
イケメンで女にモテる男、裕也(ゆうや)と可愛くて男にモテる、凛(りん)が付き合い始め、裕也は自分が抱く側かと思っていた。 可愛いS攻め×快楽に弱い男前受け

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

異世界で新型ウイルスが流行したために、少年達に子作りしてもらうことになりました

あさきりゆうた
BL
 異世界転移者が新型ウイルスを持ち込んでしまい、異世界は大変なことになった!  女性の大半は死に絶え、成人男性は身体能力と生殖機能をなくし、そして少年だけがなぜかずっと子供の姿のままとなり、赤ちゃんを産める体となってしまった!?  そんな世界に腐女子の富場 詩代が転移することになり、少年達の子作りの活性のため、少年を探し当て、カップリングを成立させ、時には自作のショタの薄い本で性教育をして、子孫繁栄のために頑張っていく物語である! 22.02.03  元々似たような小説を投稿しましたが、設定が面白くなりそうで、性癖が個人的に刺さるという理由で大幅にリニュアールして投稿し直しました。とりあえず二話投稿。三話目でR18行く予定です。 22.02.06  新しいお話を投稿しました。  初めてショタ同士でエッチする回を書いたが、気がつけば性癖のチョモランマ盛り回となりました。

独占欲強い系の同居人

狼蝶
BL
ある美醜逆転の世界。 その世界での底辺男子=リョウは学校の帰り、道に倒れていた美形な男=翔人を家に運び介抱する。 同居生活を始めることになった二人には、お互い恋心を抱きながらも相手を独占したい気持ちがあった。彼らはそんな気持ちに駆られながら、それぞれの生活を送っていく。

転生したので異世界でショタコンライフを堪能します

のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。 けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。 どうやら俺は転生してしまったようだ。 元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!! ショタ最高!ショタは世界を救う!!! ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!

勇者よ、わしの尻より魔王を倒せ………「魔王なんかより陛下の尻だ!」

ミクリ21
BL
変態勇者に陛下は困ります。

魔王なんですか?とりあえずお外に出たいんですけど!

ミクリ21
BL
気がつけば、知らない部屋にいた。 生活に不便はない知らない部屋で、自称魔王に監禁されています。 魔王が主人公を監禁する理由………それは、魔王の一目惚れが原因だった!

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...