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13 ※ロイス視点
しおりを挟む「ふっふふ~ん!」
王族ご用足しの馬車を走らせるのは赤髪の青年、ロイスだった。
気分良く鼻歌を口ずさみながら真っ直ぐ王城へ向かっている。
本日もケイが働く店に出向き、ご飯を持ち帰る為、鍋を三つ馬車に乗せていた。
無料で快く料理を渡されたので出費も無く上機嫌になる。
「それにしても……」
ロイスは独り言を呟く。
それはケイの前に座っていた冒険者を思い浮かべていた。
彼はSランクの冒険者。実力があり、それだけでも有名になるのは納得だが、何分性格の方がハスターを有名にさせている。
Sランク冒険者は人格者が多く、新人冒険者の鏡にならなければいけない存在だった。
しかし、ハスターは自分勝手で傲慢。気に触る事があるとすぐに手を出すとして噂されていた。
もちろん王城でもそう聞いていた……
「やっぱ噂何かより、自分の目で見てみないと分からないもんっすね~」
ロイスから見たハスターは確かに口は悪そうであったが、そこまで気性が荒そうには見えなかった。
傲慢な性格であればそもそも護衛の依頼等受けないだろう。
本当に自分勝手ならケイを誘拐して自分の為だけに料理をさせればいいのだから。
ハスターであればあの店に居た人間を全員殺し誘拐する事等、造作も無い事だと思った。
だからこそ噂は噂でしか無いんだと今は思えている。
「まあそんな事より……!」
ロイスは後ろに乗せている鍋に目を向けた。
確か肉じゃがと味噌汁、白米という名の料理が入っている。
もしかしたらこの料理で殿下を心の底から笑顔に出来ると思ったら楽しみで仕方ないのだ。
そんなウキウキ気分で馬車を走らせ目的地に到着した。
そのまま顔パスで王城の門を潜り馬車を馬小屋まで走らせていく。
すると前から毎日顔を合わせている人物が声を掛けて来た。
「今日は買い出しの当番ではないだろう? 何処をほっつき歩いていたんだ?」
「仏頂面先輩こんちわっす! 今日は良い天気っすね!」
「誰か仏頂面だ! 私は殿下専属の執事として日頃から清く正しくこの顔だ!」
「冗談っすよ! クリス先輩?」
「たくっ……」と少し不機嫌な様子のクリス先輩。
黒縁のメガネをくいっと上げ、センターで分けた黒髪を掻き上げながら睨んでいた。
「そもそも質問に答えてないだろう? 馬車なんか出して何を買って来たんだ?」
「ふふふっ! 聞いて驚くなかれっすよ! な、ん、と、晩餐の料理を頂いて来ました!」
「料理?…… 王城には専属のシェフが居るじゃないか。 料理なぞ必要無いだろう?」
「これを食べれば笑顔になれる料理っすよ! 特別なんですって!」
その言葉を聞きクリス先輩は表情を引き締めて答えた。
「何?…… 笑い茸が入った毒料理か?」
「……何でそうなるんすか?」
ロイスの虚しい声が庭に響くのだった。
◇◇◇
ロイスは王城のとある豪華な扉の前に佇んでいる。
コンコンッ
「入れ」と声が掛かったのでロイスはゆっくりどドアノブを回す。
「失礼します! お食事の準備が整いましたので食堂まで起こしください。」
「ああ…… もうそんな時間か。 慣れない書類作業をしてるとあっと言う間に時間が過ぎてしまうね」
そう返答したのがヴィリアム国家の王子、アレン様であった。
金髪碧眼の美しい顔立ち。
目、鼻、口のパーツがどれも完璧な配置をされている。
世界中、誰がどう見てもイケメンと言わざるを得ない男性が書斎に座っていた。
「大変お疲れ様です! シャーロット様も間もなく向かうとの事ですのでアレン様もどうかご一緒に願います」
「母上も来るなら急いで向かおうか。 それにしても何だいその口調は? 私と二人の時は別に畏まらなくて良いんだよ?」
「いや~流石に恐れ多いっすよ~ ……あっやべ!……」
アレン様は咎める事をせず、ふふっと笑みを出し食堂へ歩き始めた。
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