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しおりを挟む蝉が鳴く季節の朝7時。
けたたましく鳴り響く着信音に目が覚める。
「ふぁ~……眠い……」
瞼を擦り大きく背伸びしながら布団から起きる。
モーニングルーティーンを済ませ今日は"特別"に朝から仏壇の前に座った。
「父さん母さん今日はね料理専門学校の一次試験の面接なんだ
本当は父さんと肩を並べながらもっと料理の勉強をしたかったんだけど、今は一人だから学べる場所に行きたいからさ」
僕の両親は交通事故で2年前に亡くなった。
父さんは個人営業で店を切り盛りし、幼い頃から店の手伝いをしていて将来は僕が継ぐのが当たり前に思っていた。
だが両親が亡くなり店も土地も売り払った。
当時16歳の僕は高校1年生でまだ社会について右も左も分からなかった為であった。
昼間は高校、夕方は飲食店でバイトをして生活を送っている。
「それじゃあ行ってくるよ!
また帰って来たら話を聞いてね」
笑顔で写っている両親の写真に見送られながら家を出ていった。
今日が僕の運命を大きく変える1 日になることも知らずに。
◇◇◇
「確か電車で1時間くらいの所だったよね?」
僕はスマホを眺めつつ駅の券売機の前に立っていた。
平日の朝と言う事もあり人混みが多い。
小型の扇風機を持つ女子高生やクールビズでネクタイをしていないサラリーマンが行ったり来たりしている。
目的地の駅までの切符を買うと背後から声を掛けられた。
「あれ恵(けい)じゃん! こんな所で何してんの?」
「おはよう! これから専門学校の面接なんだよね」
声を掛けて来たのは同じクラスの小林アキラ。
サッカー部で夏の大会に向けて部活に行くのだろう。
「面接か~料理の専門学校だっけ? 確かに家庭科の授業で恵が作ったカレーは美味しかったもんな!」
「カレーなら誰でも美味しく作れるよ?」
僕は苦笑いをしながら返答する。
それでも自分が作った料理を美味しいと言われるのはとても嬉しかった。
「恵なら良い嫁さんになるよ!」
「僕は男だ!」
実際の僕はあまり男らしくはないかも知れない。
身長は160センチで顔も童顔、瞳も大きく鼻は小さい。
唇も薄く髪の毛を伸ばせばまるで女の子。
後は肌が綺麗だとよく女子達に褒められる。
美容液とかは全く使ってないんだけど、女子からはオススメの化粧水が何かを聞かれたりして困っていた。
「それじゃあ部活もあるし、俺は学校行くわ! 面接頑張れよ~!」
「ありがとう。 行ってくるよ」
僕達は互いに手を振りながら別れた。
電車の中を見ると多少混んでいてドアの近くでスマホをいじりながら立って乗る事にした。
景色が早く移り変わるのを横目で見ながら段々と緊張感が沸いてきた。
意味も無くスマホの画面を開いたり消したりを繰り返したり、深呼吸をしたりと周りから見たら不審者極まりない行動をしていた。
暫く電車に揺られていると専門学校の最寄りの駅に着いた。
改札を抜け徒歩10分とスマホに写る地図を片手に横断歩道の前に立つ。
時間的余裕はあるものの少し早歩きで行くかと思い信号が青になるのを待った。
青に変わり早歩きで渡ろうと踏み出した時……!
「君危ないっ……!」
「えっ?」
その声に視線を合わせようと顔を横に降ると目の前には大型トラックが突っ込んで来ていた!
ドンッッ!!
「ぅう……ぐ…‥」
気付いた時には元居た場所から数メートル飛ばされ口の中には鉄の味を感じ身体の至る所から激しい痛みがする。
立ち上がる事も出来ずに自分の意識が段々と無くなっていく……
死にたくない……
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