魔王クリエイター

百合之花

文字の大きさ
上 下
113 / 132
Ⅵ章 衰亡

113

しおりを挟む
時間を少しだけ巻き戻そう。

サドラン皇帝達が会議を始める直前ごろ。
会議室に火急の知らせが届いた時刻より4時間ほど前の時間のことである。

サドラン帝国の最南下の位置にある大都市カルーマリア跡地。
今は懐かしき、魔王ヨトウガによって1番初めに壊滅的被害を受けた街であり、サドラン帝国において1番外縁部に位置する大都市だった場所である。
しかし復興作業は殆ど行われていなかった。
なぜならば復興のための資材や人材を送り込むにあたって、より近い位置に存在する超大都市アズール跡地から優先して復旧作業が行われていたためだ。
やりやすい方からやる。
当たり前の道理である。

とは言えただの廃墟街と化した大都市カルーマリア跡地に誰もいないというわけではない。

エルルが魔王ヨトウガに襲わないようにして、聖女達に保護をさせていた子供たちは既に避難させてあるため、民間人は1人もいないのだが、魔王ヨトウガに関する何らかの発見ないしは再度の発生があるかもしれないことへの警戒やら対処のために軍人達と十数人の研究員がいくらか住む、といより駐在しているのだ。
東京以上の人口密度を誇っていた巨大都市の一つの実に侘しい変わりようにカルーマリア跡地に滞在することになった軍人達は頭を抱えたという。

そしてそこから少し離れた位置、街の全景の一部が分かるくらいに距離が離れた位置に不審な人影が。

2つの人影があった。

「それじゃあ、闇太郎、よろしくね」
「ふっ、エルルよ。俺を頼るとはなかなかどうして慧眼だな。褒めてつかわす」

1人は久しぶりの登場、ダンジョンの奥で埃をかぶっていた魔王エルルちゃん。
醤油を作るためのタネ菌を入手するべく、プラベリアから東に向かった先にある黄泉国に行くとき以来の出番である。
今まで魔王に任せきりで、偵察用の魔王である魔王蝶々越しにちらほら様子を見るだけであったエルルが本体ではないとは言えどもこの場にいるということから、今回のエルルの人類の間引きへの本意気具合が察せる。
もう1人は闇太郎と呼ばれた14歳頃の少年だ。
この場にいるのだから彼もまたエルルが生み出した魔王の一種である。
ステータスは以下のようになっている。

名前 カード召喚士
個体名 闇太郎
生物強度 38
スキル カード召喚 カード送還 カード魔法 ショットガンシャッフル 

エルルの住むプラベリアから魔王を創り出して人類に攻め込ませる場合、プラベリアが大陸中央に位置してるという地理条件からエルル、ないしは発生源のあたりをつけるくらいは出来る様になるかもしれない。
各地を偵察する魔王蝶々の視界をを介して魔王を創り出すことは可能であるが、魔王を使い捨てないことにしたエルルからすれば、その手段は取れない。
少なくともにっちもさっちも行かなくなるくらい追い詰められるまでは。
特に今回の攻勢にて間引きを頼むことになる魔王は魔王種の中でも1番デカい。
プラベリアのダンジョンから出したら、絶対に誰かしらには目撃されてその情報が各国に拡散からの、プラベリアに何かがあるぞ?と不審に思われるのが目に見えている。

さて、どうしたものかと。

魔法がある惑星なのだから一瞬で目的地に辿り着くような魔法、ファンタジーもののアニメや漫画でよく見る転移魔法が使えないだろうか?
ゲーム風に言うならファストトラベルとかワープとかできないか?
それらの手段を使えるサポート専門の魔王を創れないだろうか?
その考えから生み出されたのがカード召喚士の闇太郎であった。

魔力が許す限り、自分の想像のままに魔法が使えるようになるカード魔法スキルによる転移魔法で2人はここに一瞬で移動してきた…と言いたいところなのだが転移魔法は魔力消費量が多く、自分の位置と移動したい場所との距離が離れれば離れるほどに、さらには転移させる質量が多ければ多いほど必要な魔力が跳ね上がる。
それが1人分ならまだしも、2人分の転移魔法なんてなおさら闇太郎には使えなかった。
闇太郎の容量キャパシティではそこまで自由、かつ強力な転移魔法スキルは付与できなかったのである。
つまりはここに来たのは魔王エルルちゃんのスキルを介してのエルル本体が持つ転移スキルによる物だったりするが閑話休題。

本題に入るが闇太郎の得意とすることは自分が転移することではない。
他者の転移である。
他者のみしか転移できないという明確な限界を設けることによって、スキルに必要な容量を目減りさせた結果、彼は転移させる対象の質量、距離を完全に無視して自らの近くに他者を召喚、すなわち転移させることが出来るようになったのだ。
しかもその際に使用されるエネルギー、すなわち魔力は普通の転移に比べて少なく済む。

そう言うスキルを闇太郎は持っていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

処理中です...