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百合之花

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Ⅳ章

76 用語辞典Ⅳ後編

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⭐︎魔女
今章におけるキーパーソン、というかキーワード。
用語辞典Ⅲの魔力の項でも触れたが、普通の人間は魔力を生成、それを体の維持や強化に使えるが、魔力を変換したりして魔法を使うことはできない。イメージすれば炎や土が出るなんてまず無理だし、呪文の詠唱だの無詠唱だのというのもない。
関節に曲がる方向と曲がらない方向があるように、変換して外に出すような身体構造をはなからしていないから魔法が使えない。
魔法を使える身体構造を持って生まれた人間を魔女と呼ぶ。
脳内に魔力を魔法へと変換したり制御したりする特殊な体組織が存在し、それによって想うだけで自由に魔法を使うことができる。
その魔法を使える身体構造を後から付け足すために魔科学武器が登場した。
想うだけで魔法が使えてしまうため、死に際に未練があるとああしたかった、こうしたかったという想いが魔法に変わり、死体になった後、もしくは死にかけの状態から動き始めてゾンビという名のアンデットになることがある。
また、子供時代は癇癪などで発生した魔法が周囲の物や人に害を与えてしまうため、魔女が初めて確認された初期の頃は鳥換仔《とりかえご》と呼ばれて、殺されたり捨てられたりしていた歴史がある。
鳥換仔という言葉の由来は、カッコウなどの鳥類の托卵という習性から来ている。
托卵という修正を持つ鳥類は自分とは別の種類の鳥の巣に侵入し、自らの卵を産んで、あとはそのまま育ててもらうことを言う。
この時、大抵は侵入される側の方が小さい種類である上に、侵入者側の卵はより早く孵化するというのも相まって侵入者のヒナは他のヒナや卵を突き落とす。
もちろん排除された卵やヒナは死ぬ。
餌を独り占めにしたり小さい巣でも生きていられるようにという生存戦略である。
結果的に元からいた自分のヒナは全て居なくなって、侵入者のヒナにすり替わるという。
そこから鳥換仔という言葉が産まれ、いつのまにか本当の子供とすり替えられたに違いないと虐げられていた。
自分の子であると認められずに殺した子供がゾンビとして復活したという話も多々あり、それも相まって長いこと鳥換仔は信じられてきた。
もちろん魔法がある世界であれど、実際にそんなことはない。
近代は人口の増加と共に魔女への認知度や理解度が上がっていった結果、魔女にも人権が認められ、さらにはそうした想った魔法が思わぬタイミングで発動しないように、魔法を制御する訓練や魔科学武器を携帯する義務や法整備まで行われており、ほぼほぼゾンビを見ることもなくなったためゾンビという言葉すら知らない人が大半である。

ちなみに鳥類の托卵される側は絶滅してしまうのでは?と気になる人もいるかも知れないが、托卵される側も自らの卵の状態を記憶しておき、今まで無かった卵や微妙な柄の違いを見極めて排除することで対抗するため、極端に数を減らすということはないらしい。

またまたちなみに。
魔女という日本語そのものは女性のみを指すが、魔女の翻訳前の言葉は性差によって呼び名が変わるわけではないので、それを翻訳した魔女という言葉も結果的に男性にも使われることがある。
とはいえ、この世界で魔女は女性のみという設定。
人口増加に伴い、血が濃くなりやすくなるのか年々魔女が産まれる割合は増え続けており、女児の8人に1人が魔女である。
魔科学武器なしに魔法が使える男性はいまだ確認されていない。
英雄アストルフも突然変異的に産まれた魔力制御能力が非常に高い人間であったが、魔法が使えるわけではない。

⭐︎魔王物語
地球のように勇者や魔王を題材に作られたお話は沢山ある。
その中でも特に有名な童話が魔王物語。
勇者が主人公の作品と違い、魔王視点で物語が展開されるため、立場や時代によって同じ思想でも悪とするか善とするかを楽しみながら学べるとして教育に関係する仕事に従事する人々から非常に高い評価を得ている傑作童話。
作者不明であり、作者が誰なのかは複数の説がある。
かなり古い時期から原型にあたるお話は存在していたという古文学的にも興味深い作品。
現代に至るまでに様々な派生作品がある。
原典はかなり血生臭く、童話に向かないとも言われる。
魔王物語に登場した勇者の持つ聖剣のモデルになったのでは?と思わしき刀剣がとある山から発掘され、一時期話題になった。

⭐︎聖剣
魔王物語に登場する勇者の持つ聖剣。を実際に再現しようと1人の鬼才が試みて開発された刀剣型の兵器。
非常に強力であったが、非常に扱いにくく、使えば使用者は絶対に死ぬくらいの負担を強いていたために軍の兵器倉庫の奥で埃をかぶっていた。
聖剣開発計画も中止。
試作された聖剣が数本、一応の完成品が1本の数本のみが現存する。
実戦で使用するには現実的ではないとされ、長いこと日の目を見ることはなかった悲しき刀剣。
魔科学武器の機能は魔力を増幅したり、制御したりするが、それらの機能を跳ね上げることができる。
結果的に非常に大規模な魔法を使用可能。
ただ、使用者は魔法を使う前に魔力を制御し切れずに死ぬ。

⭐︎新型試作聖剣ホープ
上記の聖剣の扱いにくさを最新技術で改良した新型の聖剣のうちの一本。
現在は2本のみ開発されていて聖剣シリーズとも呼ばれる新作魔科学武器。
使用、即死亡、とはならなくなった。
性能は据え置き。
どころか、新たな拵解と言う機能まで追加されて、ますます強力に。
魔力増幅率は通常魔科学武器の10倍に比べて50倍にまでなり、拵解機能も使用すれば120倍にまで跳ね上がる使用者の負担を考えない馬鹿げた兵器。
扱いやすく改良されたとはいえ、まだ荒いために使用者は特別魔力制御能力に優れている魔女でなければいけないし、それでなお体への負担もエグい。
最大魔力増幅率120倍なんて機能もあるが使用は現実的ではない。

⭐︎拵解
拵解《そんかい》と言う言葉は拵《こしら》えを解《ほど》くと書く。
拵えは刀でいうところの刀身以外の柄や鍔といった飾り的な部分を指す。
聖剣の飾り部分、つまりは核である水晶玉のような部分以外は分離して破棄するため、拵解と呼ばれる。刀身なんて飾りなんです。
通常形態の聖剣の魔力の増幅における最大倍率は50倍だが、拵解状態では周囲にある魔力を取り込んで約120倍にまでなる。

⭐︎魔石
一箇所に魔力が集まり過ぎると物質化し結晶化する。
それを人は魔石と呼ぶ。
大量の魔力が人体に毒となるのはこの性質が関係している。
魔力が集まると人体内部でエネルギーから物質に近い形へと変化し、体内で魔力の代謝が滞るようになる。
イメージとしては気体の窒素が液体になるような感じ。
気体を取り込む肺に水を入れたらどうなるかは言うまでもない。
物質として存在していない魔力を運搬していた仕組みに物質化した魔力が流れるはずもなし。
魔力が物質化し始めると魔力が体内を巡りにくくなり、一箇所に集まりやすくなる、それがまた物質化しやすくなり~と悪循環に陥る。
とはいえ魔力過剰症ともいわれ、ここまでは普通にありうる。
しかし、さらに魔力が集まると完全に物質化して石のようになる。
これを魔石と呼び、普通は人の体内に発生することはない。
魔力が滞留する一部の地域や地中で発見されたり、現在は大半の種類が絶滅している竜の類などの魔力を大量に持つ生き物かつ魔力が集中しやすい肝臓や心臓の内部から発見される。
そうした竜などから得られた天然物の魔石は宝石の一種として高い価値を持つ。
過去にはエネルギー資源として使われていたが現在では、魔力を人工的に集めて作る人工魔石が流通しているためエネルギー資源としての価値は皆無に等しい。
ちなみに魔力は桜色の光を反射するため、大量の魔力が固まった魔石も桜色となる。
天然物の魔石はロイヤルピンクとも呼ばれ、過去には王族たちがこぞって求めたという。
技術の発展と共に人工魔石をロイヤルピンクだと偽って売り出される詐欺行為が問題になっている。

⭐︎魔法使いの杖
現代では魔科学武器と呼ばれる道具の原型的存在。
魔女じゃない人々が魔法を使うために開発された。
最古の魔法の杖は約30万年前の地層から発見され、確認されている中で最古の魔法使いエヴィの名前を取って「エヴィの杖」と言われている。
発見された物が30万年前というだけで、現存できなかった杖があるかも知れないと考えるとさらに昔から存在していた可能性もある。
時代によって材料や形状は様々で、過去に作られた物で一番多いのは木材と魔石を組み合わせただけの非常にシンプルな杖状の物。
それから時代が進むにつれて金属なども使われ始め、様々な形も取り、現代の魔科学武器へと成った。
特にエヴィの杖に使われている木材は、ただの材木であるはずなのに魔力に対する様々な反応が現存するどんな素材よりも優っており、未だ何の樹木が使用されたのかが不明。それを解明、発見できれば魔科学武器の研究が100年は進むと言われている。

余談だが地球では初めて人類が発生したのは10万~20万年前らしい。
この世界では魔力がある分、寿命やら身体能力が高い傾向にあるので人の形になるまでの進化が早かったり、寿命が延びて世代交代が遅い分、一度でも天才が産まれれば天才による恩恵を受けられる期間や度合いがより大きかったりで、地球よりもだいぶ早くに人類発生、文化やらの発展も早いという設定です。

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