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時間は止まらない
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ちづは夢を見ていた。
先生はヒトの遺体を鑑査している。
ちづはその仕事に慣れることはなかった。
だが、ひたむきな先生の眼差しを追うことは日に日に心地よいものになっていた。
「死後硬直がとけると、どんなに鬼のような顔も穏やかになる。顔面の硬直がとけ筋肉が緩むからだ。ひとはその穏やかな顔を見、器へのお別れをするのだろう」
先生の講義は退屈なのか、いつも狭い教室に数人がノートを取っている。
ちづは、掃除婦として派遣されただけ。
『健康な体を見なければ、病理は意味がない』
その日、キャンセルとなった裸婦に代わったのはいつだろうか。
「要らない、こんなもの要らない」「要らないならもらおう」その声はその日の出来事が道路に散乱する。
要らないなら返して!は、ちづは言うことはなかった。
震える子供の手をずっと胸のなかで暖めていたから。
これは夢だ。と。
「大事なひとを取り戻したよ………ほら、ごくわずかだけれど、綺麗に洗って縫合をして、見た目は元にもどったよ。ホルマリンの管理をきちんとすれば未来永劫………」
ちがう!
汗と涙で濡れたベッドから起き上がった。
鳥が鳴く朝。
曇り空。
イコはしばらく家から出ていた。
家には誰もいない。
小さなとても小さな部屋なのに狭さで吐きそうになる。
失踪七年による通知。
イコの父は死と認められた。
「ただいま、ちづ」
「お帰り、イコ」
イコは早朝帰ってきた。
大事なものは、閉まってはいけない。
『僕は独りぼっちになったよ。』『独りじゃないよ。私がいる。私がそばにいる。』『いつまで?』『いつまでも、あなたがいらないと言っても』『言うわけがない』『いらないと言っても私がいる。わたしはあなたを……』
面差しは、穏やかな笑顔。
そして、心音は鳴り響く。
先生はヒトの遺体を鑑査している。
ちづはその仕事に慣れることはなかった。
だが、ひたむきな先生の眼差しを追うことは日に日に心地よいものになっていた。
「死後硬直がとけると、どんなに鬼のような顔も穏やかになる。顔面の硬直がとけ筋肉が緩むからだ。ひとはその穏やかな顔を見、器へのお別れをするのだろう」
先生の講義は退屈なのか、いつも狭い教室に数人がノートを取っている。
ちづは、掃除婦として派遣されただけ。
『健康な体を見なければ、病理は意味がない』
その日、キャンセルとなった裸婦に代わったのはいつだろうか。
「要らない、こんなもの要らない」「要らないならもらおう」その声はその日の出来事が道路に散乱する。
要らないなら返して!は、ちづは言うことはなかった。
震える子供の手をずっと胸のなかで暖めていたから。
これは夢だ。と。
「大事なひとを取り戻したよ………ほら、ごくわずかだけれど、綺麗に洗って縫合をして、見た目は元にもどったよ。ホルマリンの管理をきちんとすれば未来永劫………」
ちがう!
汗と涙で濡れたベッドから起き上がった。
鳥が鳴く朝。
曇り空。
イコはしばらく家から出ていた。
家には誰もいない。
小さなとても小さな部屋なのに狭さで吐きそうになる。
失踪七年による通知。
イコの父は死と認められた。
「ただいま、ちづ」
「お帰り、イコ」
イコは早朝帰ってきた。
大事なものは、閉まってはいけない。
『僕は独りぼっちになったよ。』『独りじゃないよ。私がいる。私がそばにいる。』『いつまで?』『いつまでも、あなたがいらないと言っても』『言うわけがない』『いらないと言っても私がいる。わたしはあなたを……』
面差しは、穏やかな笑顔。
そして、心音は鳴り響く。
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