ネネギの国

ネネギの国 3

求愛と承諾と柔らかなものと、堅い意志

「王が贈られた品物の中でも姫が一番にみいったのは紙だった。みての通りここは皇山。元来研究者であられる姫はその糸の編み込みにもさらに研究を重ねられた」
「……」
「記録というものは原始より固いものか破れないものと思われていた。そして記録は破壊され記憶となり伝承となり逸話となる。偽りだ。逸話とはすべてが偽りに歪められる。だからこそ記録と検証の文庫官が大勢いるのがあまたの王国の覇権だった。今の世もそうだろう」
「……」
「我が国の再生治癒能力も紙という軽さと、戦略的要素。そして古紙の記録としての修復と転写貼付もにそこから始まったんだ」
「ああ、俺がなぜ真っ二つに切り裂かれたと思ったのに死んでいないのか。ようやく、わかりだしたよ」


腕だけが残された間で、王にして皇女であらせられる姫君は鷹を呼んだ。
埃と戦火の町に大鷹が舞い降りた。
「ヴァルチャー・グリフィス！王の鳥だ」
誰もが知り、誰もが恐れる、王の鷹が姫君を乗せ光の天より降りてこられた。
大王の側近はすぐさまひざまずくと状況と状態を端的に申し上げた。
「大王はさらに風土病もかかられております。馬でもってしても我が城まで持ちません」
「あい分かった」