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デート編

ハラスメントの傷口

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 子ども教室の時、年に数回大量に女子が辞めていく時期があった。梨花子がそれに気がついたときには、もう遅かった。
 体育大学を出た優秀な指導者の前に列を作り「はい、次、次」と、予防接種のように行われる行事がそれだったからだ。
「おっぱいがデテキタ、ブラジャーと、アンダーシャツを購入するように」と指導されるのだ。
 女子が辞めていく多くは、初潮もある。
 通常でも「女くさい」と揶揄される。
 梨花子は、二十歳まで生理不十分のまま成長した。
 胸をさわられる恐怖がいつもある。組手の時よりも、寝技の時の方が酷かった。多くの女子が初手で大技や一本で終わらせたいのは、練習相手がほとんど思春期の男子だったのもあるかもしれない。
けれど選手の「弱体化」と言われ続けた。強化合宿中、どのコーチも唾を飛ばし怒りを振り撒いていった。

 荒れた唇に薄い色の入ったリップを塗る。メンソール以外使ったことがないのでその甘たるさに恥ずかしさを覚えた。
 下駄箱で寮母が咎めるように喋ってきたので「休みの日にどこへ行こうが構わないじゃないですか」と、思わず声をあらげる動悸が起きそうになった。声は喉の奥の震えとなって「がっ、がっぐわっ」と変な声が「さっさといけ」と手を払われるように合図されて逃げるように外に出た。
「気持ち悪い子だねぇ」
 は、走っていくうちにもう聞こえなくなった。
 お洒落したのに、汚いスニーカーを履いていたことのほうが、梨花子には落ち込むことだった。


 恋愛経験がない梨花子にとって初めてのラブホテル。
 部屋番号や内装など吟味することが恥ずかしくてできない。見れるのはその下の休憩、フリータイム、宿泊料金という金額だけだった。金額だけが見えて羞恥で呆然としている。
「この中でいきたい部屋がある? 」
と、言われても「なぜ、ここは黒いの? 」と言う始末。
「ここは使用中だから」
 と、返事をされて、恥ずかしくて逃げたかった。
「僕も、災害の時にね、利用させて貰った以来」と、さらっと彼は言った。「お風呂が広いんだよ」

 
「目を閉じなくてもいいよ」
 と、キスをする。
 梨花子は恥と屈辱の意味がわかっていなかった。
 たぶん、すこしばかりあの先生が好きだったのかもしれないと自分に説得し続けていたのかもしれない。私はこの人とこれから裸になるというのに。
「こわい」
「こわいならやめるよ」
「……あなたはこわくない。目を閉じるのがこわい」
 そういったので、彼は答えたのだ。

「目を閉じなくてもいいよ」

 
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