改編版アストロノートとペテン師

ふしきの

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山羊谷小屋

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 氷床から一番近いキャンプ地には火星探査機機の集大成である酸素生成器が設置してあります。
 そして、旧人類の火星探査機機器機械部品の再生工房のテントも使えるかどうかは判断できない状態で備わっています。 
 光の当たりの弱いそこは、隠者の守とも悪評では呼ばれていました。
 実のところ、初期火星での一番訪問者の多い場所だったに違いありません。酸素濃度の薄い火星において人の探求心をくすぐりやすいポイントです。
 北極。
 氷。
 山。
 あるいは地下の酸素発生源としての究明とくれば、「登ってみたかった」の言で終わりました。


「人がいる。ああ、火星に人が…」その人は鮮やかなせん妄状態だと笑いだしました。彼は長時間紫外線に当たりすぎたせいで弱視になっていたから人など見えるわけもないのにです。
「探索隊にしては他のメンバーがいない」と、どこからか問いかけます。
「全員、火星に降りたとたんに不安症候群によるパニックで酸素欠乏症になった」
「あなたは酸素欠乏症になっていなし、なによりこの高原をザイルで登ってきたじゃないか」
 すこしばかり、ビブラートのかかった女性の声です。
「僕は、高地生まれの少数民族だったからね。船の方が酸素濃度の高さで具合が悪くて常に装着用ヘルメットをしていた技工士なんだ。職場放棄して逃げるのなら、最後に独りで楽しいことしたくなってね」
「好奇心? 」
「僕は山岳民族だからね。着地地点に指定された開けた平原が怖くて逃げた方が正解。価値あるコスモポリタンと呼ばれても、最終的には引き返せない絶望を目の前にした流刑労働者だ」
「面白い」
「……君はどこの隊……」
 だんだんと孤独よりも安心によることでパニック症状が収まっていきます。何気なしに彼女の腰元に手を伸ばしてきました。
「私は父より生まれ、この地で兄たちと育った。私の名はアクステス、言語ではアスタリスク」
「……星、むかしの黒い大地の女王様もスターにちなんだって名前だったね。アーカイブで観たことがある。君のような褐色の肌でとても美しい人だったよ。僕は君のことをもっと知りたいな」
 娘はするりと身を交わして距離をとりました。
 銃製音ではありません。ヴィブラニウムの素材でできた伸縮素材が、独特の伸びをして曲がり、切れと向かってくる異物体を蒸発させました。
「嘘つき」
 彼女は、語ります。『嘘さえつかなければ、殺したりしない』なのに、誰一人、本当のことを彼女に言いませんでした。ここに来た人の全員がです。
 一人二人と、気配だけで察知し、立ち回ります。
 火星の風が塵を拐い彼らを大地に撒いていくのです。
 無数の光の銃口よりも彼女の方が的確に急所をとらえたし、何よりも手数てかずが本当に多かったのです。指は女王と呼ばれた人と同じ、六本目の指がありました。遠くと接近の戦いを使い分ける武器をもつのに適していました。
「二酸化炭素濃度ばかり意識しているから、一酸化炭素溜まりに適応力が弱い」
 登ってきた最後のひとりを蹴落としたのです。

 夢が見えるのです。
「苔のような植物が少ない場所にしか根着いていない。でも、頭の奥で見てごらん、ほら、風が運ぶ、運河沿いに緑野が拡がるのを。いずれこの大地に適応した強い種族が育つんだ。お前のアスタリスクってのは、頬っぺたにキスをするっていう意味があるのも覚えておきなさい」
 泣く子に愛をと、遠くで父が微笑むのです。
「頬は笑っているかい? 」
 と、風がささやくのです。
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