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夕食は早上がりの時は啓吾が、自慢の料理を作る。
幸せそうに料理を運ぶ登の姿を見るのが啓吾は好きだった。
「そう言えば、お前はあんまり好き嫌いないよな…。俺、自分で食うものだから好き勝手に作っているけど、嫌いなものとか言ってくれたら、極力努力するし」
「控えるじゃなくて努力ってところが啓吾らしいね。啓吾は自分の作ったものに自慢をしてもいいと思うよ。実際嫌いなのってないし…ただ、量が多いかなって思うくらいで…」
そう言って、二人で食卓に着く。
自分が天才のように思える幸せの瞬間だった。
「ランドスケープデザインを本気で勉強したいんだ」
と言った登は、すでに会社からの手続きで研究付き合いのある学校の教授との話を進ませての出来事だった。相変わらず平然とした表情で「書類は揃ったから」とだけ言った。
それは当然、啓吾にとっては初耳だったので、実際の所拗ねていた。やきもちではないけれど、この淡々と自分を仕切る登の表現がいまいち腹が立つのだ。
なぜ一言でも相談してくれないのか。何で言ってくれないのか、話題すら上ったことないぞそんな話。って、いうか俺ら毎日何をしていたわけ?と。仮にも恋人として同棲を始めている訳なのだが…。
「このところ忙しかったわけだし、別に会社を辞めるわけでもないし、言うこともないかと思って…」
啓吾にとっては思い当たる節は山ほどある。営業は忙しく、帰ると深夜が多くてもムラムラするのが抑えきれなくて、眠たいのを起こして登をセックスすることが多々あった。そんな感じで自分では上手くいっているつもりが実際は話という話をほとんどしてなかった。
「いつ決めたのかよ」
相変わらず淡々と「入社する前から…入社のときの面接でも環境開発の方へ携わる仕事がしたかったんだけど…」そう言うと、少しはにかんだ顔が紅葉する。「学部が学部だったし、配属部署が経理になるとは知らされたけど…」
資格持ちが仇になったのか、登はそう言って話題を切った。
沈黙の時間が二人して痛く感じた。
「週末、久しぶりにオールナイトで映画見に行かないか?お前の好きそうなやつ」
啓吾は台所に立って、ビールを開けながらそう言った。
「いいの?」
「たまには息抜きも必要でしょう!」
最近かまってない…って言うか速攻でベットに押し倒したい感情を抑えつつ紳士的に行こうと啓吾は作り笑いをした。
変な顔をしてる…と、登は笑った。
登はそう言う所だけは、観察力が鋭い。いつもボーとしたタイプで何を考えているかさっぱりわからない。啓吾に料理を教わってもたまに砂糖入れに塩を補充することもよくある。だけど、今回の話でも唐突だった割に、有無を言わせないガンとしたところがあるのも確かだ。分からない、相手のことが全く分からない、時としてそれをこじ開けてみたい衝動になる。それが啓吾にとっての登の印象で、引かれる要素なのかもしれない。
登に口づけると
「ビール苦い」
って、渋い顔をされた。
それでも、登がビール泡の口ひげを舐めてくれるのがうれしいので、最近はビールマイスターを目指すべく美味しい気泡の作り方をいち早くマスターした。
幸せそうに料理を運ぶ登の姿を見るのが啓吾は好きだった。
「そう言えば、お前はあんまり好き嫌いないよな…。俺、自分で食うものだから好き勝手に作っているけど、嫌いなものとか言ってくれたら、極力努力するし」
「控えるじゃなくて努力ってところが啓吾らしいね。啓吾は自分の作ったものに自慢をしてもいいと思うよ。実際嫌いなのってないし…ただ、量が多いかなって思うくらいで…」
そう言って、二人で食卓に着く。
自分が天才のように思える幸せの瞬間だった。
「ランドスケープデザインを本気で勉強したいんだ」
と言った登は、すでに会社からの手続きで研究付き合いのある学校の教授との話を進ませての出来事だった。相変わらず平然とした表情で「書類は揃ったから」とだけ言った。
それは当然、啓吾にとっては初耳だったので、実際の所拗ねていた。やきもちではないけれど、この淡々と自分を仕切る登の表現がいまいち腹が立つのだ。
なぜ一言でも相談してくれないのか。何で言ってくれないのか、話題すら上ったことないぞそんな話。って、いうか俺ら毎日何をしていたわけ?と。仮にも恋人として同棲を始めている訳なのだが…。
「このところ忙しかったわけだし、別に会社を辞めるわけでもないし、言うこともないかと思って…」
啓吾にとっては思い当たる節は山ほどある。営業は忙しく、帰ると深夜が多くてもムラムラするのが抑えきれなくて、眠たいのを起こして登をセックスすることが多々あった。そんな感じで自分では上手くいっているつもりが実際は話という話をほとんどしてなかった。
「いつ決めたのかよ」
相変わらず淡々と「入社する前から…入社のときの面接でも環境開発の方へ携わる仕事がしたかったんだけど…」そう言うと、少しはにかんだ顔が紅葉する。「学部が学部だったし、配属部署が経理になるとは知らされたけど…」
資格持ちが仇になったのか、登はそう言って話題を切った。
沈黙の時間が二人して痛く感じた。
「週末、久しぶりにオールナイトで映画見に行かないか?お前の好きそうなやつ」
啓吾は台所に立って、ビールを開けながらそう言った。
「いいの?」
「たまには息抜きも必要でしょう!」
最近かまってない…って言うか速攻でベットに押し倒したい感情を抑えつつ紳士的に行こうと啓吾は作り笑いをした。
変な顔をしてる…と、登は笑った。
登はそう言う所だけは、観察力が鋭い。いつもボーとしたタイプで何を考えているかさっぱりわからない。啓吾に料理を教わってもたまに砂糖入れに塩を補充することもよくある。だけど、今回の話でも唐突だった割に、有無を言わせないガンとしたところがあるのも確かだ。分からない、相手のことが全く分からない、時としてそれをこじ開けてみたい衝動になる。それが啓吾にとっての登の印象で、引かれる要素なのかもしれない。
登に口づけると
「ビール苦い」
って、渋い顔をされた。
それでも、登がビール泡の口ひげを舐めてくれるのがうれしいので、最近はビールマイスターを目指すべく美味しい気泡の作り方をいち早くマスターした。
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