2 / 3
巨人と共に生き残りの顛末
しおりを挟む
村が鉄砲水で流されたとき、ツタ網に引っ掛かったのを助けてくれたのはしらみの巨人でした。
「しらみ巨人」といわれるのはその通り、身体中の垢とアザと汚れに共存共栄している嫌なものが引っ付いているからです。
それでも、巨人が半眠りから起きて村人全員を頭にのせてくれる優しさを持っていました。
鉄砲水で絡まったのに手を差しのべてくれたのはしらみ巨人だけだったのです。
「わしらは青いふさすぐり、食らっても酸いだけ」
『わははは、どだ、私の頭の上にいる鳥の巣立ちが全部できたかどうか確認んしてくれんか?痒くても頭も掻けん』
それほどまでに優しい巨人だけだったのです。
恩を返すのが習わしの部族は、しらみ巨人のしらみつぶしや。不快な顎髭をそろえたり目の中のごみや、耳の中の詰め込まれた砂金を堀当てたりして日々を暮らしていましたが、やがて巨人は空腹と孤独に敏感になりすぎたのです。
あの日。
『木苺。食う』
「温度で頭がいかれた!」
とひとは言います。
ですが、
「あれはわしらとたもとを別れた種族。だが、ヒトに落ちた種族じゃ」
『迷う迷うな、食うな。食えるな食える……な。木苺。赤い実』
と言い聞かせている巨人に老女が
「私の子が、息子が見える。生き残り最後の部族、最愛の息子が生きている」
と狂い出したのです。
「止めて、わしらは生きている。わしらの子の最後のあの子を助けておくれ。おーい。おーい。母じゃはここにおる。皆も欠けずに生きておる!」
「おーいおい」
その声は巨人の腕をあげる音にかきけされても叫び続けるのです。
「助けておくれ。わしらの子」
まだ見つからぬ我が子を探す仲間の一人が巨人を狂わせ自分も狂ったとなったのは、
「止まれ。止まれ」
そういうと、
『止まれ』
といいながら巨人が石を投げていたこと。
「足を止めろ。あの子は立ち止まる。」
巨人に向かって飛んでくる眉間に刃の消えない傷をつけた破片は同族の再生組織でした。
破片がめり込んだ巨人の気持ちはもう誰にも伝わらなくなりました。
「我等は治癒と貴方に安心を約束いたします」
逆です。
我等は組織的狩猟を覚えていったのです。巨人ひとり分ぐらいの食いぶちは我等が採取していくのは当たり前です。
「食えるもの、食えないもの」分け、我等が食えるもの食えないものも取る。捕りすぎないように。一山二山など巨人の股のしたかもしれませんが食べ物はあるのです。
巨人が自分の爪ひとつで怪我をしないように整えたり、丁寧に丁寧に語り、かれの蓄積された言葉を教わりました。お互い長寿なので待つことにも耐えることにも慣れています。そして、ひどい言葉にはおびえます。同じなのです。
巨人は生涯笑ってはくれなかったのです。
ワタシが最後の生き残り。
血縁が濃すぎて継ぎ子はもうできない。
「しらみ巨人」といわれるのはその通り、身体中の垢とアザと汚れに共存共栄している嫌なものが引っ付いているからです。
それでも、巨人が半眠りから起きて村人全員を頭にのせてくれる優しさを持っていました。
鉄砲水で絡まったのに手を差しのべてくれたのはしらみ巨人だけだったのです。
「わしらは青いふさすぐり、食らっても酸いだけ」
『わははは、どだ、私の頭の上にいる鳥の巣立ちが全部できたかどうか確認んしてくれんか?痒くても頭も掻けん』
それほどまでに優しい巨人だけだったのです。
恩を返すのが習わしの部族は、しらみ巨人のしらみつぶしや。不快な顎髭をそろえたり目の中のごみや、耳の中の詰め込まれた砂金を堀当てたりして日々を暮らしていましたが、やがて巨人は空腹と孤独に敏感になりすぎたのです。
あの日。
『木苺。食う』
「温度で頭がいかれた!」
とひとは言います。
ですが、
「あれはわしらとたもとを別れた種族。だが、ヒトに落ちた種族じゃ」
『迷う迷うな、食うな。食えるな食える……な。木苺。赤い実』
と言い聞かせている巨人に老女が
「私の子が、息子が見える。生き残り最後の部族、最愛の息子が生きている」
と狂い出したのです。
「止めて、わしらは生きている。わしらの子の最後のあの子を助けておくれ。おーい。おーい。母じゃはここにおる。皆も欠けずに生きておる!」
「おーいおい」
その声は巨人の腕をあげる音にかきけされても叫び続けるのです。
「助けておくれ。わしらの子」
まだ見つからぬ我が子を探す仲間の一人が巨人を狂わせ自分も狂ったとなったのは、
「止まれ。止まれ」
そういうと、
『止まれ』
といいながら巨人が石を投げていたこと。
「足を止めろ。あの子は立ち止まる。」
巨人に向かって飛んでくる眉間に刃の消えない傷をつけた破片は同族の再生組織でした。
破片がめり込んだ巨人の気持ちはもう誰にも伝わらなくなりました。
「我等は治癒と貴方に安心を約束いたします」
逆です。
我等は組織的狩猟を覚えていったのです。巨人ひとり分ぐらいの食いぶちは我等が採取していくのは当たり前です。
「食えるもの、食えないもの」分け、我等が食えるもの食えないものも取る。捕りすぎないように。一山二山など巨人の股のしたかもしれませんが食べ物はあるのです。
巨人が自分の爪ひとつで怪我をしないように整えたり、丁寧に丁寧に語り、かれの蓄積された言葉を教わりました。お互い長寿なので待つことにも耐えることにも慣れています。そして、ひどい言葉にはおびえます。同じなのです。
巨人は生涯笑ってはくれなかったのです。
ワタシが最後の生き残り。
血縁が濃すぎて継ぎ子はもうできない。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
桃岡駅の忘れ物センターは、今日も皆さん騒がしい。
桜乃
児童書・童話
桃岡駅(とうおかえき)の忘れ物センターに連れてこられたピンクの傘の物語。
※この物語に出てくる、駅、路線などはフィクションです。
※7000文字程度の短編です。1ページの文字数は少な目です。
2/8に完結予定です。
お読みいただきありがとうございました。
春を売る少年
凪司工房
現代文学
少年は男娼をして生計を立てていた。ある時、彼を買った紳士は少年に服と住処を与え、自分の屋敷に住まわせる。
何故そんなことをしたのか? 一体彼が買った「少年の春」とは何なのか? 疑問を抱いたまま日々を過ごし、やがて彼はある回答に至るのだが。
これは少年たちの春を巡る大人のファンタジー作品。
男サキュバスがα女に犯されてメス堕ちする話
ぱきら
恋愛
ふたなり女攻め、男受け。精液という名の媚薬漬けになっちゃうサキュバスくんはえっちだなあ…という気持ちで書きました。
ふたなり女を出すためだけのご都合オメガバース設定有。
所々男同士の絡み(挿入なし)もあります。
後半とくにSMなりdom/subなりぽい。
星座の作り方
月島鏡
児童書・童話
「君、自分で星座作ったりしてみない⁉︎」
それは、星が光る夜のお伽話。
天文学者を目指す少年シエルと、星の女神ライラの物語。
ライラと出会い、願いの意味を、大切なものを知り、シエルが自分の道を歩き出すまでのお話。
自分の願いにだけは、絶対に嘘を吐かないで
つぼみ姫
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
世界の西の西の果て、ある城の庭園に、つぼみのままの美しい花がありました。どうしても花を開かせたい国王は、腕の良い元庭師のドニに世話を命じます。年老いて、森で静かに飼い猫のシュシュと暮らしていたドニは最初は気が進みませんでしたが、その不思議に光る美しいつぼみを一目見て、世話をすることに決めました。おまけに、ドニにはそのつぼみの言葉が聞こえるのです。その日から、ドニとつぼみの間には、不思議な絆が芽生えていくのでした……。
※第15回「絵本・児童書大賞」奨励賞受賞作。
しずかのうみで
村井なお
児童書・童話
小学五年生の双子姉弟がつむぐ神道系ファンタジー。
春休みの始まる前の日、息長しずかは神気を見る力に目覚めた。 しずかは双子の弟・のどかと二人、琵琶湖のほとりに立つ姫神神社へと連れて行かれる。 そして叔母・息長みちるのもと、二人は神仕えとしての修行を始めることになるのだった。
ぞうのさんちゃん
キノピオ
児童書・童話
あらすじですね(^_^;)
おっきくて優しいぞうのさんちゃんが
森の仲間とある出来事を通して
自分らしさをとりもとしていくお話です
8年前書いたままでした
ずーっと放置してまして
当時いろんな方にイラストも
描いて頂だきました
みなさんお元気でありますように
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる