異世界オ○ホ英雄奇譚〜そのインポ童貞はオ○ホで世界を無双する〜

子猫紳士

文字の大きさ
上 下
29 / 33
ティンポラス編

25 そのインポ童貞はオ○ホで世界を無双した

しおりを挟む
 「ここは……」

 白銀の世界。

 オレはこの場所を知っている。

 「よく到達できたな。」

 立ち尽くすオレの後ろから聞き覚えのある声がする。

 「お主がここまで来れる確率は正直低いと思っとったわい。」

 「どういうことすか、神様?」

 オレは振り向きざまに後ろに立っているスカト・ロジーに問いかける。

 「これからお主には神になってもらう事になる。」

 スカト・ロジーは鋭い目つきでオレにそう言い放った。

 「いくらなんでも勝手すぎじゃないっすか?」

 オレはスカト・ロジーのまくしたてるような物言いに苛立ちを覚える。

 「やっと大切な仲間と呼べる存在ができたんすよ。やっとやり直せると思ったんすよ!」

 オレはスカト・ロジーに詰め寄る。

 「オレをろくでもない異世界に突き落とした挙句、そこでやっと見つけたオレを思いやってくれる人からも引き離す。何がしたいんだアンタは!!」

 オレが詰め寄るも、スカト・ロジーは今回は冷や汗一つ流さずオレから目線を逸らさない。

 「いや、結局お主は神になる事を選ぶのじゃよ。」

 「どういう事だ。」

 「……説明してやる。」

 そしてスカト・ロジーは軽く息を吐き、おもむろに話し始めた。

 「神というのはその起源を辿ればただの知性を持ったモンスター、もしくは人間なのじゃ。」

 「神が、モンスターか人間だった……?」

 「そうじゃ、そして『第一世代』と呼ばれる原初の神々はティンポラスの低級モンスターや、ただの人間じゃったのじゃ。」

 意味がわからない。なぜそんな奴らが神なんかに……?

 「ワシも第一世代の一人じゃ。ワシは元モンスターじゃからこんな歪な見た目をしとるのじゃよ。」

 そう言ってスカト・ロジーは自分の顔をさすり、続ける。

 「ティンポラスで虐げられていた者たちは必ず蔑称を付与される。これは今でも残っとる習慣みたいじゃがの。」

 蔑称……そうか、だからあの世界の多くの人間やドワーフは酷い名前をしていたのか!?

 「そしてもちろんワシら第一世代たちも蔑称をつけられた。」

 「そんな弱い立場のアンタたちが一体全体どうやって神になったってんだよ。」

 「きっかけは一人の転生者じゃった。どうやら奴は次元の狭間から偶発的に転生したようじゃったがな。」

 「神の助力無しで転生したのか?」

 「あぁ、それは全くの奇跡じゃった。」

 「そいつがアンタらを神にしたのか?」

 「結果的にはそうじゃな。じゃが、あやつも転生者とはいえただの人間。すぐに奴隷となり『ヒャク・ニンギリ』という蔑称をつけられた。」

 ……またひでぇ名前だな。

 スカト・ロジーはオレを一瞥し話を続ける。

 「じゃが、あやつは自分に課せられた“試練”を乗り越えた。そして手に入れたスキルというものを駆使してティンポラスの上級モンスターたちを殲滅していった。」

 「何だよ、試練って?」

 「さあの、それが何だったのか知っとるのはあやつだけじゃ。」

 スカト・ロジーはどこか遠くの方を眺める。

 「試練を乗り越えたあやつは神という座につく事になったのじゃ。そして神の権能を使い、共に戦ったワシらを同じ神にした。」

 「話が全く見えてこねぇよ、その話とオレに何の関係があるんだよ。」

 「まぁ聞け。」

 スカト・ロジーはオレを制止し、話を続ける。

 「ヒャク・ニンギリが次元の狭間から本来であればあり得なかった“転生”を果たしてしまった事で、様々な世界に異常が生じることとなった。」

 「なんだよ、異常って。」

 「魔王、またはそれに準ずる者が存在するようになったのじゃ。」

 「……魔王ってのは最初からその世界にいるもんなんじゃねぇのか?」

 「いや、魔王の存在は一種のバグのようなものじゃ。そして一つのバグはすぐに世界全体を侵食していく。じゃからそのバグを取り除き、世界の理を平常に戻すためにお主ら“転生者”が異世界に送り込まれるのじゃ。」

 「じゃあ、バグである魔王を倒したらどうなるんだよ。」

 「その世界は消える。」

 「は?」

 「言ったじゃろ? バグはすぐに世界全体に侵食すると。 魔王を倒すというのは即ち、バグまみれの世界を無かった事にするという事じゃ。」

 「消える? あの世界が? あいつらも?」

 オレは神の胸ぐらを掴む。

 「ふざけんなよ! これからだってのに……これからやっとあいつらだって幸せに……!」

 「ひとつだけ方法がある。」

 神はオレを見据える。

 「お主が神になる事じゃ。」

 オレを見る神の目つきが鋭くなる。

 「神の権能じゃよ。それは世界の原理のひとつやふたつ、簡単に壊す事ができるものじゃ。」

 「それが?」

 「この神界ではティンポラスより何千倍も時の流れが遅い。つまりまだティンポラスは消滅してはいないのじゃ。そして神の権能を行使すれば消滅していくティンポラスを維持する事も可能じゃ。」

 「…………。」

 「神になるためにはこの神界でトップの存在であるヒャク・ニンギリを含め、全ての神を倒す必要がある。そして神に挑む為には【神への挑戦権】の使用が必要となるが……ここに来たということは、すでに使っているのじゃろ?」

 「……オレが神になればあいつらも消えなくて済むのか?」

 「あぁ、そういう事じゃ。」

 「……分かった。やってやるよ。」

 「ちなみに魔王を倒したお主は、今なら元の世界へ帰る事もできるが?」

 「あんな世界に戻るくらいなら神にでも何でもなってやるよ。」

 「そうか。せめてもの餞別じゃ、これをやる。」

 そう言って神はオレに透明のケースに入った緑に輝く小さな石を手渡す。

 「何だこれ。」

 「神殺しの石じゃよ。その石を武器に埋め込む事で神に対しての殺傷能力が飛躍的に上がる。ワシ程度の神であれば当たっただけでも即死じゃな。」

 オレはその石をオ○ホに埋め込む。

 次の瞬間、神はそれを一切の躊躇いなく掴んだ。

 「なっ……!」

 「言ったじゃろ? お主は全ての神を倒す必要がある。当然ワシも含めてじゃ。」

 神は今にも消えそうな全身から微かに声を出しているようだった。

 「じゃあの、ワシの与えた試練を乗り越えたお主ならやれるはずじゃよ。」

 そう言い残し、スカト・ロジーはその存在を完全に消失させた。

 「神か……」

 オレはひとり呟く。

 淡い緑に光る武器を握りしめて。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。 自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。 魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

処理中です...