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ティンポラス編
25 そのインポ童貞はオ○ホで世界を無双した
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「ここは……」
白銀の世界。
オレはこの場所を知っている。
「よく到達できたな。」
立ち尽くすオレの後ろから聞き覚えのある声がする。
「お主がここまで来れる確率は正直低いと思っとったわい。」
「どういうことすか、神様?」
オレは振り向きざまに後ろに立っているスカト・ロジーに問いかける。
「これからお主には神になってもらう事になる。」
スカト・ロジーは鋭い目つきでオレにそう言い放った。
「いくらなんでも勝手すぎじゃないっすか?」
オレはスカト・ロジーのまくしたてるような物言いに苛立ちを覚える。
「やっと大切な仲間と呼べる存在ができたんすよ。やっとやり直せると思ったんすよ!」
オレはスカト・ロジーに詰め寄る。
「オレをろくでもない異世界に突き落とした挙句、そこでやっと見つけたオレを思いやってくれる人からも引き離す。何がしたいんだアンタは!!」
オレが詰め寄るも、スカト・ロジーは今回は冷や汗一つ流さずオレから目線を逸らさない。
「いや、結局お主は神になる事を選ぶのじゃよ。」
「どういう事だ。」
「……説明してやる。」
そしてスカト・ロジーは軽く息を吐き、おもむろに話し始めた。
「神というのはその起源を辿ればただの知性を持ったモンスター、もしくは人間なのじゃ。」
「神が、モンスターか人間だった……?」
「そうじゃ、そして『第一世代』と呼ばれる原初の神々はティンポラスの低級モンスターや、ただの人間じゃったのじゃ。」
意味がわからない。なぜそんな奴らが神なんかに……?
「ワシも第一世代の一人じゃ。ワシは元モンスターじゃからこんな歪な見た目をしとるのじゃよ。」
そう言ってスカト・ロジーは自分の顔をさすり、続ける。
「ティンポラスで虐げられていた者たちは必ず蔑称を付与される。これは今でも残っとる習慣みたいじゃがの。」
蔑称……そうか、だからあの世界の多くの人間やドワーフは酷い名前をしていたのか!?
「そしてもちろんワシら第一世代たちも蔑称をつけられた。」
「そんな弱い立場のアンタたちが一体全体どうやって神になったってんだよ。」
「きっかけは一人の転生者じゃった。どうやら奴は次元の狭間から偶発的に転生したようじゃったがな。」
「神の助力無しで転生したのか?」
「あぁ、それは全くの奇跡じゃった。」
「そいつがアンタらを神にしたのか?」
「結果的にはそうじゃな。じゃが、あやつも転生者とはいえただの人間。すぐに奴隷となり『ヒャク・ニンギリ』という蔑称をつけられた。」
……またひでぇ名前だな。
スカト・ロジーはオレを一瞥し話を続ける。
「じゃが、あやつは自分に課せられた“試練”を乗り越えた。そして手に入れたスキルというものを駆使してティンポラスの上級モンスターたちを殲滅していった。」
「何だよ、試練って?」
「さあの、それが何だったのか知っとるのはあやつだけじゃ。」
スカト・ロジーはどこか遠くの方を眺める。
「試練を乗り越えたあやつは神という座につく事になったのじゃ。そして神の権能を使い、共に戦ったワシらを同じ神にした。」
「話が全く見えてこねぇよ、その話とオレに何の関係があるんだよ。」
「まぁ聞け。」
スカト・ロジーはオレを制止し、話を続ける。
「ヒャク・ニンギリが次元の狭間から本来であればあり得なかった“転生”を果たしてしまった事で、様々な世界に異常が生じることとなった。」
「なんだよ、異常って。」
「魔王、またはそれに準ずる者が存在するようになったのじゃ。」
「……魔王ってのは最初からその世界にいるもんなんじゃねぇのか?」
「いや、魔王の存在は一種のバグのようなものじゃ。そして一つのバグはすぐに世界全体を侵食していく。じゃからそのバグを取り除き、世界の理を平常に戻すためにお主ら“転生者”が異世界に送り込まれるのじゃ。」
「じゃあ、バグである魔王を倒したらどうなるんだよ。」
「その世界は消える。」
「は?」
「言ったじゃろ? バグはすぐに世界全体に侵食すると。 魔王を倒すというのは即ち、バグまみれの世界を無かった事にするという事じゃ。」
「消える? あの世界が? あいつらも?」
オレは神の胸ぐらを掴む。
「ふざけんなよ! これからだってのに……これからやっとあいつらだって幸せに……!」
「ひとつだけ方法がある。」
神はオレを見据える。
「お主が神になる事じゃ。」
オレを見る神の目つきが鋭くなる。
「神の権能じゃよ。それは世界の原理のひとつやふたつ、簡単に壊す事ができるものじゃ。」
「それが?」
「この神界ではティンポラスより何千倍も時の流れが遅い。つまりまだティンポラスは消滅してはいないのじゃ。そして神の権能を行使すれば消滅していくティンポラスを維持する事も可能じゃ。」
「…………。」
「神になるためにはこの神界でトップの存在であるヒャク・ニンギリを含め、全ての神を倒す必要がある。そして神に挑む為には【神への挑戦権】の使用が必要となるが……ここに来たということは、すでに使っているのじゃろ?」
「……オレが神になればあいつらも消えなくて済むのか?」
「あぁ、そういう事じゃ。」
「……分かった。やってやるよ。」
「ちなみに魔王を倒したお主は、今なら元の世界へ帰る事もできるが?」
「あんな世界に戻るくらいなら神にでも何でもなってやるよ。」
「そうか。せめてもの餞別じゃ、これをやる。」
そう言って神はオレに透明のケースに入った緑に輝く小さな石を手渡す。
「何だこれ。」
「神殺しの石じゃよ。その石を武器に埋め込む事で神に対しての殺傷能力が飛躍的に上がる。ワシ程度の神であれば当たっただけでも即死じゃな。」
オレはその石をオ○ホに埋め込む。
次の瞬間、神はそれを一切の躊躇いなく掴んだ。
「なっ……!」
「言ったじゃろ? お主は全ての神を倒す必要がある。当然ワシも含めてじゃ。」
神は今にも消えそうな全身から微かに声を出しているようだった。
「じゃあの、ワシの与えた試練を乗り越えたお主ならやれるはずじゃよ。」
そう言い残し、スカト・ロジーはその存在を完全に消失させた。
「神か……」
オレはひとり呟く。
淡い緑に光る武器を握りしめて。
白銀の世界。
オレはこの場所を知っている。
「よく到達できたな。」
立ち尽くすオレの後ろから聞き覚えのある声がする。
「お主がここまで来れる確率は正直低いと思っとったわい。」
「どういうことすか、神様?」
オレは振り向きざまに後ろに立っているスカト・ロジーに問いかける。
「これからお主には神になってもらう事になる。」
スカト・ロジーは鋭い目つきでオレにそう言い放った。
「いくらなんでも勝手すぎじゃないっすか?」
オレはスカト・ロジーのまくしたてるような物言いに苛立ちを覚える。
「やっと大切な仲間と呼べる存在ができたんすよ。やっとやり直せると思ったんすよ!」
オレはスカト・ロジーに詰め寄る。
「オレをろくでもない異世界に突き落とした挙句、そこでやっと見つけたオレを思いやってくれる人からも引き離す。何がしたいんだアンタは!!」
オレが詰め寄るも、スカト・ロジーは今回は冷や汗一つ流さずオレから目線を逸らさない。
「いや、結局お主は神になる事を選ぶのじゃよ。」
「どういう事だ。」
「……説明してやる。」
そしてスカト・ロジーは軽く息を吐き、おもむろに話し始めた。
「神というのはその起源を辿ればただの知性を持ったモンスター、もしくは人間なのじゃ。」
「神が、モンスターか人間だった……?」
「そうじゃ、そして『第一世代』と呼ばれる原初の神々はティンポラスの低級モンスターや、ただの人間じゃったのじゃ。」
意味がわからない。なぜそんな奴らが神なんかに……?
「ワシも第一世代の一人じゃ。ワシは元モンスターじゃからこんな歪な見た目をしとるのじゃよ。」
そう言ってスカト・ロジーは自分の顔をさすり、続ける。
「ティンポラスで虐げられていた者たちは必ず蔑称を付与される。これは今でも残っとる習慣みたいじゃがの。」
蔑称……そうか、だからあの世界の多くの人間やドワーフは酷い名前をしていたのか!?
「そしてもちろんワシら第一世代たちも蔑称をつけられた。」
「そんな弱い立場のアンタたちが一体全体どうやって神になったってんだよ。」
「きっかけは一人の転生者じゃった。どうやら奴は次元の狭間から偶発的に転生したようじゃったがな。」
「神の助力無しで転生したのか?」
「あぁ、それは全くの奇跡じゃった。」
「そいつがアンタらを神にしたのか?」
「結果的にはそうじゃな。じゃが、あやつも転生者とはいえただの人間。すぐに奴隷となり『ヒャク・ニンギリ』という蔑称をつけられた。」
……またひでぇ名前だな。
スカト・ロジーはオレを一瞥し話を続ける。
「じゃが、あやつは自分に課せられた“試練”を乗り越えた。そして手に入れたスキルというものを駆使してティンポラスの上級モンスターたちを殲滅していった。」
「何だよ、試練って?」
「さあの、それが何だったのか知っとるのはあやつだけじゃ。」
スカト・ロジーはどこか遠くの方を眺める。
「試練を乗り越えたあやつは神という座につく事になったのじゃ。そして神の権能を使い、共に戦ったワシらを同じ神にした。」
「話が全く見えてこねぇよ、その話とオレに何の関係があるんだよ。」
「まぁ聞け。」
スカト・ロジーはオレを制止し、話を続ける。
「ヒャク・ニンギリが次元の狭間から本来であればあり得なかった“転生”を果たしてしまった事で、様々な世界に異常が生じることとなった。」
「なんだよ、異常って。」
「魔王、またはそれに準ずる者が存在するようになったのじゃ。」
「……魔王ってのは最初からその世界にいるもんなんじゃねぇのか?」
「いや、魔王の存在は一種のバグのようなものじゃ。そして一つのバグはすぐに世界全体を侵食していく。じゃからそのバグを取り除き、世界の理を平常に戻すためにお主ら“転生者”が異世界に送り込まれるのじゃ。」
「じゃあ、バグである魔王を倒したらどうなるんだよ。」
「その世界は消える。」
「は?」
「言ったじゃろ? バグはすぐに世界全体に侵食すると。 魔王を倒すというのは即ち、バグまみれの世界を無かった事にするという事じゃ。」
「消える? あの世界が? あいつらも?」
オレは神の胸ぐらを掴む。
「ふざけんなよ! これからだってのに……これからやっとあいつらだって幸せに……!」
「ひとつだけ方法がある。」
神はオレを見据える。
「お主が神になる事じゃ。」
オレを見る神の目つきが鋭くなる。
「神の権能じゃよ。それは世界の原理のひとつやふたつ、簡単に壊す事ができるものじゃ。」
「それが?」
「この神界ではティンポラスより何千倍も時の流れが遅い。つまりまだティンポラスは消滅してはいないのじゃ。そして神の権能を行使すれば消滅していくティンポラスを維持する事も可能じゃ。」
「…………。」
「神になるためにはこの神界でトップの存在であるヒャク・ニンギリを含め、全ての神を倒す必要がある。そして神に挑む為には【神への挑戦権】の使用が必要となるが……ここに来たということは、すでに使っているのじゃろ?」
「……オレが神になればあいつらも消えなくて済むのか?」
「あぁ、そういう事じゃ。」
「……分かった。やってやるよ。」
「ちなみに魔王を倒したお主は、今なら元の世界へ帰る事もできるが?」
「あんな世界に戻るくらいなら神にでも何でもなってやるよ。」
「そうか。せめてもの餞別じゃ、これをやる。」
そう言って神はオレに透明のケースに入った緑に輝く小さな石を手渡す。
「何だこれ。」
「神殺しの石じゃよ。その石を武器に埋め込む事で神に対しての殺傷能力が飛躍的に上がる。ワシ程度の神であれば当たっただけでも即死じゃな。」
オレはその石をオ○ホに埋め込む。
次の瞬間、神はそれを一切の躊躇いなく掴んだ。
「なっ……!」
「言ったじゃろ? お主は全ての神を倒す必要がある。当然ワシも含めてじゃ。」
神は今にも消えそうな全身から微かに声を出しているようだった。
「じゃあの、ワシの与えた試練を乗り越えたお主ならやれるはずじゃよ。」
そう言い残し、スカト・ロジーはその存在を完全に消失させた。
「神か……」
オレはひとり呟く。
淡い緑に光る武器を握りしめて。
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