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ティンポラス編
アナザーストーリー 佐川凛
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小学生
理性がまだ十分に発達せず、人によっては本能のままに行動する時期。
あの頃はまだ良かった。
女っぽいこの顔つきを馬鹿にされて仲間外れにされるだけだったから。
暴力を振るわれても、そこは小学生、大した事にはなりませんでした。
中学生
それは、なまじ知識を持ちつつも常識的な判断には一歩欠ける、
そんな思春期真っ盛りな年頃です。
男子は特に腕力も強くなり、小学生の時よりも狡猾な人が増え、陰湿ないじめも起こるようになります。
そして、そんな年頃の人々は集団意識が芽生え始め、自分のグループに属さない所謂「はみ出し者」を徹底的に排斥しようとするものでした。
バンッ!
「……ぐぅっ!」
佐川は教室の壁に押し飛ばされていた。
男にしては華奢すぎる体の持ち主である彼は抵抗もできずに崩れた机の中にうずくまるしかない。
『2-3』と書かれたプレートが佐川の頭に落ちてくる。
「いつもいつもへらへらと……俺らのこと馬鹿にしてんの?」
クラスのリーダー格の男が佐川を睨み近づいていく。
「……っが…」
男に首を掴まれ佐川は声を出すこともできない。
「女みてぇな顔しやがってよぉ……キモいんだよ、お前は。」
中学校になってから、こんな暴力沙汰をほとんどの先生は見て見ぬ振りをする様になりました。
注意する先生もあくまで注意する態度をとって、その後は放置。
誰も本当に俺を助けようとなんてしてくれない。
大丈夫。俺は大丈夫。いつもなんとか自分を誤魔化してきた。
今だってきっと大丈夫……
「あ? 何またへらへら笑ってんだ。」
ダンッ!!
頭を床に打ちつけられる。
あぁ、またやっちゃった……
どうしようもなくなるとつい愛想笑いでごまかそうとする癖がついてる……
はみ出し者の俺は、何か喋れば標的に、何も喋らなくても標的になる。
いつの間にか周囲の人から一歩距離を置いて遠くから愛想笑いするだけの人間になっていた。
「何で……こんな、事?」
無理に頭を起こした佐川の額から一筋の血が流れる。
「あ? 言っただろ。お前のその気持ち悪ぃ顔と笑い方がムカつくんだよ。」
あぁ、でも結局、こうなるのか……もう、嫌だな。
いっそ死んじゃった方が楽かもしれない……
「はぁ、もういいわ飽きた。」
そう言って男は佐川を放り投げ、去って行った。
「ははっ……俺はサンドバッグってことですか?」
また笑っていた。我ながら嫌になる。
いつの間にかこんな癖のついた自分も、女っぽい自分の顔も大嫌い。
女っぽいのがいじめの原因ならと、一人称を僕から俺に変えてみたり、女子みたいに長かった髪を切ってみたりもしました。
でも、結局なにも変わらない……
自分という人間を受け入れてくれる人なんて存在しない。
いじめの標的になりつつもなんとか地獄のような一年半を過ごし、俺は高校に進学することとなりました。
正直不安です。
また中学の時と同じようにいじめられるんじゃないか。
また自分の気持ちを押さえ込んで、目立たず、死んだように生きなければならないのではないか。
俺に居場所なんてものはあるんだろうか……
佐川は中学時代に全身に刻まれたいくつもの傷やアザをさする。
この通学路が地獄に続く道のように見えてしかたがない。
憂鬱な気持ちが俺の心を鷲掴みにして離そうとしてくれない。
でも歩みを止めることもできない。
自殺するほどの激情は無いけど、誰にも知られないまま消えてしまいたい。
「危ないっ!!!」
その時、誰かの声がしました。
いや、声がする前から何となく分かっていました。
空から降ってくる鉄鋼の気配
分かっていたのに避けれなかった。
避けようとしなかった。
「もう……いいかな。」
ガシャンッ!!!
鉄鋼が全身にゆっくりと染み込んでくるような感覚。
通学路がぼやけていく
あぁ、もし死後の世界があるのなら
ありのままの俺のことを好きでいてくれる人に……出会えるかな
本当に俺を助けてくれる人に……出会えるかな
出会えると……いいな
そしたら、きっと…………
理性がまだ十分に発達せず、人によっては本能のままに行動する時期。
あの頃はまだ良かった。
女っぽいこの顔つきを馬鹿にされて仲間外れにされるだけだったから。
暴力を振るわれても、そこは小学生、大した事にはなりませんでした。
中学生
それは、なまじ知識を持ちつつも常識的な判断には一歩欠ける、
そんな思春期真っ盛りな年頃です。
男子は特に腕力も強くなり、小学生の時よりも狡猾な人が増え、陰湿ないじめも起こるようになります。
そして、そんな年頃の人々は集団意識が芽生え始め、自分のグループに属さない所謂「はみ出し者」を徹底的に排斥しようとするものでした。
バンッ!
「……ぐぅっ!」
佐川は教室の壁に押し飛ばされていた。
男にしては華奢すぎる体の持ち主である彼は抵抗もできずに崩れた机の中にうずくまるしかない。
『2-3』と書かれたプレートが佐川の頭に落ちてくる。
「いつもいつもへらへらと……俺らのこと馬鹿にしてんの?」
クラスのリーダー格の男が佐川を睨み近づいていく。
「……っが…」
男に首を掴まれ佐川は声を出すこともできない。
「女みてぇな顔しやがってよぉ……キモいんだよ、お前は。」
中学校になってから、こんな暴力沙汰をほとんどの先生は見て見ぬ振りをする様になりました。
注意する先生もあくまで注意する態度をとって、その後は放置。
誰も本当に俺を助けようとなんてしてくれない。
大丈夫。俺は大丈夫。いつもなんとか自分を誤魔化してきた。
今だってきっと大丈夫……
「あ? 何またへらへら笑ってんだ。」
ダンッ!!
頭を床に打ちつけられる。
あぁ、またやっちゃった……
どうしようもなくなるとつい愛想笑いでごまかそうとする癖がついてる……
はみ出し者の俺は、何か喋れば標的に、何も喋らなくても標的になる。
いつの間にか周囲の人から一歩距離を置いて遠くから愛想笑いするだけの人間になっていた。
「何で……こんな、事?」
無理に頭を起こした佐川の額から一筋の血が流れる。
「あ? 言っただろ。お前のその気持ち悪ぃ顔と笑い方がムカつくんだよ。」
あぁ、でも結局、こうなるのか……もう、嫌だな。
いっそ死んじゃった方が楽かもしれない……
「はぁ、もういいわ飽きた。」
そう言って男は佐川を放り投げ、去って行った。
「ははっ……俺はサンドバッグってことですか?」
また笑っていた。我ながら嫌になる。
いつの間にかこんな癖のついた自分も、女っぽい自分の顔も大嫌い。
女っぽいのがいじめの原因ならと、一人称を僕から俺に変えてみたり、女子みたいに長かった髪を切ってみたりもしました。
でも、結局なにも変わらない……
自分という人間を受け入れてくれる人なんて存在しない。
いじめの標的になりつつもなんとか地獄のような一年半を過ごし、俺は高校に進学することとなりました。
正直不安です。
また中学の時と同じようにいじめられるんじゃないか。
また自分の気持ちを押さえ込んで、目立たず、死んだように生きなければならないのではないか。
俺に居場所なんてものはあるんだろうか……
佐川は中学時代に全身に刻まれたいくつもの傷やアザをさする。
この通学路が地獄に続く道のように見えてしかたがない。
憂鬱な気持ちが俺の心を鷲掴みにして離そうとしてくれない。
でも歩みを止めることもできない。
自殺するほどの激情は無いけど、誰にも知られないまま消えてしまいたい。
「危ないっ!!!」
その時、誰かの声がしました。
いや、声がする前から何となく分かっていました。
空から降ってくる鉄鋼の気配
分かっていたのに避けれなかった。
避けようとしなかった。
「もう……いいかな。」
ガシャンッ!!!
鉄鋼が全身にゆっくりと染み込んでくるような感覚。
通学路がぼやけていく
あぁ、もし死後の世界があるのなら
ありのままの俺のことを好きでいてくれる人に……出会えるかな
本当に俺を助けてくれる人に……出会えるかな
出会えると……いいな
そしたら、きっと…………
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