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ティンポラス編
アナザーストーリー 神々の物語2
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ワシは界長室のドアを開ける。
「ん? あぁ、よく来てくれましたね、スカト・ロジー。」
ヒャク・ニンギリ界長は灰色の無精髭を触りながらワシの方を見る。
「界長からの呼び出しを断れるほどワシは偉くなってはないもんでのぅ。」
「神様歴はあなたの方が大ベテランなんですがね。」
「ワシはただ長くやっとるだけじゃよ。お主のように顕著な成績など挙げたこともないし、むしろいつもノルマギリギリなくらいじゃ。老体にこのノルマとやらはいささかきつすぎてのぅ。」
「確かに今月は、私も無茶な案件を背負ってきたと反省していますよ。」
「日本での急速な異世界転生ブーム、まぁこの流れに乗るのは界長として当然の判断だったとは思うがの。」
「ははっ、あなたにそう言って貰えると心底安心しますよ。」
ヒャク・ニンギリは笑みを浮かべる。
「そうかい、して、今日ワシを呼び出した用件はなんじゃ? そろそろワシの神格剥奪の時が来てしもうたのかの?」
ワシはヒャク・ニンギリを一瞥する。
「まさか、私はあなたの営業スタイルは理解しているつもりですよ。ノルマぎりぎりと言ってましたが、それでも求められた最低限のことは必ずこなしてくれる。あなたは優秀な神様ですよ。」
「ほぅ……ではなぜワシを?」
「あなたの営業スタイルは理解しているつもりだと言いましたが、ひとつだけ理解出来ないことがありましてね…今日はその確認のためにお時間をいただいたというわけですよ。」
「理解できないこと?」
「ええ。……本当に良かったのですか?」
「何がじゃ?」
「あの男を『ティンポラス』に転生させたことです。」
「あぁその事か、別にかまわんよ。責任はワシが負えばええんじゃろ。」
「しかしそれではヴァキューム・ベーゼの尻拭いもいいところですよ。無用なお節介でわざわざあなた程の神がリスクを負う必要はないでしょうに。」
「うむ、そういう考えも出来るじゃろうな。」
「ではなぜ!?」
「ヒャクよ、若くして界長の座に登り詰めた稀代の神よ。お主は優秀で非常に合理的じゃ。神は本来そうした姿であるべきなのかもしれん。
じゃがな、同時に神は「与える存在」でもなければならんとワシは思うんじゃよ。たとえそれが祝福でも試練でも……それは相手が神でも同じこと、ただそれだけの話じゃよ。」
「……。」
「まぁあくまでワシの価値観の問題じゃ。それに神様業界は人手不足、どうあれ後輩の育成は必要不可欠じゃろ?」
「しかしヴァキュームはあなたのことを快く思ってはいない。価値観の相違は仕方のないことですが、そんな相手にまでそこまでしてやることはないのではありませんか?」
「言ったじゃろ? ワシはあくまで『与える神』でありたいのじゃ。そういうのが流行らんのはワシも重々承知しておる。じゃが、ワシはそうあることしかできんのじゃよ。」
「…まったく、あなたは本当にお節介ですね。今も、昔も。」
「ははっ、歳をとると同じことしかできなくなるものじゃよ。」
「お時間をとらせて申し訳ない。あなたの意向は分かりました。今後ともよろしくお願いしますね。」
「あぁ、こちらこそよろしく頼むぞい。」
ワシは界長に一礼し、そのまま界長室を後にした。
「ん? あぁ、よく来てくれましたね、スカト・ロジー。」
ヒャク・ニンギリ界長は灰色の無精髭を触りながらワシの方を見る。
「界長からの呼び出しを断れるほどワシは偉くなってはないもんでのぅ。」
「神様歴はあなたの方が大ベテランなんですがね。」
「ワシはただ長くやっとるだけじゃよ。お主のように顕著な成績など挙げたこともないし、むしろいつもノルマギリギリなくらいじゃ。老体にこのノルマとやらはいささかきつすぎてのぅ。」
「確かに今月は、私も無茶な案件を背負ってきたと反省していますよ。」
「日本での急速な異世界転生ブーム、まぁこの流れに乗るのは界長として当然の判断だったとは思うがの。」
「ははっ、あなたにそう言って貰えると心底安心しますよ。」
ヒャク・ニンギリは笑みを浮かべる。
「そうかい、して、今日ワシを呼び出した用件はなんじゃ? そろそろワシの神格剥奪の時が来てしもうたのかの?」
ワシはヒャク・ニンギリを一瞥する。
「まさか、私はあなたの営業スタイルは理解しているつもりですよ。ノルマぎりぎりと言ってましたが、それでも求められた最低限のことは必ずこなしてくれる。あなたは優秀な神様ですよ。」
「ほぅ……ではなぜワシを?」
「あなたの営業スタイルは理解しているつもりだと言いましたが、ひとつだけ理解出来ないことがありましてね…今日はその確認のためにお時間をいただいたというわけですよ。」
「理解できないこと?」
「ええ。……本当に良かったのですか?」
「何がじゃ?」
「あの男を『ティンポラス』に転生させたことです。」
「あぁその事か、別にかまわんよ。責任はワシが負えばええんじゃろ。」
「しかしそれではヴァキューム・ベーゼの尻拭いもいいところですよ。無用なお節介でわざわざあなた程の神がリスクを負う必要はないでしょうに。」
「うむ、そういう考えも出来るじゃろうな。」
「ではなぜ!?」
「ヒャクよ、若くして界長の座に登り詰めた稀代の神よ。お主は優秀で非常に合理的じゃ。神は本来そうした姿であるべきなのかもしれん。
じゃがな、同時に神は「与える存在」でもなければならんとワシは思うんじゃよ。たとえそれが祝福でも試練でも……それは相手が神でも同じこと、ただそれだけの話じゃよ。」
「……。」
「まぁあくまでワシの価値観の問題じゃ。それに神様業界は人手不足、どうあれ後輩の育成は必要不可欠じゃろ?」
「しかしヴァキュームはあなたのことを快く思ってはいない。価値観の相違は仕方のないことですが、そんな相手にまでそこまでしてやることはないのではありませんか?」
「言ったじゃろ? ワシはあくまで『与える神』でありたいのじゃ。そういうのが流行らんのはワシも重々承知しておる。じゃが、ワシはそうあることしかできんのじゃよ。」
「…まったく、あなたは本当にお節介ですね。今も、昔も。」
「ははっ、歳をとると同じことしかできなくなるものじゃよ。」
「お時間をとらせて申し訳ない。あなたの意向は分かりました。今後ともよろしくお願いしますね。」
「あぁ、こちらこそよろしく頼むぞい。」
ワシは界長に一礼し、そのまま界長室を後にした。
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