異世界オ○ホ英雄奇譚〜そのインポ童貞はオ○ホで世界を無双する〜

ティンポラス編

９ とりあえず倒しに行ってみよう

　紫の空に茜色の雲が溶け始め、撫でるようなそれでいて引っ掻くような冷たい風が吹き抜けてゆく。

　優しい斜陽の差し込む草原の中、あまりにも場違いな喧騒が響く。


　「ん゛おぉぉぉぉ！！……おっおっ、らめ、はげしっ……お゛っ、んほぉ！……イグぅぅぅ～～～❤︎❤︎❤︎」

　ぼびゅるるるる…ぶびゅっ…ビュクビュクッ……


　足をピンと伸ばし、時折大きく体がハネる無様なオブジェと化した緑髪の女型のモンスターはそのまま気を失った。

　ちゅぽんっ！

　白目を剥くそのモンスターの股間からオレはオ○ホを抜き取る。

　「金貨50枚か……相当強い敵だったみたいだな、知らんけど。」

　このオ○ホがアホみたいに強くなって以来、モンスターだろうが巨根だろうが、オレは全く恐怖を抱かなくなっていた。

　「まぁ、飛んでくる精液にも攻撃判定がつくおかげでオレに当たる事は絶対ないみたいだし、感覚が麻痺するのも当然と言えば当然か……」

　それにしてもずいぶんと美形なモンスターだったな。こんな美人モンスターの激しく乱れる姿を見ても何も感じないのはオレがインポだからだろうか、それとも本当に感情ってもんがぶっ壊れちまったからなのか……

　「できることなら、この絶景を普通に性欲のあった学生のうちに楽しみたかったもんだ。」

　健常者だった頃の自分を懐かしがりつつ、オレはポケットに入れていたしわくちゃの紙を取り出す。



　『誓約書』

　我々、ティンポラスを統べる四天王は互いの支配領域に対して相互絶対不可侵の協定をここに結ぶ。
　また、いずれかの支配領域への侵攻が認められた場合、他の四天王もまた、侵攻の認められた支配領域を統治する四天王と共に、速やかに侵入者に誅伐を下すこととする。

　スカーレット【支配領域：北の草原】
　クローディア【支配領域：西の山脈】
　ルーカス　　【支配領域：東の大地】
　エイデン　　【支配領域：南の荒原】



　この紙はクローディアを昇天させた際、彼女の尻ポケットから出てきたものだ。

　どうやらクローディアは四天王とかいうやばそうな奴らの一員だったらしい。

　ついでに今隣に倒れている緑髪の女も「スカーレット」とかいう、四天王の一人である。

　この紙を拾った後、特に行く当てのなかったオレは、とりあえず一番上に名前が書いてあったこいつを次の移動対象としたのだ。

　クローディアが四天王の一人だったことには驚いたが、それ以上に四天王をイキ狂わせて秒殺したこのオ○ホの異常さに正直ドン引いた。


　「まぁ、こんだけ金貨があれば当面の生活費には困らないだろ。」

　グゥゥと情けなく腹が鳴る。

　「そういやもう丸一日なんも食べてなかったな。どこか食料売ってる街を探さねぇとな。」

　オレは街を探して歩き始める。

　「街は移動対象にならねぇのがホントめんどくせぇなぁ……」

　いっそ街にチ○コでも取り付けてくれたら移動できるかもしれねぇのに。

　そこまで考えてオレはブンブンと頭を振る。

　「腹が減りすぎてまともな思考もできなくなったのか、オレは？　まず、街の名前すら知らねぇんだから対象になんかできるわけねぇだろ。てかそれ以前に“対象者”だろうが！　街は者じゃないっての。」

　ひとつ大きなため息をついてオレは再び腹を鳴らしながら歩き始めた。