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ティンポラス編
6 謎の侵入者
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俺は佐川凛。
この『ティンポラス』の世界に日本から転生して来た者です。
高校生活の始まりに胸を高ならせて新しい学舎へ向かっていたあの日、建設中の建物から落ちて来た鉄鋼の下敷きになって俺は死んでしまいました。
次に目を開けたとき、俺は白銀の世界にいました。
そしてそこにいた「ヴァキューム・ベーゼ」と名のる神に、無理矢理この世界に転生させられたのです。
でも、いきなりこんな世界に放り出されても右も左も分からない俺は神から押しつけられた謎の杖を握りしめてただただ困惑するしかありませんでした。
そもそもその杖の使い方すらろくに教えてもらってません。
あの神はとにかく俺を異世界に転生させることにご執心だったみたいです。
そして、この世界に放り出され、呆然としていた俺の前に現れたのは「クローディア」と名のる赤毛のモンスターでした。
俺はこれまでの人生、ケンカすら一度もしたことがなかったので一目散に逃げようとしました。
しかしそのモンスターは一瞬で距離を詰めると、俺の持っていた杖を真っ二つに折り、俺の腹に強烈な鉄拳を食らわせ、俺はそのまま気を失ってしまったのです。
その後俺はクローディアに炭鉱のような場所に連れていかれ、そこでの強制労働を強いられる事となりました。
その炭鉱には何十人という人たちが働かされていました。
他の働いている人たちの話によると、もう少し前は百人以上の労働者がいたそうですが、どんどん使い潰され今くらいの人数にまで減ったのだとか……
それもそのはず、俺たちに課せられる労働内容は凡そ人間にこなしきれるようなものではなく、そのうえ食事は三日に一度あれば良い方で、一週間絶食状態になる時も多いのです。
ここで働く人たちは日に日に痩せ細っていってるのが分かります。
でも俺たちはこの労働条件にしがみついていくしかないのです。
クローディアの命令をこなすことができなければ、即座に殺される。実際に今朝、俺の前で荷物を落とした労働者が文字通りクビになって死んでいきました……
また、仮にここから抜け出したとしても俺たちは、モンスターの蔓延るこの世界で生きていく術を持っていません。
ここを出ても、また違うモンスターの奴隷として生きていくしかないでしょう。
「はぁ……何でこうなっちゃうのかなぁ……」
日本にいた時に若干ぽっちゃり気味だった自分の腹をさする。
「肋骨の形がこんなにはっきり分かるなんて……」
こんなふうに死ぬ気で働き続けていても、命をギリギリ延ばしているだけ。
そう遠くないうちに破滅する、そんなことは分かりきっているのに……
今日もこうして、あるはずの無い希望を希いながらツルハシを力の限り振り下ろす。
「どうしようも…ないのかなぁ」
俺が声を震わせ、そう呟いた時でした。
「おい! 何だあれ!」
近くで作業していた奴隷仲間が、空を指差し声をあげました。
俺もその方角を向き、目を細めてみます。
ヒュォォォォォ……
赤く光る何かが落ちて来ていました。
「あれ、なんかこっちに向かって来てませんか?」
「あぁ、なんかヤバそうな気がするな……」
「ちょっ…! どんどん近づいて来てるじゃないですか!」
「……これ、逃げた方がよくねぇか?」
「そうですね……皆さん! 何かこっちに落ちて来ています! 逃げましょう!」
俺が近くにいる奴隷仲間たちに逃げるよう指示していると、背後から爆音が響いて来ました。
ズダン!!!!
「……え、まさか、人……ですか?」
ここにはクローディアの支配領域。
侵入することなんて、まず不可能なはず……
「あなたは、一体……?」
黒フードのその人は体から赤い光を放ち、死んだような目で
ーー右手に桃色の筒のようなものを持っていました。
この『ティンポラス』の世界に日本から転生して来た者です。
高校生活の始まりに胸を高ならせて新しい学舎へ向かっていたあの日、建設中の建物から落ちて来た鉄鋼の下敷きになって俺は死んでしまいました。
次に目を開けたとき、俺は白銀の世界にいました。
そしてそこにいた「ヴァキューム・ベーゼ」と名のる神に、無理矢理この世界に転生させられたのです。
でも、いきなりこんな世界に放り出されても右も左も分からない俺は神から押しつけられた謎の杖を握りしめてただただ困惑するしかありませんでした。
そもそもその杖の使い方すらろくに教えてもらってません。
あの神はとにかく俺を異世界に転生させることにご執心だったみたいです。
そして、この世界に放り出され、呆然としていた俺の前に現れたのは「クローディア」と名のる赤毛のモンスターでした。
俺はこれまでの人生、ケンカすら一度もしたことがなかったので一目散に逃げようとしました。
しかしそのモンスターは一瞬で距離を詰めると、俺の持っていた杖を真っ二つに折り、俺の腹に強烈な鉄拳を食らわせ、俺はそのまま気を失ってしまったのです。
その後俺はクローディアに炭鉱のような場所に連れていかれ、そこでの強制労働を強いられる事となりました。
その炭鉱には何十人という人たちが働かされていました。
他の働いている人たちの話によると、もう少し前は百人以上の労働者がいたそうですが、どんどん使い潰され今くらいの人数にまで減ったのだとか……
それもそのはず、俺たちに課せられる労働内容は凡そ人間にこなしきれるようなものではなく、そのうえ食事は三日に一度あれば良い方で、一週間絶食状態になる時も多いのです。
ここで働く人たちは日に日に痩せ細っていってるのが分かります。
でも俺たちはこの労働条件にしがみついていくしかないのです。
クローディアの命令をこなすことができなければ、即座に殺される。実際に今朝、俺の前で荷物を落とした労働者が文字通りクビになって死んでいきました……
また、仮にここから抜け出したとしても俺たちは、モンスターの蔓延るこの世界で生きていく術を持っていません。
ここを出ても、また違うモンスターの奴隷として生きていくしかないでしょう。
「はぁ……何でこうなっちゃうのかなぁ……」
日本にいた時に若干ぽっちゃり気味だった自分の腹をさする。
「肋骨の形がこんなにはっきり分かるなんて……」
こんなふうに死ぬ気で働き続けていても、命をギリギリ延ばしているだけ。
そう遠くないうちに破滅する、そんなことは分かりきっているのに……
今日もこうして、あるはずの無い希望を希いながらツルハシを力の限り振り下ろす。
「どうしようも…ないのかなぁ」
俺が声を震わせ、そう呟いた時でした。
「おい! 何だあれ!」
近くで作業していた奴隷仲間が、空を指差し声をあげました。
俺もその方角を向き、目を細めてみます。
ヒュォォォォォ……
赤く光る何かが落ちて来ていました。
「あれ、なんかこっちに向かって来てませんか?」
「あぁ、なんかヤバそうな気がするな……」
「ちょっ…! どんどん近づいて来てるじゃないですか!」
「……これ、逃げた方がよくねぇか?」
「そうですね……皆さん! 何かこっちに落ちて来ています! 逃げましょう!」
俺が近くにいる奴隷仲間たちに逃げるよう指示していると、背後から爆音が響いて来ました。
ズダン!!!!
「……え、まさか、人……ですか?」
ここにはクローディアの支配領域。
侵入することなんて、まず不可能なはず……
「あなたは、一体……?」
黒フードのその人は体から赤い光を放ち、死んだような目で
ーー右手に桃色の筒のようなものを持っていました。
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