異世界オ○ホ英雄奇譚〜そのインポ童貞はオ○ホで世界を無双する〜

子猫紳士

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ティンポラス編

1 プロローグ

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 吾輩は童貞である、名前はまだ無い。

 嘘である、名前は「江口一歩えぐち いっぽ」。

 この名前のせいで学生時代には「エロ」だの「インポ」だのクソみたいなあだ名を星の数ほど贈呈された。
 
 その甲斐あってか知らんが、今のオレは見事なまでのインポである。

 世の人々は「インポ」は侮蔑表現だとして、「勃起障害」「E D」「陰萎」などと呼びなさっているそうだが心底どうでもいい。

 オレからすれば全て侮蔑表現だ。くそくらえ。

 むしろ「インポ」の方がまだ可愛らしさが残る……いや残らねぇわ。


 まぁそろそろ語っておこうか。
 オレがインポになったのはつい昨日のことなのだ。

 社会人1年目のオレはあの日も(といっても昨日だが)満員電車に乗り、仕事場へ向かっていたーー
 


 オレの勤める会社は根っからのブラック企業である。

 上司からはパワハラまがいの皮肉を言われ続ける毎日。
 
 電車の中でも頭の中で上司からの罵詈雑言が反芻される。
 
 正直、オレは一年目にして早くも辞職を考えていた。
 
 オレ、社会にいらない人間なのかなぁ……

 そんな事を考えながら、仕事で使う資料を脇に抱えて吊り革につかまっていると、後ろから荒い息遣いが聞こえてきた。

 「ハァ……ハァ……ハァ……ジュルルっ……」

 このキモすぎる息遣いに鳥肌が立ち後ろを振り返ると、いかにもエロ同人に“モブおじさん”として出演してそうなハゲた中年男性が少し後ろに立っていた。

 なんか臭いし、目が完全にイっている。

 そしてモブおじさんはその虚な目で、オレの近くに立っている女性の乗客を何度もチラ見していた。

 (なるほど、こいつは多分、見た目通りの痴漢野郎に違いない!)

 そう確信したオレは体の向きを変えて、近くにいた女性の乗客とモブおじさんの間に割って入ることにした。

 モブおじさんの手つきがさらにいやらしくなる。

 (やっぱこいつクソやべー奴じゃんっ!!だけど、これで行く手は阻んだぞ!)

 その時のオレは英雄気取りだった。

 これで少しでも自分が必要な人間になれた気がした。

 
 しかし、モブおじさんの滑らかすぎるいやらしい手つきは、ガッチリとお尻をホールドしてしまった。



 ーーそう、尻を……


 そこから先はまさに地獄だった。いや、地獄なんて生温いレベルである。

 頭は真っ白、人生最大の危機、唖然とする女性乗客、モブおじさんの反り返る肉棒。


 汁、汁、汁、汁、男汁……


 モブおじさんのえげつない速度のピストンがオレの尻穴を容赦なく侵食していく。

 モブおじさんの力が強すぎて、オレは全く抵抗できなかった。
 神はなぜあんなおじさんに鬼のような腕力を与えたのか……

 車内に舞っていた仕事の資料が汁まみれのオレの顔に舞い降りてきた。


 「知らない天井だ……」

 気づいたらオレは病院にいた。

 いくつかの検査を終えてオレは隅っこの部屋に案内された。
 そこにいた若いお医者様は神妙な顔つきで、「心的要因による機能性勃起障害」であるなどとのたまっておられた。

 オレのムスコは一度も晴れ舞台に立たないまま(もとい、勃たないまま)植物状態になっちまったのである。草も生えんわ。

 それに、もしかしたら近々、今回の事件はニュースになるかもしれない。

 
 『22歳童貞、処女を失う!』


 こんな記事が社会に出回ったら全米が泣くわ!!

 そして一番、オレが泣くわっ!!!


 心と体がぐちゃぐちゃになったオレは、医師からの安静にしていろという忠告も聞かず、病院服のままで病院をソッコーで抜け出した。
 オレはあてもなく遠くへ、遠くへ走り続けた。


 ……まぁそんなこんなで自分が公開ホモセの犠牲者になったという事実が嫌になって、いっそ自殺しちまおうかと思ってこんなビルの屋上まで来ているわけですけれども……
 オレは目を細めて夜の街を見下ろす。
 
 怖い。

 風がオレの頬を切り裂く。

 冷たい。

 視界が霞む。

 「いやいや!『処女を失った22歳のインポ童貞』とかいう十字架を背負って生き恥さらす方が怖いわ!ええい、ままよ!!」
 
 勢いに任せフェンスを跨ぐ。

 オレは目を瞑り、直立姿勢のまま後ろ向きに倒れていき、重力に身を任せようとする。

 「やっぱ無理だろ!! うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 ガシャン!!


 マ○ケルジャクソンもビックリな体勢でフェンスを掴み、なんとか自分の体をひっぱり上げる。

 心臓が気持ち悪いくらい脈打ってるのが分かる。

 「ハァ……ハァ……死因が『公開ホモセ』とか、末代までの恥じゃねぇか!……いや、オレが末代じゃん……ハハハッ……」
 
 乾いた笑いが漏れる。

 ふざけて心を保つのももう限界らしい。オレはその場に力なく座り込む。

 「オレだって、けっこう人生頑張ってきたつもりなんだけどなぁ。」
 
 オレは無気力に仰向けに寝転がる。

 「報われねーなぁ……ホント……」

 オレはぽつりと呟き、そのまま深い眠りに落ちた。






 



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