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奉日本-3

奉日本-3-2

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「機嫌が良さそうですね」
 グラスに注がれた赤いカクテルを差し出して、奉日本はその理由を知りながら、そう聞いた。
「そう見えるか? まぁ、正解だ。ちょっと抱えていた問題が解決してな」
 久慈はグラスを持つと、口まで運ぶと唇の間に液体を滑り込ませる。甘酸っぱい味を堪能すると喉の喜びを噛みしめるように、その顔にわずかに恍惚の表情が見えた。
「それは良かったです。ごゆっくり」
 奉日本はサービスでオリーブの塩漬けを提供すると、先程帰った客のグラスを片づける。その際、横目で見た久慈の様子から、彼の発言に嘘はない、と思うと自分の持っている情報をアップデートする。
 ――カラーズの逮捕が良い方向に転がったなぁ。
 奉日本は俯瞰的にそう思った。
 カラーズに違法ハーブを斡旋し、後ろ盾になっていたのは久慈の所属する高良組の若手だったのだ。それは若手の勝手な小遣い稼ぎだったらしく、組の仕事ではなかった。
 そのことを突き止めたのは警察だ。秘密裏に捜査し、カラーズと高良組の若手が違法ハーブの取引をしている証拠を着実に集めていく。そのことに久慈も気づいたようだったが、少し遅かった。
 ある程度の証拠がそろったところで警察は天秤に掛けた――結城議員の救済と高良組の壊滅だ。
 カラーズの全員逮捕をきっかけに実際に取引をしていた若手を逮捕し、そこから別件で高良組の令状をとって中核の一部を連行。その間に別の組をぶつけて壊滅させることが最終目標だった。

 ――高良組は物事の筋を通す立派な任侠だ。近隣住民を助けていることもあり周辺住民の信頼も厚い。裏社会では強い権力があり、警察もこれまで何度か裏工作で他の組と結託して行動したとき、高良組に少しでも影響があるならば妨害された。

 そのようなことがあり、警察にとっては邪魔な存在だった。
 何かしらのきっかけを見つけてそこから高良組の壊滅を考えていたところにカラーズとの関係が浮かび上がったのだ。
 そして、全てが順調に進み、警察にとっては希望の、久慈にとっては絶望の、結末まであと少し――というところでユースティティアが介入したのだ。
 結果的に警察は高良組を壊滅させるきっかけを失い、高良組はトカゲの尻尾切りが上手くいったことになる。
 ユースティティアは知らず知らずの内に対立する警察の作戦を潰した形になった。
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