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有栖-3

有栖-3-3

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 廃工場に入ると、中は薄暗いながらも部分的に剥がれた屋根と壁、そして、埃を積もらせながらも外光を取り入れる多数の窓のおかげで周囲を充分に見渡せるぐらいの明るさは保っていた。
 天井に点在する蛍光灯は動力を失い、随分前に役目を終えている。夜は月が明るくない限りは、ここは暗くなるので、不良達はバイクや車のライトで無理矢理に光源を持ち寄っていたな、と有栖は過去に来た記憶を思い出した。
「まぁ、視界良好ってことで」
 そう呟くと入ったときから見えている数人の人影を見据えて、近づいていく。彼等は……派手な髪色の若者達は持ち寄ったのか、ここにあったのか解らないパイプイスに座っていた。赤のすぐ隣にはピンク、それを挟むように青と黄が並ぶ。
「はーい、ストップ」
 そう言ったのは赤い髪の青年だった。きっと向こうからも有栖の姿は足を踏み入れたときから見えていたので、自分達に用があるのは自明だっただろう。
 だが、有栖は彼等の言葉に従う理由もないので足を進めた。
「止まれっての」
 そう言って、今度は金髪の男が手に持っていたボールを有栖に投げた。それは緩い弧を描いた軌道で飛んでくると、有栖の手前で弾んで、彼女の身体に向かってきた。仕方なく足を止めて、片手でキャッチする。ボールは薄汚れた硬式の野球ボールでこの廃工場に捨てられていたものだろう。
「アンタ、誰? 何か用?」
 赤い髪の青年――結城が有栖に尋ねる。
「これ、知ってる?」
 有栖は背中を見せて、着ているジャケットに描かれているロゴを見せた。そこには彼女の所属するユースティティアのロゴが描かれている。
「ここまで都合良く見つかるってことは、右京の奴、裏切ったか。恩知らずめ」
「無理矢理作った恩でしょ? 恩着せがましいんじゃない?」
 有栖は正面に向き直って、会話に応じた。
「へぇ、そこまで知ってるんだ? 警察以下のザコ組織にしてはやるじゃん」
「警察に任せておけないから、そのザコ組織が必死で動いてんのよ」
「大変だね、ザコ組織」
「そのザコ組織に追いつめられてるのは、そっちでしょ?」
「はぁ? 馬鹿なの? 追い詰められてるのはそっちだよ」
 結城がそう言うと柱の陰から五人の屈強な男達が現れた。
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