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奉日本-2

奉日本-2-14

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「時間がない?」
 有栖が右京の言葉の意味を聞き返す。
「はい。俺がカラーズの結城さん達に自首するって言ってから時間が経ちすぎています。さすがに怪しまれていると思うし、これ以上時間をかけると俺の周囲を調べると思う。そうなると……」
 そこで右京は一色楓を見た。その表情に申し訳なさが浮かぶ。
「そうね、楓ちゃんに危害が及ぶ可能性は高い」
 右京の言いたいこと、心配ごとは明確で、おそらく正しかった。彼の自首が遅い、ということはそれだけカラーズにとっても逮捕のリスクがあることになる。不自然に思った彼等は右京が自首しない理由を調べるだろう。そうなると必然的に恋人の一色楓のことを知る。彼女の父はユースティティアの一員だ。そこの繋がりを勘ぐり、裏切ったと思い彼女に暴行や人質にして右京に強制的に自首を迫ることも想像に容易い。また、彼女は最も標的にされやすいだけで、彼に関わる周囲の人も危害が及ぶ対象になりえる。
「やっぱり、俺……自首します。策略だったとはいえ、自分からカラーズに関わっていったし、気づけなかったのは自分の落ち度だ。罠だと解って捕まるのは悔しいけど、でも、楓や俺に関わる周囲の人を助けることができる」
「馬鹿言わないで。勝手な自己犠牲で自己満足しようとしないで。縁、逃げよう。カラーズが捕まるまで逃げれば……」
 一色楓は強い口調で訴える。
「駄目だ、楓が危ない――」
「でも――」
 恋人達の悲劇――その間に挟まれている舞台の中心人物であるはずなのに蚊帳の外である有栖は少しの間二人のやり取りを聞いていたが、飽きたのか時間の無駄に思ったのかは解らないが、テーブルをノックするように二回叩いた。突如割って入った異音に、二人の会話は強制的に止められた。
「色々考えるのは結構だけど、自分の存在忘れてない?」
 少し寂しそうに、呆れたようにそう言う有栖を見て奉日本は少し笑ってしまった。
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