有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』

第五章：祭囃子

有栖_5-1

　サイバーフェスの三日目は何事もなかったかのように開催された。展示場の賑わいも、動員された客の数も変わらない。アース博士も有栖の後ろの部屋で研究を続けている。
　唯一、変わったことがあったとすれば、アース博士の護衛を担当するメンバーとそのローテーションだ。
　ユースティティア側は反保が、警察側は飛田が休むことになり、足りなくなった人員は警察から補完された。

「事故があり、人が死に、誘拐未遂があったのに、いつも通り……か」

　そんなことより技術の進化が大事だ、と言わんばかりの現状に有栖は嫌気がさす。
　誰の為に、何の為に技術は進化するのか問いたくなる。

「人の為じゃないの？　今回はその為の小さな犠牲だって？　その犠牲になったのも人なのに……」

　そんなことを呟き、虚しくなる気持ちを隠しながら、有栖は与えられた任務に従事する。