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エピローグ
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「有栖、そっちちゃうで」
強制的な休暇を終えて復職した有栖が事務所に行こうとすると、一色に止められた。
「あれ? 自分、正式にクビになりました?」
「そういう意味ちゃう」
「先に佐倉課長に謝るべきですか? 一応、休職前に謝りましたけど」
「それも必要やけど、今言うてるのはお前の職場はそこやないってこと」
そう言って、一色は一枚の紙を差し出し有栖はそれを受け取って内容を確認した。
『――付をもって、有栖 陽菜に特務部特務課への異動を命ずる』
それは今日付けの人事異動通知だった。そして、そこには有栖の名前と彼女が聞いたことの無い部署の名前が記載されている。
「何ですか? この特務課って」
「新設の部署。んで、そこの課長は俺。部長は一応おるけど兼務という名の空位の状態やな」
「それで、この特務課ってのは何ですか?」
「あぁ、それは新しい事務室に向かいながら説明するわ」
そう言って、一色は有栖を新しい事務所のある場所に案内しながら特務課の説明をしてくれた。
特務課はこれまでのユースティティアの中では完全に独立した組織だった。
特徴は案件が受理される前や、被害が発生する未然の状態でも捜査する権利が与えられる――つまり、今回の松下優也のような被害者を調査結果のみで強制的に保護ができる。
非常に自由かつ強力な権利を持つ一方で、条件もある。
基本は秘密裏に捜査すること。そして、依頼が成功した際はその捜査内容の詳細は表に出さないこと。表に出るのは通常の捜査と特務課以外の功績になること。
「光と影みたいな感じ――まぁ、影の方やけど。前から、こういう部署が必要やって設立の申請はしてたんやけどな。今回、警察が陰湿なことしたことが決め手になった。秘密裏で未然の状態で動ける部署が必要やと上も認めたようや」
歩きながら、一色は有栖に説明する。彼女は彼女なりに理解をしていたが、少々小難しいな、と感じていた。
「何となくは解りましたけど――もう少しシンプルに解りやすい説明だと助かります」
「せやな……あぁ、ここが事務所や」
一色がたどり着いた新しい事務所のドアを開ける。小さな事務所だった。十六畳の広めのワンルームぐらいの部屋でデスクが二つと書棚がある。あとはまだ開梱されていないダンボールが積んでいた。有栖の使っていた備品等があるのだろう。
「シンプルに……せやな、出世を捨てて、自由を手に入れたってことやな」
「何ですか、それ――最高じゃないですか」
有栖はそう言って、笑ってみせた。
強制的な休暇を終えて復職した有栖が事務所に行こうとすると、一色に止められた。
「あれ? 自分、正式にクビになりました?」
「そういう意味ちゃう」
「先に佐倉課長に謝るべきですか? 一応、休職前に謝りましたけど」
「それも必要やけど、今言うてるのはお前の職場はそこやないってこと」
そう言って、一色は一枚の紙を差し出し有栖はそれを受け取って内容を確認した。
『――付をもって、有栖 陽菜に特務部特務課への異動を命ずる』
それは今日付けの人事異動通知だった。そして、そこには有栖の名前と彼女が聞いたことの無い部署の名前が記載されている。
「何ですか? この特務課って」
「新設の部署。んで、そこの課長は俺。部長は一応おるけど兼務という名の空位の状態やな」
「それで、この特務課ってのは何ですか?」
「あぁ、それは新しい事務室に向かいながら説明するわ」
そう言って、一色は有栖を新しい事務所のある場所に案内しながら特務課の説明をしてくれた。
特務課はこれまでのユースティティアの中では完全に独立した組織だった。
特徴は案件が受理される前や、被害が発生する未然の状態でも捜査する権利が与えられる――つまり、今回の松下優也のような被害者を調査結果のみで強制的に保護ができる。
非常に自由かつ強力な権利を持つ一方で、条件もある。
基本は秘密裏に捜査すること。そして、依頼が成功した際はその捜査内容の詳細は表に出さないこと。表に出るのは通常の捜査と特務課以外の功績になること。
「光と影みたいな感じ――まぁ、影の方やけど。前から、こういう部署が必要やって設立の申請はしてたんやけどな。今回、警察が陰湿なことしたことが決め手になった。秘密裏で未然の状態で動ける部署が必要やと上も認めたようや」
歩きながら、一色は有栖に説明する。彼女は彼女なりに理解をしていたが、少々小難しいな、と感じていた。
「何となくは解りましたけど――もう少しシンプルに解りやすい説明だと助かります」
「せやな……あぁ、ここが事務所や」
一色がたどり着いた新しい事務所のドアを開ける。小さな事務所だった。十六畳の広めのワンルームぐらいの部屋でデスクが二つと書棚がある。あとはまだ開梱されていないダンボールが積んでいた。有栖の使っていた備品等があるのだろう。
「シンプルに……せやな、出世を捨てて、自由を手に入れたってことやな」
「何ですか、それ――最高じゃないですか」
有栖はそう言って、笑ってみせた。
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